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法令・コンプライアンス更新 2026.10.30·約 15 分で読了

玉掛け定期教育は5年ごと5時間|未受講で資格は失効する?外国語実施も

玉掛け業務従事者安全衛生教育(定期教育)の対象、5時間の科目、技能講習・特別教育との違いを指針の原文で整理。玉掛け災害の実例、用具点検の手順、外国人作業員向けの5言語対訳表まで載せています。

玉掛け定期教育は5年ごと5時間|未受講で資格は失効する?外国語実施も

要約

  • 玉掛け定期教育は、労働安全衛生法第60条の2に基づく努力義務の教育で、目安はおおむね5年ごと。受けなくても修了証は失効しない
  • 指針の5時間カリキュラムはつり上げ荷重1トン以上の玉掛け業務向け。1トン未満の特別教育修了者には別の枠組みが当たる
  • 指針の科目に実技はない。ただし用具の点検は、実物を手に取って確認したほうが伝わる
  • 外国人作業員には、ワイヤロープの廃棄基準など判断に使う語を先にそろえる

玉掛けの修了証は、取った後に更新がありません。そのため、10年前に取得した作業員が、その後一度も教育を受けずに現場に立ち続けていることがあります。外国人作業員の場合は、最初の講習を理解できていたかどうかも確かめにくくなります。

この記事では、定期教育と技能講習・特別教育の関係を整理し、指針の5時間をどう進めるか、実際の災害事例と点検基準を踏まえてまとめます。

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定期教育・技能講習・特別教育の違い

3つは名前が似ていますが、目的も根拠も異なります。業務に就く前に必要なのが特別教育と技能講習で、就いた後に知識を更新するのが定期教育です。

特別教育 技能講習 定期教育(業務従事者教育)
対象 つり上げ荷重1トン未満のクレーン等の玉掛け つり上げ荷重1トン以上のクレーン等の玉掛け 玉掛け業務に現に就いている人
根拠 安衛則第36条第19号(玉掛けの業務) 安衛令第20条第16号 安衛法第60条の2、安全衛生教育指針
性格 事業者の義務 就業の条件 事業者の努力義務
時間 学科5時間+実技4時間 学科12時間+実技7時間 5時間(1トン以上の場合)
実技 あり あり 科目になし
修了で資格が増えるか 業務に就ける 業務に就ける 増えない

クレーンのつり上げ荷重で区分するため、荷の重さが軽くても、1トン以上のクレーンで玉掛けをするなら技能講習が必要です。詳しくは玉掛け技能講習と特別教育の違いをご覧ください。

指針の5時間カリキュラムは1トン以上の業務向け

見落としやすいのがこの点です。安全衛生教育指針の別表15は、「玉掛業務(労働安全衛生法施行令第20条第16号の業務)従事者安全衛生教育」と題されています。令第20条第16号は、つり上げ荷重1トン以上の玉掛けです。

1トン未満の特別教育修了者向けの別表はありません。指針の対象者には「特別教育を必要とする業務」も含まれていますが、別表がない教育の内容は「労働災害の動向、技術革新の進展等に対応した事項」、時間は「原則として一日程度」とされています。実務上は別表15の3科目を参考に組むと、1トン以上の作業員と同じ場で受講させやすくなります。

「おおむね5年」は資格取得日から数えるとは限らない

定期教育の時期は、指針本文では「当該業務に従事することになった後、一定期間ごと」とされ、平成3年1月21日基発第39号の安全衛生教育等推進要綱が「おおむね5年ごと」と示しています。起点は業務に就いた後なので、修了後しばらく別の仕事をしていた人は、修了証の日付だけで時期を判断しないでください。努力義務であり、労働安全衛生法の罰則の対象ではありません。ただし、未実施のまま災害が起きれば、安全配慮義務の検討の中で教育の実施状況を問われる可能性があります。

指針が定める5時間の科目

別表15の内容は次のとおりです。科目名と範囲は指針の表記によります。

科目 範囲 時間
1 最近の玉掛用具等の特徴 玉掛用具等の構造上の特徴、クレーン等の安全装置等の特徴 1.0時間
2 玉掛用具等の取扱いと保守管理 玉掛作業の安全、玉掛用具等の点検・整備 2.5時間
3 災害事例及び関係法令 災害事例とその防止対策、労働安全衛生法令のうち玉掛けに関する条項 1.5時間

指針には、ほかにも実務で使う規定があります。

  • 方法: 講義、事例研究、討議など、内容に応じて効果の上がる方法を選ぶ
  • 講師: 業務についての最新の知識と、教育技法についての知識及び経験を持つ人
  • 実施体制: 事業者が自ら行うほか、安全衛生団体等へ委託できる。実施責任者を定め、実施計画を作る
  • 時間帯: 原則として就業時間内に実施する
  • 記録: 実施した教育の記録を個人別に保存する

5時間の進め方:誰が、何を、どの順で

指針が定めるのは科目と時間です。順序は事業者が決められます。自社で実施する場合の一例を示します。

  1. 安全担当者が対象者を抽出する: 作業員ごとに、修了している講習の種類、業務に就いた日、前回の定期教育の日、母語を台帳に書き出します。
  2. 職長が自社の用具を棚卸しする: 実際に使っているワイヤロープ、繊維ベルト、シャックル、クランプと、最近使い始めた用具を集めます。科目1はここから組むと、一般論で終わりません。
  3. 科目1(60分): 講師が用具とクレーンの安全装置の特徴を説明します。外国人作業員には、先に対訳表の語を実物で確認します。
  4. 科目2(150分): 講師が点検の基準を説明した後、受講者が実物を点検します。指針の科目に実技はありませんが、点検基準は図より実物のほうが伝わります。合格品だけでなく、廃棄対象の用具も用意してください。
  5. 科目3(90分): 次節の事例を読み、自社の作業に置き換えて話し合います。討議は母語のグループに分けてもかまいません。
  6. 安全担当者が記録する: 実施日、科目、時間、講師、受講者を個人別に保存し、次回の時期を台帳に書き入れます。

なお、取り扱う機械設備等が新しいものに変わるときの随時教育には、運転操作方法のほか点検整備等の実技に関する事項を加えることが指針に定められています。定期教育と分けて計画してください。

災害事例:点検しなかったロープと、大きすぎたつり角度

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」から、玉掛けの判断が直接関わった2件を取り上げます。どちらも科目3の教材にできます。

事例1:キンクしたワイヤロープをそのまま使用(休業2か月)

その他の金属製品製造業の事例です。建築用のH鋼を天井クレーンでつり上げて移動中に玉掛け用ワイヤロープが切れ、近くにいた玉掛け作業者が落下したH鋼の下敷きになりました。

切れたロープにはキンクと型崩れがありましたが、点検はされていませんでした。1本のロープで2点つりをしており、作業者はつり荷の近くにいました。玉掛け技能講習も修了しておらず、元方事業者は下請への指導と資格確認をしていませんでした。

討議では「作業開始前に誰が見るのか」「傷を見つけたら誰に言うのか」を、日本語と母語の両方で確認します。

事例2:つり角度約120度で鋼管が落下(死亡)

一般貨物自動車運送業の事例です。4人で鋼管をトラッククレーンでトラックへ積み込んでいました。2本のワイヤロープが短く、つり角度は約120度になっていました。旋回中に荷があおりに当たりそうになり、急いでジブを上げた衝撃でロープが切れ、鋼管が落下しました。荷の下に移動していた作業指揮者が被災しています。

鋼管2本の重量は約6.7トン、ロープは接続部の状態から実質7トン程度の強度しかなく、つり角度の影響でロープにかかる張力も約7トンと考えられました。対策には、つり角度を60度程度にすること、安全係数6以上のロープを使うこと、つり荷の下に立ち入らせないことが示されています。

事例2は、つり角度を「言葉で覚えた人」と「計算できる人」の差が出る教材です。ロープの本数だけでなく、角度で張力が変わることを図で説明してください。

用具点検で使う法令上の基準

事例の教訓は、法令の基準に結びつけて教えます。クレーン等安全規則の該当条文は次のとおりです。

  • 第213条: 玉掛用具であるワイヤロープの安全係数は6以上。切断荷重を、ロープにかかる荷重の最大値で割った値です。
  • 第215条: 次のワイヤロープは玉掛用具として使えません。ひとよりの間で素線の数の10パーセント以上が切断しているもの、直径の減少が公称径の7パーセントを超えるもの、キンクしたもの、著しい形くずれまたは腐食があるもの。
  • 第220条: その日の作業を開始する前に、ワイヤロープ、つりチェーン、繊維ロープ、繊維ベルト、フック、シャックル、リング等の異常の有無を点検します。異常を認めたら、直ちに補修しなければなりません。

第215条の4項目は、外国人作業員の理解度確認に向いています。廃棄対象の実物を見せて「使えるか、使えないか、なぜか」を答えてもらえば、言語の差があっても判断を確認できます。理解度の確かめ方は理解度確認テストの作り方も参考にしてください。

現場で使う5言語対訳表

科目2と科目3で使う語をまとめました。講師が日本語で話す場合も、資料にこの語を併記しておくと、説明が止まりません。

日本語 英語 ベトナム語 中国語 インドネシア語
玉掛用具 slinging equipment dụng cụ móc tải 吊索具 perlengkapan sling
玉掛用ワイヤロープ wire rope sling cáp thép móc tải 钢丝绳吊索 sling tali kawat baja
繊維ベルト fiber belt sling đai sợi 纤维吊带 sabuk serat (sling sabuk)
シャックル shackle ma ní 卸扣 sekel (shackle)
つり角度 sling angle góc treo 吊挂角度 sudut sling
素線の切断 broken wires sợi thép bị đứt 断丝 kawat putus
キンク kink xoắn gập (kink) 扭结(打结) tertekuk (kink)
不適格なワイヤロープ(使用禁止) inadequate wire rope (prohibited from use) cáp thép không đạt yêu cầu (cấm sử dụng) 不合格钢丝绳(禁止使用) tali kawat baja yang tidak layak (dilarang digunakan)
地切り lifting the load slightly off the ground nhấc tải vừa rời khỏi mặt đất 吊离地面(试吊) mengangkat beban sedikit dari lantai
合図を行う者(合図者) signal person người ra tín hiệu 指挥人员(信号员) pemberi isyarat

参考訳です。現場で使う呼び方に合わせてください。

外国語で実施するときの考え方

労働安全衛生法第60条の2に教育言語の定めはありません。安全配慮義務の観点では、記録があることに加え、内容が伝わったかどうかが問題になりえます。通訳、翻訳、多言語教材の比較は特別教育の多言語対応ガイドに譲り、ここでは定期教育特有の点だけを挙げます。受講者は作業の経験があるため、教材の読み上げより、自社の用具と事例を母語で話し合う時間を確保してください。

Labona が公開講座として提供しているのは、就業前の玉掛け業務特別教育(つり上げ荷重1トン未満)の学科eラーニングで、JP・EN・VN・CN・ID の5言語で受講できます(実技4時間は事業者で実施)。定期教育の教材は、玉掛け業務従事者安全衛生教育として受注制作で承ります。受講ログ・理解度テスト・修了証PDF(学科受講証明)は管理画面で確認できます。

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まとめ

玉掛け定期教育は、おおむね5年ごとを目安とする努力義務の教育で、1トン以上の業務には指針の5時間カリキュラムがあります。修了証の効力には影響しませんが、ワイヤロープの点検やつり角度の判断を更新する機会になります。

まず、作業員ごとに「いつ業務に就いたか」「前回いつ受けたか」を台帳に書き出してください。そのうえで、自社の用具を実物で確認する時間を5時間の中に確保すると、外国人作業員にも内容が届きやすくなります。

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よくある質問

Q. 定期教育を受けないと、玉掛け技能講習の修了証は失効しますか?

失効しません。定期教育は努力義務で、修了証の有効期限を定める制度ではありません。ただし、未実施のまま災害が起きた場合に、教育の実施状況を問われる可能性はあります。

Q. 1トン未満の特別教育しか受けていない作業員は、5時間の定期教育の対象ですか?

指針の別表15が対象としているのは、令第20条第16号の1トン以上の玉掛け業務です。1トン未満の業務には別表がなく、指針の一般的な内容(労働災害の動向や技術革新に対応した事項、原則一日程度)が当たります。同じ職場で別表15の科目に合わせて一緒に実施することは可能です。

Q. 5年を過ぎている作業員には、今からでも実施できますか?

実施できます。次回の時期は実施日を基準に台帳へ書き入れてください。過去の未実施が帳消しになるわけではないため、対象者が多い場合は、つり荷の大きい作業に就く人から順に実施するのが現実的です。

Q. 定期教育に実技を入れる義務はありますか?

別表15の科目に実技はありません。実物の点検を入れるかどうかは事業者の判断です。一方、機械設備が新しいものに変わるときの随時教育には、実技に関する事項を加えることが指針に定められています。

Q. 記録は何年保存すればよいですか?

指針は「個人別に保存する」と定めていますが、年数は示していません。特別教育の記録は安衛則第38条により3年間の保存が義務ですが、定期教育は次回の時期を判断する資料でもあるため、少なくとも次回の実施までは保管してください。

Q. 派遣先で玉掛け業務に就く外国人作業員の定期教育は、どちらが実施しますか?

労働者派遣法第45条第1項により、労働安全衛生法第60条の2については派遣先も事業者とみなされ、派遣元と派遣先の双方に努力義務がかかります。実際の用具や作業を把握している派遣先が主導し、受講記録を派遣元と共有する形が自然です。


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