要約
- 足場の組立て・解体・変更の業務は、安衛則第36条第39号の特別教育(学科6時間)の対象。実技の定めはない
- 地上や堅固な床上での材料の運搬・整理は対象外。足場の上での補助作業は対象
- 足場の組立て等作業主任者技能講習の修了者などは、通達により全科目を省略できる。ただし省略できるのは本人だけ
- 学科の後に、部材の名前、悪天候時の判断、架空線の位置を現場で確かめると、外国人の新人の理解を確認しやすい
足場の解体に外国人の新人を入れる。地上で部材を受け取るだけなら教育は要らないのか。現場に作業主任者がいれば、新人は受けなくてよいのか。足場の特別教育で多い相談は、この2つです。
答えは、条文と通達で線が引かれています。地上で運ぶだけなら対象外ですが、足場の上で手渡しを受ければ対象です。作業主任者の技能講習を修了した本人は全科目を省略できますが、同じ班の新人は省略できません。この記事では、その線引きを一次資料で確かめ、災害事例と現場での確認手順、5言語の用語対訳まで整理します。
対象になる人、ならない人
対象は、足場の組立て、解体、変更の作業に係る業務です。地上や堅固な床上での補助作業は除かれています。根拠は労働安全衛生法第59条第3項と、労働安全衛生規則(安衛則)第36条第39号で、平成27年(2015年)7月1日に追加されました。
厚生労働省のリーフレットは、除かれる補助作業を「地上または堅固な床上での材料の運搬、整理などの作業」と説明し、足場材の緊結や取り外しの作業、足場上の補助作業は含まれないとしています。現場に当てはめると、次のようになります。
| 作業の例 | 特別教育 |
|---|---|
| 枠組足場の建枠を組む、単管をクランプで緊結する | 必要 |
| 足場の上で部材を受け取り、次の人へ渡す | 必要 |
| 組み上がった足場の一部を取り外して組み替える | 必要 |
| 地上で部材を運び、整理する | 不要 |
| 組み上がった足場の上で塗装だけをする | 組立て等の作業ではないので不要 |
高さの数字も整理しておきます。3つの制度で基準が違います。
- 特別教育:第39号の条文に高さの下限はありません
- 第564条の措置:つり足場、張出し足場、高さ2メートル以上の構造の足場の組立て等で、周知、立入禁止、悪天候時の中止などを求めています
- 作業主任者の選任:つり足場、張出し足場、高さ5メートル以上の構造の足場の組立て等で必要です(安衛法施行令第6条第15号、安衛則第565条)
足場を使うのは建設業だけではありません。後で紹介する事例の1つは、機械器具製造業の工場内で起きています。
学科6時間の中身
科目と時間は安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)第22条が定めています。学科教育だけで、実技の定めはありません。
| 科目 | 範囲 | 時間 |
|---|---|---|
| 足場及び作業の方法に関する知識 | 足場の種類、材料、構造、組立図。組立て・解体・変更の作業方法。点検と補修。登り桟橋、朝顔等 | 3時間 |
| 工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識 | 工事用設備と機械の取扱い。器具と工具。悪天候時の作業方法 | 30分 |
| 労働災害の防止に関する知識 | 墜落防止の設備。落下物の危険防止。保護具の使用と保守点検。感電防止。その他の災害と防止方法 | 1時間30分 |
| 関係法令 | 法、令、安衛則の関係条項 | 1時間 |
一番長いのは足場と作業の方法の3時間です。外国人の受講者は、ここで建地、布、筋かいのような足場特有の言葉に一度に出会います。母国語の教材で意味を押さえても、現場では日本語で呼ばれるので、後の節の対訳表を先に渡しておくと役に立ちます。
省略できる人は誰か
足場の特別教育で最も誤解が多いのが、作業主任者との関係です。通達(平成27年3月31日 基発0331第10号)は、安衛則第37条に基づき、次の人は特別教育の科目の全部を省略できるとしています。
- 足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した人
- 建築施工系とび科の訓練(普通職業訓練)を修了した人、居住システム系建築科または居住システム系環境科の訓練(高度職業訓練)を修了した人など、足場の組立て等作業主任者技能講習規程第1条各号に掲げる人
- とびに係る1級または2級の技能検定に合格した人
- とび科の職業訓練指導員免許を受けた人
注意したいのは、省略できるのは資格を持つ本人だけという点です。現場に修了者が1人いても、同じ班の新人の教育は省略できません。逆に、特別教育を修了しただけでは作業主任者に選任できません。
もう1つ、3時間の短縮教育があります。これは適用日の2015年7月1日時点で、現に足場の組立て等の業務に従事していた人が対象の扱いです。4科目がそれぞれ半分の時間になり、合計3時間でした。厚生労働省のリーフレットによれば、この現在業務従事者への教育には2017年6月30日までの経過措置がありました。それ以降に初めて足場の業務に就く人には当たらないので、外国人の新人は6時間と考えてください。
3件の災害事例
厚生労働省「職場のあんぜんサイト」の労働災害事例から3件を取り上げます。原文の「安全帯」は、今の法令でいう墜落制止用器具のことです。
解体中の鋼管が高圧線に触れた(No.101652)
看板撤去工事で、地上5.5メートルの足場を解体していた作業者が、手に持っていた長さ約1.8メートルの鋼管を高圧引込線に接触させて感電し、地面に墜落して亡くなりました。作業者は墜落制止用の器具を着用していましたが、使用していませんでした。
事例は、感電防止の措置がなかったこと、作業手順書がなかったこと、高さ5メートル以上の足場の解体なのに作業主任者が選任されていなかったことなどを原因に挙げています。特別教育の「労働災害の防止に関する知識」に感電防止が入っている理由が分かる事例です。
解体中の足場が倒れた(No.100695)
機械器具製造業の工場で、排気設備の撤去のために組んだ2段2列の枠組足場を解体中に、足場が倒れて3人が負傷しました。足場の脚部の一部が、塵埃に埋もれた幅19センチメートルの排水路にかかっていたと推定されています。
事例は、足場を移動するたびに床面を確かめなかったこと、解体中の倒壊を防ぐ控えがなかったこと、組立てと解体の知識経験を持つ人がいなかったことを原因に挙げています。
持ち場を離れて移動したときに墜落した(No.100014)
橋桁の塗装用つり足場を組立て中、待機時間に横移動していたと推定される作業者が墜落して亡くなりました。足場上の待機中は器具を掛ける決まりでしたが、移動のときには使っていませんでした。作業主任者が使用状況を監視していなかったことも原因に挙げられています。
3件に共通するのは、作業の主な手順からはみ出した瞬間に起きていることです。外国人の新人に教えるときは、組み方だけでなく、架空線に近づくとき、足場を動かすとき、待機中に移動するときの動きまで具体的に伝えてください。
組立て・解体の現場で決まっていること
特別教育の中身は、現場の決まりと直結しています。次の条文は、外国人の新人にも内容を伝えておきたいものです。
| 条文 | 決まっていること | 新人に伝える一言 |
|---|---|---|
| 第564条第1項第1号 | 組立て等の時期、範囲、順序を作業者に周知する | 今日の順番を聞いてから登る |
| 第564条第1項第2号 | 関係者以外の立入りを禁止する | 表示の中に人を入れない |
| 第564条第1項第3号 | 強風、大雨、大雪等で危険が予想されるときは作業を中止する | 天気が悪ければ止まる |
| 第564条第1項第4号 | 足場材の緊結、取り外し、受渡し等では幅40センチメートル以上の作業床を設け、墜落制止用器具を安全に取り付ける設備等を設けて使わせる | フックを掛けてから外す |
| 第564条第1項第5号 | 材料や工具の上げ下ろしにはつり綱、つり袋等を使う | 投げない |
| 第563条第1項第2号 | つり足場を除き、作業床の幅40センチメートル以上、床材間の隙間3センチメートル以下、床材と建地の隙間12センチメートル未満 | 隙間に足を入れない |
| 第567条 | 足場の作業は点検者を指名して、その日の作業開始前などに点検させる | 点検の人を確かめる |
点検者の指名は令和5年10月1日から義務になりました(基発0314第2号)。通達は、点検者に足場の組立て等作業主任者であって能力向上教育を受けた人など、一定の能力を持つ人を指名することが望ましいとしています。指名は朝礼での口頭でもかまいませんが、外国人の作業者にも誰が点検者か分かるように伝えてください。
組立て中の墜落を防ぐ方法として、厚生労働省は作業床に乗る前に手すりを設ける「手すり先行工法」の効果が高いとしています(基安発0520第1号)。手すりわくや親綱の扱いは、現場の工法に合わせて教えます。
告示に実技はない。現場で何を確かめるか
足場の特別教育に法定の実技はありません。学科を修了すれば教育としては足ります。ただ、外国人の新人が用語と動きを結びつけられているかは、現場に出ないと分かりません。ここからは法定の教育ではなく、自社の任意の確認として、告示の4科目に沿って組み立てた例です。
| 告示の科目 | 誰が | 現場で確かめること | 確かめ方 |
|---|---|---|---|
| 足場及び作業の方法に関する知識 | 作業主任者か職長 | 建地、布、筋かい、壁つなぎ、手すりなど部材の名前が分かるか。今日の順序を言えるか | 部材を指さして呼び名を言ってもらう |
| 工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識 | 作業主任者か職長 | 工具の落下を防ぐ方法と、つり袋の使い方が分かるか。風や雨で止まる判断を誰がするか知っているか | 実物で上げ下ろしを見せてもらう |
| 労働災害の防止に関する知識 | 作業主任者か職長 | フックを掛ける場所を選べるか。架空線の位置を指させるか。立入禁止の範囲が分かるか | 作業場所に立って指さしてもらう |
| 関係法令 | 安全担当者 | 点検者が誰か、器具の使用を命じられたら使う義務があることを理解しているか | 本人の言葉で説明してもらう |
通訳が同席できないときは、対訳表を印刷して使います。確認した日と確かめた人、使った言語を記録に残しておくと、教育の実施記録と合わせて説明できます。
理解度の確かめ方は外国人の理解度確認テストの作り方が参考になります。
5言語の用語対訳
足場の部材名は、一般の翻訳ツールでは現場の意味から外れやすい言葉です。
| 日本語 | 英語 | ベトナム語 | 中国語(簡体字) | インドネシア語 |
|---|---|---|---|---|
| 足場 | scaffold | giàn giáo | 脚手架 | perancah |
| 作業床 | work platform | sàn làm việc | 作业平台 | platform kerja |
| 手すり | guardrail | lan can | 护栏 | pagar pengaman |
| 中さん | mid-rail | thanh giữa | 中间横杆 | palang tengah |
| 幅木 | toe board | tấm chắn chân | 踢脚板 | papan kaki (toe board) |
| 建地 | standard (upright) | cột đứng giàn giáo | 立杆 | tiang tegak perancah |
| 筋かい | brace | thanh giằng chéo | 斜撑 | pengaku diagonal (bracing) |
| 壁つなぎ | wall tie | thanh neo tường | 连墙件 | pengikat dinding (wall tie) |
| 親綱 | lifeline | dây cứu sinh | 水平生命线 | tali induk |
参考訳です。現場で使う呼び方に合わせてください。
間違えやすい区別
足場の周りには、似た名前の教育と資格が並んでいます。
| 比べるもの | 違い | 現場の判断 |
|---|---|---|
| 足場の組立て等作業主任者 | 作業の方法と配置を決め、進行と器具の使用状況を監視する役割(第566条)。特別教育は作業に就く人の教育 | 必要な足場では作業主任者の選任と、作業者の教育の両方を確認する |
| ロープ高所作業特別教育(第36条第40号) | 足場を組めない場所でロープに体を預ける作業の教育。足場の教育の代わりにならず、逆も同じ | 両方の業務に就くなら両方 |
| フルハーネス特別教育(第36条第41号) | 作業床を設けるのが難しい場所でフルハーネス型を使う作業の教育 | 足場の特別教育の受講者は「労働災害の防止に関する知識」を省略できる。足場の技能講習の修了やとび技能士の資格では、フルハーネスの科目は省略できない |
表の3行目は、足場の省略規定と逆の結論になるので注意してください。厚生労働省の質疑応答集(令和5年12月)がフルハーネス側の扱いとして明記しています。
外国語で行うときの扱い
外国人労働者への安全衛生教育は、本人が内容を理解できる方法で行うことが指針(平成19年厚生労働省告示第276号)で求められています。日本語で受講した記録があるだけで足りるかどうかの考え方は、外国語の教材だけで教育してよいかの解説に譲ります。
教材は自社翻訳、翻訳会社、多言語eラーニングの3通りで、費用と更新の比較は特別教育の多言語対応ガイドにまとめています。足場の場合は、部材の向きや手順の順序が多いので、図や映像が入った教材かどうかも確かめてください。
Labona では足場の組立て等特別教育(学科)を受注制作で対応しています。法人マイページから購入でき、日本語版は通常5営業日で受講を開始できます。他言語は順次対応します → 講座一覧
→ 体験デモを試す
まとめ
足場の組立て、解体、変更の業務には学科6時間の特別教育が必要で、地上での運搬・整理だけが外れます。足場の上の手渡しは対象です。技能講習の修了者などは全科目を省略できますが、省略できるのは本人だけで、班の新人は別です。災害事例は、架空線への接触、足場の倒壊、待機中の移動と、主な手順の外で起きていました。外国人の新人には、部材の名前と止まる判断まで現場で確かめ、記録しておきましょう。
よくある質問
Q. 作業主任者の資格があれば、特別教育は不要ですか?
資格を持つ本人は不要です。足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した人は、通達(基発0331第10号)により全科目を省略できます。ただし、現場に修了者がいるからといって、他の作業者が省略できるわけではありません。省略の根拠として、修了証の写しなどを保管してください。
Q. 高さが2メートル未満の足場でも対象ですか?
第36条第39号の条文に高さの下限はありません。一方、第564条の措置は高さ2メートル以上の構造の足場などが対象で、作業主任者の選任は5メートル以上の構造の足場などが対象です。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認してください。
Q. 足場の上で塗装だけをする作業員も必要ですか?
組み上がった足場を使って塗装をするだけなら、組立て等の作業ではないので対象外です。ただし、作業のために手すりなどを外して戻す場合は、変更の作業に当たらないかを確かめてください。第563条第5項は、臨時に取り外した足場用墜落防止設備を、必要がなくなったら直ちに元に戻すよう求めています。
Q. 3時間の短縮教育は、今の新人にも使えますか?
使えません。短縮は、適用日の2015年7月1日時点で現に足場の組立て等の業務に従事していた人の扱いです。これから初めて業務に就く人は6時間です。
Q. eラーニングだけで完了できますか?
告示の定めは学科だけなので、学科をeラーニングで行う場合は、令和3年1月25日の通達の条件を満たせば、実技を別に行う必要はありません。条件の整理はeラーニングの要件の解説にあります。現場での確認は、法定ではありませんが、外国人の新人にはおすすめします。
Q. 足場の点検者は特別教育の修了者でなければなりませんか?
第567条は点検者の指名を求めていますが、特別教育の修了を条件にしてはいません。通達は、作業主任者で能力向上教育を受けた人など、一定の能力を持つ人を指名することが望ましいとしています。
関連ガイド
参考一次資料
- 労働安全衛生法 第59条(e-Gov 法令検索)
- 労働安全衛生法施行令 第6条(e-Gov 法令検索)
- 労働安全衛生規則 第36条第39号・第37条・第38条・第563条〜第567条(e-Gov 法令検索)
- 安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)第22条|厚生労働省法令等データベース
- 安全衛生特別教育規程の一部を改正する告示の適用について(平成27年3月31日 基発0331第10号)|厚生労働省法令等データベース
- 足場からの墜落防止のための措置を強化します(厚生労働省リーフレット)|秋田労働局掲載
- 足場からの墜落・転落災害防止の充実に係る労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について(令和5年3月14日 基発0314第2号)|安全衛生情報センター
- 足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱の改正について(平成27年5月20日 基安発0520第1号)|安全衛生情報センター
- 墜落制止用器具に係る質疑応答集(令和5年12月20日 基安安発1220第2号)|厚生労働省法令等データベース
- 高所で足場の解体作業中、手に持っていた足場部材が高圧引込線に触れ、感電して地上に落下した(No.101652)|職場のあんぜんサイト
- 解体作業中の足場が倒壊し、足場上にいた作業者が転落(No.100695)|職場のあんぜんサイト
- 橋梁の塗装工事でつり足場を組立作業中墜落(No.100014)|職場のあんぜんサイト
- 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(厚生労働省)
