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リスクアセスメントを外国人労働者に多言語で実施する義務|化学物質規制2024年改正の対応完全ガイド

2024年4月施行の化学物質規制改正でリスクアセスメント対象物質は大幅拡大。外国人労働者への結果周知・SDS多言語化・ばく露低減措置の説明義務を、法令根拠と実務フローとともに解説します。

リスクアセスメントを外国人労働者に多言語で実施する義務|化学物質規制2024年改正の対応完全ガイド

塗装・洗浄・溶接・金属加工——化学物質を日常的に扱う職場で、外国人労働者の割合が急速に高まっています。「ラベルをちゃんと確認しているか」と外国人労働者に聞いても「はい」と返ってくるのに、実際には内容を理解していないケースは珍しくありません。2024年4月、日本の化学物質規制が大きく変わりました。リスクアセスメントの義務対象が拡大し、外国人労働者への「理解できる言語での周知」がこれまで以上に問われる局面になっています。この記事では、法令の要点と多言語対応の実務を整理します。

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リスクアセスメントとは何か(安衛法第57条の3)

化学物質の危険性・有害性を事前に評価し、ばく露リスクを低減する一連の手順です。労働安全衛生法第57条の3第1項が法的根拠で、対象となる化学物質の製造・取扱いを行うすべての事業場が義務を負います。

実施の流れは大きく3ステップです。

  1. ハザードの特定——SDS(安全データシート)等をもとに、その化学物質が持つ危険性・有害性を確認する
  2. ばく露の評価——実際の作業で労働者がどれだけその物質にさらされているかを推定または測定する
  3. リスク低減措置の決定と実施——ばく露を下げるための対策を決定し、実行する

そして、このステップの後に続く「リスクアセスメント結果を労働者に周知する」という工程が、外国人対応の文脈で特に重要になります。周知まで完了して初めて、リスクアセスメントの義務を果たしたことになるからです。

2024年4月改正で何が変わったか

2024年4月1日から化学物質規制の「全面施行」が行われ、管理の思想そのものが変わりました。

ここがポイントなのですが、変わったのは単に対象物質の数だけではありません。従来の「国が指定した特定の物質を守る」という枠組みから、事業者が自律的に管理する仕組みへと転換したのです。

GHS分類(国際基準による化学品の危険性分類)で危険有害性が確認された物質全般が、リスクアセスメントの対象物として段階的に追加されています。2024年改正前後を経て、現在は約2,900物質以上(GHS分類で危険有害性が確認されたすべての物質が最終的な対象)がリスクアセスメント対象物となっており、製造業・建設業・物流業を問わず、化学物質を扱うすべての事業場が対象です。

あわせて義務化されたのが、化学物質管理者の選任(すべてのリスクアセスメント対象物を製造・取扱いする事業場)と、保護具着用管理責任者の選任です。

外国人労働者へのリスクアセスメント結果の周知義務

実はこれ、現場では見落とされがちな論点です。

安衛則第34条の2の8により、リスクアセスメントの結果とそれに基づく措置内容は、対象業務に従事する労働者に周知しなければなりません。周知の方法は次の3つのいずれかです。

  • 作業場の見やすい場所への常時掲示または備え付け
  • 書面を労働者に交付する
  • 電子媒体に記録し、作業場で常時確認できる機器(パソコン等)を設置する

法律上「日本語での周知」という規定はありません。しかし、日本語のリスクアセスメント結果を掲示しても、外国人労働者が読んで理解できなければ実質的な周知とはなりません。

正直なところ、「壁に貼ってある」だけで義務を果たしたつもりになっているケースが非常に多い。それが安全配慮義務違反として評価されるリスクは、判例の流れを見ると無視できない水準になっています。外国人労働者への周知は、「本人が理解できる言語で実施すること」が安全配慮義務(労働契約法第5条)上の要請です。

SDSとGHSラベルを外国人に読ませる前に知っておくこと

SDS(安全データシート)は16項目からなる詳細な文書で、化学物質の危険性・有害性・取扱方法・緊急時の対応などが記されています。GHSラベルはその概要版です。

現場の方ならご存知のとおり、日本語で書かれたSDSは専門用語の塊です。「急性毒性(経皮):区分3」「目に対する重篤な損傷性:区分1」——これを日本人担当者でもきちんと解釈できている人は多くありません。外国人労働者に日本語のSDSを渡しても、意味を理解できるはずがないのです。

重要なのは、GHSシンボルを活用しつつ、必ず本人の言語で解説を加えることです。GHSシンボル(炎・どくろ・感嘆符など)は国際標準なので危険の概念は伝わりますが、具体的な対処方法や禁止事項まではシンボルだけでは伝わりません。

また、外国語版SDSが存在する場合でも、専門的な化学物質の翻訳は機械翻訳だけでは精度が不十分なことがあります。バックトランスレーション(翻訳した文を再び元の言語に翻訳して確認する)での品質確認が推奨されます。

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リスクアセスメント実施手順の多言語化——3ステップ別の課題

リスクアセスメントは「やれば終わり」の手続きではなく、各ステップで外国人労働者との言語コミュニケーションが発生します。

ハザード特定の段階

SDSの「区分1」「UN番号」「GHS絵表示」を正しく解読するには専門知識が必要です。外国人労働者が従事する作業で使う化学物質のリストを整理し、それぞれのリスクを母国語でまとめた「化学物質リスクカード」(各物質の危険性・保護具・禁止事項を1枚にまとめたもの)を作成すると、ハザード特定段階での周知が格段に楽になります。

ばく露評価の段階

ばく露評価では、作業者自身が「どんな状況で化学物質を使っているか」を申告・確認するプロセスが発生します。外国人労働者に作業状況を正確に申告してもらうには、母国語で記載できる確認用紙が必要です。「大丈夫です」という返答だけでは、実態把握になりません。

リスク低減措置の決定・周知の段階

保護具の着用義務・換気の確保・作業手順の変更——こうした措置を外国人労働者に正しく伝えるには、母国語での説明資料が欠かせません。特に保護具の正しい着用方法は、言葉だけでなく動画や写真を使って視覚的に伝えることが効果的です。

化学物質管理者と安全衛生担当者の役割分担

2024年4月から選任が義務付けられた化学物質管理者は、事業場における化学物質管理の中心的な担い手です。主な職務は次のとおりです。

  • ラベル表示とSDSの整備・管理
  • リスクアセスメントの実施管理
  • リスクアセスメント結果に基づく措置の実施管理
  • 化学物質に係る教育の実施管理

外国人労働者が多い事業場では、化学物質管理者が教育担当・通訳担当者と連携し、多言語での周知計画を立てることが実務上のカギになります。

「化学物質管理者が1人でSDS翻訳もやらなければならない」という誤解がありますが、翻訳自体は多言語eラーニングや外部翻訳サービスを活用して分担するのが現実的です。化学物質管理者の役割は「翻訳を自分でやること」ではなく、「周知が適切に行われる体制を管理すること」です。

化学物質管理者制度の全体像は、化学物質管理者制度と外国人労働者で詳しく解説しています。

5言語でのリスク周知の実務設計

製造業・建設業・物流業で多い外国人労働者の母国語は、ベトナム語・中国語・インドネシア語・タガログ語・ネパール語です。育成就労制度の拡大にともない、この5言語への対応が実務上の標準になりつつあります。

GHSシンボルは「出発点」にすぎない

GHSの絵表示は国際的に統一されているため、「危険」という認識は伝わります。ただし、具体的にどんな危険なのか、どう対処するのかは絵だけでは伝わりません。絵表示に加えて、各言語での注意書き(保護具の着用・禁止事項・緊急時の対応)を添付することが必要です。

ピクトグラム+母国語テキストの組み合わせが効果的

現場で実際に機能しているのは、「GHSシンボル+5〜10行の母国語説明」という形式です。全文翻訳が難しくても、その化学物質に固有の注意点——「換気なしに使用禁止」「素手で触れた後は必ず洗う」「こぼれたときは○○で処理する」——を5つ程度、母国語で書いたカードを作業場に掲示するだけで大きく変わります。

eラーニングでの周知と受講記録の活用

GHSラベルの読み方や保護具の着用方法を母国語の動画コンテンツで学ばせる方法もあります。eラーニングであれば受講記録が残るため、周知義務を果たしたエビデンスとしても活用できます。監督署調査や元請監査で「この労働者に周知したか」と問われたとき、記録が即時提示できるかどうかが重要です。

ばく露低減措置の記録と外国人への説明義務

リスクアセスメントを実施し措置を決定したら、その内容を記録・保存することが必要です。記録すべき主な内容は次のとおりです。

  • 対象物質の名称と危険有害性の内容
  • ばく露の程度の推定・測定結果
  • 採用したリスク低減措置の内容
  • 周知の方法と対象労働者

外国人労働者が対象に含まれる場合は、使用した言語と周知方法(書面/電子/掲示)も記録しておくと、監督署や元請監査でのエビデンスになります。

正直なところ、「リスクアセスメントはやった、でも記録が残っていない」という事業場が、監督署の指摘を受けるケースは少なくありません。やったことを証明できる形で残すことが、リスクアセスメントの実務上の重要な要素のひとつです。

まとめ

2024年4月の化学物質規制改正により、リスクアセスメント対象物質は大幅に拡大し、事業者による自律的な管理が求められるようになりました。外国人労働者への対応では、「結果を周知した」という形式だけでなく、「本人が理解できる言語で実際に理解した」状態を作ることが安全配慮義務の観点から求められます。SDS・GHSラベルの多言語化、周知記録の整備、化学物質管理者と教育担当者の連携——この3点から着手するのが現実的です。

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よくある質問

Q. 外国人労働者にはSDSを渡すだけでよいですか?

SDSを交付することはリスクアセスメント結果の周知方法のひとつですが、外国人労働者が内容を理解できない場合は実質的な周知とはなりません。安全配慮義務の観点から、理解できる言語での説明が必要です。

Q. 化学物質管理者は自社でSDS翻訳もしなければなりませんか?

翻訳自体は外部の多言語eラーニングや翻訳サービスを活用することが可能です。化学物質管理者の役割は「周知が適切に行われる体制を管理すること」であり、すべての言語を自分で翻訳する義務はありません。

Q. GHSシンボルだけで外国人に危険を伝えられますか?

GHSシンボルは危険の概念は伝えられますが、具体的な対応方法(保護具の種類・禁止作業・緊急時の手順)は言語での説明が必要です。シンボルと母国語テキストの組み合わせが最も効果的です。

Q. リスクアセスメントの記録はどのくらいの期間保存すればよいですか?

化学物質のリスクアセスメント記録は、対象業務が継続し周知等を行っている間は保存が義務付けられています。業務廃止後も物質によっては長期保存が必要な場合があります。詳細は厚労省の指針を確認してください。

Q. 育成就労の外国人にもリスクアセスメントの周知義務はありますか?

はい。育成就労外国人を含むすべての労働者がリスクアセスメント結果の周知対象です。在留資格の種別にかかわらず、雇用した労働者として同等の義務が生じます。

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