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事故予防・ヒヤリハット更新 2026.10.20·約 11 分で読了

ずい道・トンネル特別教育【2026年版】外国語実施ガイド

ずい道等の掘削等の業務(安衛則第36条第30号)は特別教育が義務。学科7時間の内容、トンネル内の複合リスク、外国人労働者への外国語実施の実務ポイントをまとめました。

ずい道・トンネル特別教育【2026年版】外国語実施ガイド

トンネル・シールド工事の現場に外国人作業員を配置している場合、特別教育の実施は法律上の義務です。しかし「一応やったが、どこまで伝わったかわからない」という悩みを担当者から繰り返し聞きます。ガス検知警報が鳴っても動かなかった作業員が、後から「教育を受けたが意味が分からなかった」と証言したケースもあります。この記事では、ずい道等の掘削等の業務に関する特別教育(安衛則第36条第30号)の法的義務と、外国人労働者に外国語で実施するための実務ポイントを整理します。

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ずい道等の掘削等の業務とは

労働安全衛生規則(以下「安衛則」)第36条第30号が義務付けている特別教育の対象業務です。

条文は「ずい道等の掘削の作業又はこれに伴うずり、資材等の運搬、覆工のコンクリートの打設等の作業(当該ずい道等の内部において行われるものに限る。)に係る業務」と定めています。整理すると次のとおりです。

  • ずい道(トンネル)等の掘削の作業
  • 掘削に伴うずり(掘削で出た土砂・岩石)・資材等の運搬の作業
  • 覆工(ライニング:内壁を被覆する作業)のコンクリート打設等の作業

いずれも「当該ずい道等の内部において行われるもの」に限られる点が条文上の区切りです。

シールド工法による地下鉄・下水道の施工も「ずい道等の掘削」に含まれます。山岳トンネルだけでなく、都市部の地下工事でも必須の教育です。

事業者はこれらの業務に従事させる前に特別教育を実施しなければなりません(労働安全衛生法第59条第3項)。未実施は同法第119条(6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)の対象です。

特別教育の内容(学科7時間・実技なし)

安全衛生特別教育規程第17条により、この特別教育は学科教育のみで行い、合計7時間です。実技教育の規定はありません。

科目と時間は次の4つです。

科目 時間
掘削、覆工等に関する知識 1.5時間以上
工事用設備に関する知識 1.5時間以上
労働災害の防止に関する知識 3時間以上
関係法令 1時間以上
合計 7時間

配分を見ると「労働災害の防止に関する知識」が3時間と最も厚く、全体の4割強を占めます。落盤・出水・ガス・粉じんといった坑内特有の災害をどう防ぐかが、この教育の中心に置かれているということです。日本語で受講させても、内容が理解できなければ教育を「実施した」とは言えません。

トンネル内の複合リスクと外国人被災統計

ずい道内では複数の危険が重なります。

ガス爆発・酸素欠乏:天然ガスや炭酸ガスが地盤から湧出し、換気不足で滞留します。酸欠(酸素欠乏症)や可燃性ガスの爆発は即座に死亡につながります。

落盤・肌落ち:掘削直後は地山が不安定です。わずかな振動や雨水の浸透が引き金になります。肌落ち(坑壁から小片が剥落する現象)は予兆なく起こることがあります。

粉じん:岩石や土砂の粉じんが舞い上がり、じん肺(肺の繊維化による慢性疾患)の原因になります。症状が出るまでに数年かかるため、作業者本人が危険を認識しにくい点が厄介です。

厚生労働省の統計では、外国人労働者の休業4日以上の死傷者数は令和7年で7,124人と、統計が公表されている平成28年以降で最多です。うち建設業は1,371人を占めます。閉鎖環境のトンネル内では、異常を認識しても避難が遅れやすく、「警報が鳴った理由がわからなかった」「立入禁止の意味を知らなかった」という言語バリアが命取りになります。

「地下は地上より安全」という誤認識を正す

外国人作業員の中に「地下は雨が降らないし日射もない。地上より楽だ」という感覚を持っている方が一定数います。東南アジアや中央アジアの農業・露天掘り採掘の感覚から来ている場合があります。

これは逆です。

地下空間は換気が人工設備に全面依存しており、設備の異常が即座に生命リスクに直結します。地上であれば自然換気で希釈されるガスも、坑内には逃げ場がありません。

この誤認識を言語で明示的に解消することが、特別教育の本質的な役割の一つです。「避難の手順」「警報への反応」「異常の報告先」——これらを外国語で理解させて初めて、特別教育は安全につながります。

外国語で実施するための実務論点

労働安全衛生法・施行規則には「特別教育は日本語で行わなければならない」という規定はありません。大阪地裁2024年7月31日判決では、日本語だけの教材と短い実演では危険性と取扱方法を十分に説明したとは評価できないとして安全配慮義務違反が認められたと報告されており(判決文は未公表)、「労働者が言語で理解できること」が義務履行の実質的要件として確立されつつあります。

外国語で実施する方法には3つの選択肢があります。

通訳者を同席させて日本語テキストで実施:逐次通訳は時間が倍近くかかります。専門用語(「支保工」「肌落ち」「湧水」など)の正確な訳語を通訳者が知っているかが品質の鍵です。

外国語版テキスト・教材を使って実施:自社で翻訳する場合、安衛則・告示の専門用語の正確な訳語確認が必要です。機械翻訳をそのまま使うと、現場で通じない訳語が混入します。

多言語対応eラーニングを活用:厚労省の令和3年1月25日付通達(基安安発0125第2号・基安労発0125第1号・基安化発0125第1号)が、インターネット等を介したeラーニングによる安全衛生教育を認めています。同通達が求めている主な事項は、①受講した事実を適切に確認できること、②動画教材の講師・作成者が十分な知識または経験を有することが確認できること、③受講者からの質問を受け付けて回答できる体制があること、の3点です。特別教育のうち実技は講師と同一場所での対面実施が求められますが、ずい道等の掘削等の特別教育は学科のみのため、全科目をeラーニングで実施できます。

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足場・自由研削との組み合わせ受講(シールド工事)

シールド工法の現場ではずい道の掘削作業以外にも、複数の特別教育対象業務が同時に発生します。

  • 足場の組立て等作業(安衛則第36条第39号):セグメント(覆工材)の組立て・解体時の仮設足場作業
  • 自由研削といしの取替え等(安衛則第36条第1号):シールドマシンの刃先研削や機械整備

これらを個別に受講させると時間・コストが膨らみます。安衛則第37条の「科目の省略」規定を活用し、各科目を組み合わせたカリキュラムを設計すれば効率的に実施できます。ただし各科目の法定時間は短縮できないため、合計時間は各教育の規定時間の合算になります。

5言語対応教材の選定基準

ずい道・トンネル工事で外国人作業員が多い国籍はベトナム・中国・インドネシア・フィリピン・ネパールです。教材選定時に確認すべき4点を挙げます。

1. 専門用語の訳語が正確か:「支保工」「肌落ち」「坑口」「湧水」などの術語が、国内の当該業種で実際に使われている訳語になっているか確認します。汎用的な機械翻訳では現場で通じないことがあります。

2. 理解度テストが言語別に設定されているか:設問が日本語のままであったり、選択肢だけ外国語になっている設計では、「本人が理解できる言語で教育した」という説明が成り立ちません。

3. 受講ログが3年以上保存されるか:安衛則第38条により、特別教育の記録は3年間の保管義務があります。氏名・受講日・科目・時間・担当者名を記録できる仕組みを確認します。

4. 修了証が発行されるか:元請監査や行政の臨検では、修了証の提示を求められるケースが増えています。

まとめ

ずい道等の掘削等の業務は安衛則第36条第30号により、就業前の特別教育(学科7時間)が義務です。トンネル内の複合リスク(ガス・落盤・粉じん)を外国人作業員に正しく伝えるには、日本語だけの教育では限界があります。「地下は安全」という誤認識の解消、警報への正しい反応、避難手順——これらを本人が理解できる言語で教育することが、安全配慮義務の実質的な充足につながります。理解度テスト・受講ログ・修了証を備えた多言語対応eラーニングの活用をご検討ください。

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よくある質問

Q. ずい道等の掘削等の特別教育に実技はありますか?

学科7時間のみで、実技教育の規定はありません(安全衛生特別教育規程)。ただし、現場でのOJTや安全指示は別途必要です。学科の7時間は省略できません。

Q. 同じ作業の経験が豊富な外国人作業員でも、改めて特別教育が必要ですか?

必要です。安衛則第37条は「科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略することができる」と定めていますが、省略の判断は事業者が本人の知識・技能を確認して行うもので、その根拠を残しておく必要があります。海外で取得した修了証の翻訳・確認が手間になるため、実務上は最初から受けさせるケースが大半です。

Q. シールド工事でずい道掘削の特別教育と足場の特別教育を一括実施できますか?

実施できます。ずい道掘削(7時間)+足場(6時間)を合算したカリキュラムを組んで一括実施してください。ただし、記録票と修了証は科目ごとに作成・発行するのが実務上の一般的な運用です。

Q. 多言語eラーニングで実施した場合、別途日本語でテストを受けさせる必要がありますか?

必要ありません。特別教育に修了試験の法定要件はなく、日本語で実施することを求める規定もありません。令和3年1月25日付の厚労省通達(基安安発0125第2号ほか)が求めているのは、受講した事実の確認・講師や教材作成者の知識経験・質問への回答体制です。理解度の確認そのものは通達上の要件ではありませんが、「理解できる言語で教育した」といえる状態を担保する実務上の手段として有効なので、設問・選択肢ともに受講者の言語で用意してください。

Q. 受講ログはどのような形式で保管すればよいですか?

安衛則第38条は「特別教育を行なつたときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを三年間保存しておかなければならない」と定めています。条文が明示しているのは受講者と科目等までで、様式の指定はありません。実務では実施年月日・受講者氏名・科目・教育時間・担当講師名まで残す運用が一般的です。紙・電子どちらでも構いません。eラーニングシステムがCSVで自動出力できれば、元請監査時に迅速に対応できます。

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