要約
- テールゲートリフター(パワーゲート)を使って荷を積み卸しする業務には、安衛則第36条第5号の4の特別教育が令和6年2月1日から義務
- 学科4時間(テールゲートリフターに関する知識 1.5h・作業に関する知識 2h・関係法令 0.5h)はeラーニング等で実施できると解される
- 実技2時間(テールゲートリフターの操作の方法)は講師と同一場所での対面が必要
- 受講者・科目等の記録を作成して3年保存(安衛則第38条)
「特別教育をeラーニングで済ませてよいのか」「実技はどうやって社内でやるのか」——テールゲートリフターの特別教育で担当者が最初にぶつかる疑問はこの2点です。義務化から2年が経ちましたが、まだ仕組みを整えていない会社も少なくありません。法令の根拠と実務の段取りを順に整理します。
Labona のテールゲートリフター操作業務特別教育(学科)は現在準備中で、公開前でも受注制作として個別に対応できます。実技は事業者様にて実施いただきます → テールゲートリフター操作業務特別教育の講座ページを見る
結論
テールゲートリフター特別教育(安全衛生特別教育規程 第7条の4)の学科4時間は、eラーニング等の通信手段で実施できると解されます。実技2時間(テールゲートリフターの操作の方法)は講師と同一場所での対面が法令上の要件です。つまり、「学科はオンライン・実技は自社の車両で」という分担が実務上もっとも効率的です。
| 区分 | 科目 | 時間 | オンライン可否 |
|---|---|---|---|
| 学科 | テールゲートリフターに関する知識 | 1.5時間 | 可(と解される) |
| 学科 | テールゲートリフターによる作業に関する知識 | 2時間 | 可(と解される) |
| 学科 | 関係法令 | 0.5時間 | 可(と解される) |
| 実技 | テールゲートリフターの操作の方法 | 2時間 | 不可(対面必須) |
法令の根拠
労働安全衛生規則の改正により安衛則第36条に第5号の4が追加され、令和6年2月1日から施行されています。科目と時間は安全衛生特別教育規程第7条の4(令和5年厚生労働省告示第104号により追加)に定められています。「テールゲートリフターの操作の業務」とは、貨物自動車に荷を積む作業または貨物自動車から荷を卸す作業を伴うテールゲートリフターの操作です。「パワーゲート」は製品名ですが、法令上の扱いは同じです。
義務に違反して未受講のまま業務に就かせた場合、事業者は安衛法第59条第3項違反として、第119条第1号の罰則(6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)の対象になります。
学科のオンライン実施
厚生労働省の「インターネット等を介したeラーニング等により行われる労働安全衛生法に基づく安全衛生教育等の実施について」(令和3年1月25日 基安安発0125第2号ほか)は、特別教育の学科についてeラーニングによる実施を認めています。同通達の別表は「特別教育」を一括して対象としており、第36条第5号の4を個別に列挙しているわけではありませんが、特別教育全般に適用される要件として解釈することが合理的です。
eラーニングで学科を実施する場合の主な要件は以下のとおりです。
- 各特別教育規程が定める範囲と時間数を満たすこと
- 受講時間を確認できること(視聴ログ等)
- 受講者が質問できる体制を設けること
- 講師(または教材の作成・管理担当者)が当該業務に十分な知識・経験を持つこと
受講時間の管理は、システム側のログで確認できる状態にしておくと、行政による確認が入った際に対応しやすくなります。
実技2時間の社内段取り
実技は、講師が受講者と同一の場所で行う必要があります。外部の講習機関が「出張実技」として行う形式も可能ですが、多くの場合は自社でテールゲートリフター付き車両を使い、社内で実施するのが効率的です。
社内実施の進め方
- 実施者(講師役)を決める: 法令上、実技の講師に特別な資格要件はありません。テールゲートリフターの操作に習熟した社員であれば対応できます。
- 車両と場所を確保する: 実際に荷を積み卸しできる環境を用意します。本番で使う機種で行うと受講者の理解が深まります。
- 実施内容を記録する: 操作の確認だけでなく、荷の積み卸し手順、安全確認の位置、台車の固定方法まで含めると、規程の「テールゲートリフターの操作の方法」の範囲を満たしやすくなります。
- 時間を計測する: 2時間以上の実施を記録上も明示しておきます。
実技は日本語で口頭指示を出す場面が多いため、受講者が外国人労働者の場合は、通訳の手配か母国語の手順書を併せて準備しておくと進行が滞りません。
対象の範囲
「運送会社だけが対象」と誤解されやすいですが、安衛則第36条第5号の4には業種や会社規模の制限はありません。次のような場面でも対象になります。
- 自社トラックで構内搬送を行う製造業・倉庫業の労働者: 構内の積み替え作業でテールゲートリフターを操作するなら対象です。
- 荷主側の担当者が荷受けのためにゲートを操作する場合: 荷を卸す作業を伴うなら義務が生じます。
- 派遣労働者: 派遣先事業者が実施義務を負います。
なお、操作をせず昇降板の上を通って荷を運ぶだけの作業者は対象外です(ただし、カゴ車を昇降板に載せ卸しする場合は受講が望ましいとされています)。
施行日時点で既に業務に就いていた人を一律に免除する経過措置はありません。ただし安衛則第37条の科目の省略により、厚生労働省のリーフレットは次の短縮・省略を認めています。
- 施行の日(令和6年2月1日)時点で6月以上の業務従事歴がある者: 「テールゲートリフターに関する知識」は45分以上、実技「操作の方法」は本来の2時間から1時間以上に短縮可。「作業に関する知識」「関係法令」は省略不可
- 「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」に基づく教育を修了した者: 「テールゲートリフターに関する知識」「作業に関する知識」を省略可。「関係法令」「操作の方法」は省略不可
- 陸上貨物運送事業労働災害防止協会の荷役作業安全講習会を受講した者: 「作業に関する知識」を省略可。他は省略不可
短縮・省略を適用する場合も、該当を判断した根拠(従事歴や修了記録)を記録に残してください。
記録の残し方
特別教育を実施した事業者は、受講者・科目等の記録を作成して3年間保存しなければなりません(安衛則第38条)。条文が明記しているのは「受講者、科目等」までで、様式は定められていません。実務上は、行政の確認に備えて次の項目を揃えておくと確実です。
- 特別教育の科目
- 特別教育に要した時間
- 受講者の氏名
- 受講年月日
- 講師の氏名
eラーニングで学科を受講した場合、システムから出力される受講履歴をそのまま保存しておくと、記録作成の手間を省けます。紙の受講票を発行するシステムであれば、社内で管理台帳に綴じて保存します。
Labona が発行するのは学科の受講証明書です。特別教育の修了を判断するのは事業者の役割であり、Labona の証明書は修了証ではありません。実技の記録は事業者側で別途作成してください。
荷役関連の他の義務との違い
令和5年10月1日に同じ改正で施行された安衛則第151条の67(最大積載量2トン以上の貨物自動車に荷を積み卸す作業での昇降設備の設置)および第151条の74(保護帽の着用)は、教育の義務ではなく設備・保護具に関する措置です。テールゲートリフター特別教育とは別の義務として管理してください。
Labonaの活用
まとめ
テールゲートリフター特別教育のオンライン化は、「学科eラーニング+実技社内」という構成で合理的に進められます。重要なのは、①実技は対面で行うこと、②受講記録を3年保存すること、③荷主や製造業の構内でも対象になること、の3点です。受講管理の仕組みを整えておくと、定期的な新入社員教育にも対応しやすくなります。
よくある質問
運送会社でなく荷主の工場でもテールゲートリフター特別教育は必要ですか?
必要です。安衛則第36条第5号の4には業種の限定がありません。自社トラックで構内搬送を行う製造業や倉庫業の労働者が荷の積み卸し作業でテールゲートリフターを操作する場合も対象になります。
施行前からテールゲートリフターを操作していた人はどうなりますか?
一律に免除する経過措置はないため、施行日より前から操作していた人にも特別教育の実施が必要です。ただし施行の日時点で6月以上の業務従事歴がある場合は、安衛則第37条の科目の省略により「テールゲートリフターに関する知識」を45分以上、実技を本来の2時間から1時間以上に短縮できます。「作業に関する知識」と「関係法令」は省略できません。
オンラインで受けた記録はどのように残せばよいですか?
安衛則第38条が求めているのは「受講者、科目等の記録」の作成と3年間の保存で、様式の定めはありません。科目・時間数・受講者氏名・受講年月日・講師氏名を揃えておけば実務上は十分です。eラーニングシステムが出力する受講履歴データや証明書を保存する方法が一般的です。3年間の保存が義務です。
実技は外部の講習機関に任せることもできますか?
可能です。ただし、法令上は「講師が受講者と同一の場所で」行うことが求められますので、外部機関が実施する場合も対面での実施が必要です。
関連ガイド
- 安全衛生教育はeラーニングでいい?4要件と対面が必要な範囲 — eラーニング通達の要件と、実技が対面必須になる範囲の整理
- 安全衛生教育の記録保管|3年義務の根拠と電子化 — 安衛則38条の3年保存と記録様式の実務
- 特別教育一覧表【全59業務】 — 36条の号ごとの対象業務と技能講習との違い
- 物流業の外国人労働者 安全教育の組み立て方 — 倉庫・配送のリスクと教育設計
参考一次資料
- 安全衛生特別教育規程 第7条の4(テールゲートリフターの操作の業務に係る特別教育): https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74085000&dataType=0&pageNo=1
- e-Gov 労働安全衛生規則 第36条第5号の4(テールゲートリフターの操作の業務): https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032#Mp-At_36
- e-Gov 労働安全衛生規則 第37条(特別教育の科目の省略)・第38条(特別教育の記録の保存): https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032#Mp-At_38
- e-Gov 労働安全衛生法 第59条第3項・第119条第1号(罰則): https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
- 厚生労働省「トラックでの荷役作業時における安全対策が強化されます」(科目の省略・施行日): https://www.mhlw.go.jp/content/001108427.pdf
- インターネット等を介したeラーニング等により行われる労働安全衛生法に基づく安全衛生教育等の実施について(令和3年1月25日 基安安発0125第2号ほか): https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc5617&dataType=1&pageNo=1
