LabonaLabona
法令・コンプライアンス·約 12 分で読了

外国人労働者の労働条件通知と安全衛生説明義務|多言語対応の実務チェックリスト

外国人を雇用する際の労働条件通知書(労基法第15条)は外国語対応が求められます。安全衛生事項の明示・雇用管理指針・理解確認の実務チェックリストを初めて雇用する企業向けに解説。

外国人労働者の労働条件通知と安全衛生説明義務|多言語対応の実務チェックリスト

外国人を初めて雇う企業の担当者からよく聞くのが、「労働条件通知書は日本語でいいのか、何を書けばいいのか」という疑問です。特に、安全衛生に関係する業務——危険有害な機械を使う作業や、特別教育が必要な業務——を外国人に担当させる場合は、書き方ひとつで後々の法的リスクが変わります。

この記事では、労働基準法第15条の明示義務・外国人雇用管理指針の安全衛生要件・理解確認の実務を、チェックリスト付きで整理します。

→ Labona の安全教育 eラーニングを資料請求する

労基法第15条の全体像——2024年改正で何が変わったか

労働基準法第15条第1項は、使用者が労働契約の締結に際して労働者へ労働条件を明示する義務を定めています。このうち、次の項目は書面の交付が義務です(労基則第5条第3項・第4項)。労働者が希望した場合に限り、ファクシミリや電子メール等の電磁的方法によることもできます。

書面必須の項目(主なもの)
労働契約の期間(有期か無期か)
就業の場所および従事すべき業務(変更範囲も含めて明示:2024年4月改正)
始業・終業時刻、時間外労働の有無
賃金(計算方法・支払日)
退職に関する事項

2024年4月1日施行の労基則改正では、「就業場所・業務の変更範囲」と「有期労働契約の更新上限」が書面明示の必須事項に追加されました。将来的に危険有害業務に配置転換する可能性がある場合、その変更範囲を最初から明示しておく必要があります。

外国人労働者に対しては、労働条件の明示そのものに加え、本人が理解できる言語での説明に努める義務(外国人雇用管理指針)が課されています。外国語版の通知書を作らない場合でも、口頭での説明・資料の翻訳補足は最低限必要です。

安全衛生に関する事項を労働条件通知書に含める実務

労基則第5条第1項第7号は「安全及び衛生に関する事項」を明示すべき労働条件として挙げています。ただしこれは、その定めをする場合に明示すれば足りる相対的明示事項であり、書面交付まで義務づけられる第1号〜第4号(同条第3項)には含まれません。この「明示義務はあるが書面必須ではない」という位置づけだからこそ、次の2つの理由から、安全衛生に関係する事項を通知書または補足資料に落として残す実務が重要になります。

理由①:有害危険業務の明示(変更範囲の問題)

2024年4月改正後の労基則第5条は「従事すべき業務の変更範囲」の明示を義務付けています。丸のこ盤・フォークリフト・高所作業など特別教育が必要な業務に将来配置する予定があれば、その旨を変更範囲に含めておく必要があります。後から「こんな危険な仕事をするとは聞いていない」という争いを防ぐためにも、入社時の明示が重要です。

理由②:安全配慮義務との連動

雇い入れた直後に特別教育や雇入れ時安全衛生教育(安衛則第35条)を実施するスケジュールを、入社前に外国人労働者に伝えておく——これは法定ではありませんが、安全配慮義務(労働契約法第5条)の履行として有効です。「どんな危険があり、どんな教育を受けて業務に就くのか」を事前に理解した状態で入社させることが、後のトラブルを防ぎます。

補足資料に記載しておきたい安全衛生関連事項(例)

  • 主な就業場所(工場・建設現場・倉庫等)と代表的な危険有害要因
  • 特別教育が必要な業務に就かせる予定がある場合はその業務名
  • 保護具(ヘルメット・安全靴・手袋等)の着用義務
  • 雇入れ時安全衛生教育の実施日程(入社日から何日以内か)
  • 緊急時の連絡先(日本語と母国語の両方で)

外国人雇用管理指針の安全衛生要件

厚生労働大臣告示「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」は、外国人労働者を雇用するすべての事業者に適用されます。

指針の安全衛生に関する主な要求事項は次のとおりです。

労働条件の明示 「外国人労働者が理解できる言語(母国語等)での明示に努めること」。努力義務の形ですが、後述のとおり、これを履行しないまま労働災害が発生した場合には安全配慮義務違反の根拠になり得ます。

安全衛生教育 「安全衛生教育の実施に当たっては、母国語等を用いる、視聴覚教材を用いる等、外国人労働者が理解できる方法で行うよう努めること」。

危険有害業務への配置 「危険又は有害な業務に就かせる場合には、当該業務に関する安全衛生教育を行うこと」——これは努力義務ではなく、労安法第59条に基づく義務です。

留意したいのは、指針における「努力義務」の扱いです。努力義務であっても、安全配慮義務(労働契約法第5条)の文脈では「合理的な範囲で努力すべきだったのに何もしなかった」という評価につながります。指針の要求を実質的に満たしていないまま外国人が被災した場合、損害賠償請求を受けるリスクがある点を押さえておいてください。

書面交付だけでは足りない「理解確認」の記録化

書面を渡した、電子で送った——これだけでは不十分です。外国人労働者が書面の内容を理解したことを確認し、その記録を残すことが実務上重要です。

理解確認の方法(実務で使えるもの)

確認方法 特徴
署名・サインによる受領確認 簡便。「受け取った」だけで「理解した」の証明にはならない
母国語での口頭説明 + 確認テスト 理解度を記録できる。通訳が必要になる場合がある
母国語版書面の交付 + 質問回答記録 後の監督署調査でも使えるもっとも有効な方法
多言語eラーニングの受講記録 受講ログが自動保存。安衛法の雇入れ時教育と一体で運用可

「理解確認」の記録は、安全衛生教育の実施記録(安衛則第38条の3年保管義務がある特別教育記録とは別)とセットで保管しておくと、監督署の調査対応がスムーズです。

重要な実務ポイントがあります——外国人労働者に「わかりましたか?」と聞くと「はい」と返ってくることが多い。確認は「この機械を操作するとき、最初に何をしますか?」「保護具はどれを使いますか?」のように、具体的な手順を自分の言葉で答えさせる形の方が実効性があります。

言語別の留意事項

現場で使われることの多いベトナム語・インドネシア語・英語・中国語を中心に、実務上よく問題になる点を整理します。

ベトナム語 ベトナム語は敬語・丁寧語のニュアンスが職場の上下関係に影響します。「義務」と「お願い」が伝わり方が違う言語なので、「〜しなければならない」の表現に注意してください。また、日本の労働慣行(残業・休日出勤の取り扱い等)と本国での慣行が異なるため、基本的な就労ルールを具体例で説明することが有効です。

インドネシア語 イスラム系の習慣(礼拝時間・ハラール食)への配慮を条件通知書に含める企業も増えています。条件面で合意していた内容が実態と異なると、定着率の低下に直結します。安全衛生事項とともに就労環境全体を入社前に説明しておくことが重要です。

英語 フィリピン出身者や一部のアジア系労働者への共通言語として機能しますが、法律用語・安全専門用語(特別教育・安全配慮義務等)の英訳には注意が必要です。直訳では意図が伝わらないケースがあります。

中国語(簡体字・繁体字) 中国本土出身者には簡体字、台湾・香港出身者には繁体字を使うことが基本です。安全衛生分野の用語は日中で類似したものが多い半面、法制度の違いから「なぜそのルールが必要なのか」の背景説明が有効です。

監督署調査時に求められる記録の整備

労働基準監督署の定期調査・是正指導の際に、外国人雇用に関して確認されることが多い書類を整理します。

確認項目 準備しておく書類
労働条件明示 労働条件通知書(外国語版または外国語説明資料)
雇入れ時教育の実施 教育実施記録(実施日・科目・時間・受講者名・使用言語)
特別教育の実施 特別教育修了記録(安衛則第38条・3年保管)
在留資格の確認 ハローワークへの外国人雇用状況の届出(雇入れ・離職時)
賃金支払いの適正 賃金台帳(最低賃金法・時間外割増の確認)

外国人雇用に関する監督署調査では、「日本語で書かれた書類はあるが、外国人本人への説明記録がない」というケースでの是正指導が増えています。書類を整えることと、「実際に理解させた」の記録を残すことは別の話です。

実務チェックリスト

外国人を雇い入れる際の安全衛生・労働条件対応のチェックリストです。

A. 採用・入社前

  • 労働条件通知書(または雇用契約書)を外国語(母国語または英語)で作成しているか
  • 就業場所に有害危険業務が含まれる場合、変更範囲として明記しているか(2024年4月改正対応)
  • 保護具着用義務・緊急連絡先を外国語で説明しているか
  • 雇入れ時安全衛生教育・特別教育の実施スケジュールを入社前に共有しているか

B. 入社時(雇入れ時教育と連動)

  • 外国語(母国語)での労働条件の口頭説明を実施し、確認記録を作成したか
  • 雇入れ時安全衛生教育(安衛則第35条)を本人が理解できる言語で実施したか
  • 教育後に理解確認(質問・実演)を行い、記録に残したか

C. 特別教育が必要な業務への配置時

  • 業務に就かせる前に特別教育を実施したか
  • 教育記録(安衛則第38条:3年保管)を整備したか
  • 外国人労働者の場合は使用言語も記録したか

D. 継続管理

  • 法改正(労基則・安衛則等)に伴い労働条件通知書を更新したか
  • 業務内容変更時に再説明・再記録を行ったか
  • 外国人雇用状況をハローワークに届け出たか(雇用保険の被保険者は雇入れ=翌月10日まで/離職=離職日の翌日から起算して10日以内、被保険者でない場合は雇入れ・離職とも翌月末日まで)

まとめ

外国人労働者への労働条件通知(労基法第15条)は、日本語書類を渡すだけでは安全配慮義務上の要件を満たしません。外国人雇用管理指針は、本人が理解できる言語での明示に「努めること」を求めており、これを怠ったまま労働災害が発生すると安全配慮義務違反の根拠になります。

安全衛生に関する事項(危険有害業務の明示・特別教育の実施スケジュール・緊急連絡先)を労働条件通知書または補足資料に含め、口頭説明と理解確認の記録をセットで管理する運用が実務上の標準です。

→ 無料で資料請求する

→ 体験デモを試す


よくある質問

Q. 労働条件通知書は必ず外国語で作らなければなりませんか?

法律上の義務は「書面(または電磁的方法)での明示」であり、言語は指定されていません。ただし外国人雇用管理指針は、本人が理解できる言語での明示に努めることを求めています。日本語のみの場合でも、口頭説明・補足翻訳資料・多言語eラーニング等で「理解させた」記録を残すことが、安全配慮義務の履行として重要です。

Q. 雇入れ時安全衛生教育と労働条件通知書は別に管理すべきですか?

はい、それぞれ別の書類として管理することを推奨します。労働条件通知書は雇用契約関連文書として保管し、安全衛生教育の実施記録(実施日・科目・時間・受講者名・使用言語)は安全衛生関連書類として3年間保管してください。特別教育の記録は安衛則第38条に基づく3年保管義務があります。

Q. 派遣社員として外国人を受け入れる場合、労働条件通知書の対応は派遣元ですか派遣先ですか?

労働条件通知書(雇用契約の締結)は雇い主である派遣元の義務です。ただし、実際の就業場所・業務内容・保護具・安全衛生ルール等は派遣先の情報が必要であり、派遣元が正確な情報を外国人に伝えるためには派遣先との情報共有が欠かせません。なお、労働者派遣法第45条第1項は、派遣先にも適用される労安法の条文を限定して列挙しており、そこに挙げられている安全衛生教育は第59条第2項(作業内容変更時の教育)です。第59条第1項の雇入れ時教育と第3項の特別教育は列挙されていないため、特別教育の実施義務は派遣元が負います。

Q. 在留資格の種類によって、明示すべき事項に違いはありますか?

基本的な労働条件の明示義務は在留資格に関わらず同じです。ただし、特定技能・育成就労(技能実習)・特定活動等では、在留資格に定められた業務範囲と実際の就業業務が合致していることを確認したうえで、業務内容を明示する必要があります。就業させてよい業務の範囲を超えた場合は、労基法違反に加え入管法違反になり得ます。


関連ガイド

参考一次資料

Labona の講座

この記事に関連する受講可能な講座

Labonaは5言語で安全衛生教育を提供しています。受講者1名から購入可能、修了証PDFも即発行。

この記事をシェア

Labona について

外国人労働者の安全教育を、5言語で。

ベトナム語・中国語・インドネシア語など5言語対応の安全衛生 eラーニング。受講記録の自動管理で、人事の手間を大幅に削減します。

関連性の高い記事