「低圧電気の特別教育を受けさせなければいけないが、全員を外部講習に送り込む日程と費用がつらい」。そう感じている安全衛生担当者は多いはずです。結論から言うと、学科7時間はeラーニングで実施できます。実技は対面が必要ですが、資格者でなくても社内講師で対応できます。本記事では、担当者が社内で判断できるよう、法令の根拠・時間構成・社内実技の段取り・記録の残し方を整理します。
→ Labona の低圧電気取扱業務特別教育(eラーニング)を確認する
低圧電気取扱業務の特別教育とは
低圧の充電電路の敷設・修理、または配電盤室・変電室等の区画された場所にある充電部分が露出した開閉器の操作を行う労働者には、事業者が特別教育を実施する義務があります(労働安全衛生規則第36条第4号)。
対象は低圧(直流750V以下・交流600V以下)の作業に限られます。高圧・特別高圧の取扱業務は同条第4号の別の課程となり、カリキュラムが異なります。自社の設備がどちらに当たるかを確認したうえで、受講させる対象者を絞り込んでください。
2コースの整理
低圧電気取扱業務の特別教育には、業務の内容によって実技時間が変わる2つのパターンがあります。
| コース | 対象業務 | 実技時間 |
|---|---|---|
| 充電電路敷設・修理コース | 充電電路の敷設・修理 | 7時間以上 |
| 開閉器操作コース | 開閉器の操作のみ | 1時間以上 |
「どちらのコースか」は業務内容で決まります。開閉器の操作だけを行う者は実技1時間で足りますが、充電電路に触れる作業がある場合は実技7時間が必要です。担当者が業務内容を確認して適切なコースを選んでください。
学科・実技の構成
安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)第6条に基づく時間構成は以下のとおりです。
学科:合計7時間以上
| 科目 | 時間 |
|---|---|
| 低圧の電気に関する基礎知識 | 1時間 |
| 低圧の電気設備に関する基礎知識 | 2時間 |
| 低圧用の安全作業用具に関する基礎知識 | 1時間 |
| 低圧の活線作業及び活線近接作業の方法 | 2時間 |
| 関係法令 | 1時間 |
実技:7時間以上(開閉器の操作のみを行う者は1時間以上)
| 科目 | 時間 |
|---|---|
| 低圧の活線作業及び活線近接作業の方法 | 7時間(操作のみは1時間) |
学科と実技を合計すると、充電電路敷設・修理コースで最低14時間、開閉器操作コースで最低8時間の教育が必要です。
学科7時間はeラーニングで実施できる
令和3年(2021年)1月25日、厚生労働省から「インターネット等を介したeラーニング等により行われる労働安全衛生法に基づく安全衛生教育等の実施について」が通達されました(基安化発0125第1号・基安安発0125第2号・基安労発0125第1号)。この通達により、特別教育の学科部分をeラーニングで実施することが正式に認められています。
通達の内容と安全衛生教育全般へのオンライン適用については、安全衛生教育のオンライン・eラーニング実施 完全ガイドで詳しく解説しています。本記事では低圧電気取扱業務特別教育に絞って解説します。
ただし、eラーニングなら何でも良いわけではありません。通達が求める要件を満たすサービスを選ぶ必要があります。
eラーニング実施の4要件
| 要件 | ポイント |
|---|---|
| 法定科目の網羅 | 安全衛生特別教育規程が定める5科目・7時間すべてをカバーすること |
| 本人特定 | ID・パスワード等で受講者を特定できること |
| 受講確認 | 受講時間の計測と受講完了の確認ができること |
| 質問対応体制 | 受講者の質問に答えられる体制があること |
なお、確認テスト(修了試験)は特別教育の法定要件ではありません。テストを課すかどうかは事業者の任意ですが、理解度を確認する工夫として取り入れているサービスが多くあります。
実技は対面で実施する
重要な点として、実技は教育を行う者(講師)と受講者が同一場所にいる対面で実施する必要があります。実技をオンラインで完結することはできません。実技はeラーニング修了後に、社内または会場型講習で行うことになります。
実技を社内で行う段取り
「実技は対面が必要」と聞くと、外部講習に全員を送り込む必要があると思われがちです。しかし、事業者が自社内で実技教育を実施することも可能です。
講師の要件
実技を担当する講師に、特定の資格(電気工事士等)は法令上求められていません。特別教育の講師の資格要件を定めた条文は安衛則にも安全衛生特別教育規程にも存在せず、事業者が適任者を判断することになります。現場で低圧電気作業の実務経験がある社員が担当することが一般的です。
ただし、これは「誰でも教えてよい」という意味ではありません。活線作業の危険性と正しい手順を熟知した者が担当するよう、社内で判断してください。
実技でカバーする科目
実技の科目は「低圧の活線作業及び活線近接作業の方法」です。実際の作業環境に即した練習・確認を行います。充電電路に触れる業務であれば絶縁用保護具の装着・確認・停電措置の確認なども含めます。
記録の保存
特別教育の実施記録は、事業者が作成し3年間保存する義務があります(労働安全衛生規則第38条)。記録に含めるべき事項は次のとおりです。
- 教育年月日
- 教育を受けた者の氏名
- 教育科目
- 教育の担当者
記録の様式は法定されていません。自社のフォーマットで差し支えありませんが、行政の調査時に提示できるよう整理しておく必要があります。eラーニングを使った場合、学科の受講記録にはシステムが出力する受講証明書(Labona では「学科受講証明書」)を活用できます。これは学科を受講した事実の証明で、特別教育の「修了証」ではありません。実技分は社内で別途記録を作成し、特別教育全体の記録は事業者が作成してください。
会場型講習との比較
会場型(外部講習機関での一括受講)とeラーニング+社内実技の組み合わせを比較すると、それぞれに一長一短があります。
| 比較軸 | 会場型 | eラーニング+社内実技 |
|---|---|---|
| スケジュール | 開催日程に合わせる必要あり | 学科は任意のタイミングで実施可 |
| 移動・拘束時間 | 必要(交通費・移動時間が発生) | 学科は不要 |
| 人数対応 | 1人でも対応可 | 複数名の場合に効率的 |
| 記録管理 | 修了証の管理が中心 | 自社での記録作成が必要 |
| 実技の質 | 専門機関が担保 | 社内講師の質に依存 |
少人数(1〜2名)で急ぎの場合は会場型が適していることが多く、複数名を定期的に受けさせる場合はeラーニング+社内実技の組み合わせがコスト・運用両面で合理的になることが多いです。
科目の省略
一定の知識・技能があると認められる労働者については、科目の全部または一部を省略できます(労働安全衛生規則第37条)。省略できるかどうかは事業者が業務内容・保有資格・実務経験を確認して判断し、省略した場合でも記録に残すことが必要です。
「電気工事士の資格を持っているから自動的に省略できる」という規定はありません。資格の有無を参考にしながら、事業者が合理的な根拠を持って判断してください。
外国人社員がいる場合
本記事は日本語で受講できる社員の特別教育手配を主な対象としています。外国人労働者に外国語で実施する場合は、教材の言語と理解度確認の設計が別途論点になります。
Labonaの活用
まとめ
- 低圧電気取扱業務の特別教育は労働安全衛生規則第36条第4号に基づく義務
- 学科7時間(5科目)は、eラーニング通達(令和3年1月25日)の4要件を満たせばオンラインで実施できる
- 実技は対面が必要(7時間または開閉器操作のみなら1時間)。社内講師でも実施可能
- 記録は事業者が作成し3年間保存する義務がある(安衛則第38条)
- 科目の省略は事業者が判断し記録する
よくある質問
Q. 開閉器の操作しか行わない人の実技は何時間必要ですか?
充電部分が露出した開閉器の操作のみを行う者は、実技1時間以上で差し支えありません。充電電路の敷設・修理を行う場合は7時間以上が必要です(安全衛生特別教育規程第6条)。
Q. 高圧・特別高圧の取扱業務も同じ講習で対応できますか?
低圧(直流750V以下・交流600V以下)と高圧・特別高圧は、安衛則第36条第4号の別の課程となります。高圧・特別高圧には別のカリキュラムが定められており、低圧の特別教育で代替することはできません。
Q. 確認テストは受けなければいけませんか?
確認テストは法定要件ではありません。eラーニングサービスが任意の工夫として設けているものです。テストの有無にかかわらず、法定科目・法定時間の受講と記録保存が要件です。
Q. eラーニングで受けた記録の様式はどうすればよいですか?
様式は法定されていません。eラーニングシステムが発行する受講証明書を保管し、別途社内の教育記録台帳に受講者・科目・日付を記録する方法が一般的です。実技分は社内で記録を作成してください。
Q. 実技は外部機関に依頼しないといけませんか?
法的には必須ではありません。特別教育の講師に資格要件を定めた条文は無く、事業者が社内の適切な者を講師として実技を実施することができます。外部機関に依頼するかどうかは、社内の体制・受講者数・作業環境に応じて判断してください。
関連ガイド
- 安全衛生教育のオンライン・eラーニング実施 完全ガイド — eラーニング通達の4要件と対面が必要な範囲の整理
- 低圧電気取扱業務 特別教育を外国人労働者に外国語で実施する方法 — 外国語での実施手順と5言語教材の選定基準
- 安全衛生教育 完全ガイド【2026年版】 — 雇入れ時教育・特別教育・職長教育の全体像と法令根拠
- 安全衛生教育記録の保管方法と電子化の進め方 — 3年保存の根拠と記録様式の実務
参考一次資料
- 安全衛生特別教育規程 第6条(低圧の電気取扱業務) ※学科7時間・実技7時間(開閉器操作のみ1時間)を確認
- 労働安全衛生規則 第36条第4号(特別教育を必要とする業務)・第37条(科目の省略)・第38条(記録の3年保存)
- 「インターネット等を介したeラーニング等により行われる労働安全衛生法に基づく安全衛生教育等の実施について」令和3年1月25日 基安化発0125第1号・基安安発0125第2号・基安労発0125第1号
