LabonaLabona
業界別の活用事例·10 分で読了

解体工事業の外国人労働者 安全衛生教育|石綿・粉じん・高所の三重リスクと多言語教育の進め方

解体現場は石綿・粉じん・高所転落という三重リスクが重なり、外国人労働者への複数の特別教育が義務です。各特別教育の法令根拠・時間数・事前調査義務・多言語対応のポイントを現場責任者向けに体系整理します。

解体工事業の外国人労働者 安全衛生教育|石綿・粉じん・高所の三重リスクと多言語教育の進め方

解体工事の現場に、外国人労働者が増えています。2024年10月末時点で建設業全体の外国人労働者数は約18万人(前年比22.7%増)。その中に解体専従の職人が着実に増えています。

ところが、解体現場は建設の中でも特別な危険が重なる場所です。石綿(アスベスト)の飛散リスク、粉じんによるじん肺のリスク、高所からの墜落・転落リスク——この三重リスクをすべて抱えているのが解体工事業です。

教育を一つでも漏らすと、事業者は法令違反になるだけでなく、労災事故が起きたとき「理解させていなかった」として重い民事責任を問われます。三つの特別教育と石綿事前調査の概要、そして外国人への多言語対応のポイントをここで整理します。

Labona の安全教育 eラーニングを資料請求する

外国人が増える解体現場の実態

解体工事業への外国人受入は、ここ数年で急加速しています。

建設業の外国人労働者は約18万人(2024年10月末・厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」)で、前年から22.7%増えました。国籍別ではベトナムが最多(約7万人)で、次いでインドネシアが急増中です。解体工事は技能実習・特定技能・育成就労の受入対象であり、今後も外国人比率は上がり続ける見通しです。

ここがポイントなのですが、解体現場の特別教育は「一つ受けたら終わり」ではありません。石綿・粉じん・足場の三種類がそれぞれ独立した義務として存在しており、どれかを欠いた状態で作業に従事させると労働安全衛生法違反です。外国人に限らず全従事者が対象ですが、多言語対応が必要な外国人労働者の場合は、準備の手間が単純に倍になります。

三重リスクの全体像

解体現場では、三つの特別教育義務が同時に発生します。

まず石綿(アスベスト)取扱作業従事者特別教育(安衛則第36条第37号・石綿則第27条)。次に粉じん作業特別教育(粉じん障害防止規則第22条)。そして足場の組立て等特別教育(安衛則第36条第39号)です。

解体工事では足場を組んで高所に上がり、石綿を含む建材を撤去し、その過程で大量の粉じんが発生します。三つの危険が一つの現場に折り重なる——それが解体工事業という業種の構造的な特徴です。

率直に申し上げると、この三種類を全部揃えて記録まで管理している現場は、業界の中でもまだ多くありません。外国人が増えている今こそ、体制を整える絶好のタイミングです。

石綿(アスベスト)特別教育

石綿は見た目では分かりません。これが最大の怖さです。

石綿取扱作業従事者特別教育は、石綿含有建築物の解体・改修等の業務に従事する労働者全員に実施義務があります(安衛則第36条第37号・石綿障害予防規則第27条)。カリキュラムは学科4.5時間(健康障害・防護措置・関係法令・作業の方法)で、特別教育の中では比較的コンパクトな構成です。

問題は外国人への説明です。石綿の健康被害(中皮腫・肺がん)は、ばく露から発症まで20〜40年かかります。若い外国人労働者に「今は何ともなくても、40年後に肺がんになる」という事実を、母国語で腑に落ちるまで説明できているかどうか。これが安全配慮義務の核心です。日本語の資料を渡しただけで「実施した」にはなりません。

加えて、防じんマスク・送気マスクの正しい装着も重要です。外国人労働者の中には「少しの作業なら大丈夫」と外してしまうケースがあります。着用義務と理由を母国語で徹底することが欠かせません。

粉じん作業特別教育

解体工事では、石綿以外の粉じんも大量に発生します。

粉じん作業特別教育は、粉じん障害防止規則第22条に基づく義務です。特定粉じん作業(例:コンクリートの切断・研削、岩石・建材の破砕)に従事する労働者に実施します。教育時間は学科3時間・実技1時間です。

じん肺は、石綿と同様に「発症まで何年もかかる」慢性疾患です。粉じんを吸い続けることで肺が線維化し、呼吸機能が低下していきます。治療法はなく、進行を止めることしかできません。外国人労働者に「地道な防護の積み重ねが将来の自分を守る」と理解させるには、母国語での丁寧な説明が不可欠です。

現場の方ならご存知のとおり、解体作業中に「粉じんが少ない瞬間」など存在しません。防じんマスクの選択・着用・管理を、石綿特別教育と合わせて総合的に教えるのが実務上は効率的です。

足場の組立て等特別教育

高所での解体作業には、足場の特別教育も必要です。

足場の組立て・解体・変更の作業に従事する者には、安衛則第36条第39号に基づく特別教育(学科6時間)が義務です。足場を組む職人だけでなく、足場を使って解体作業をする全員が対象です。

外国人労働者の墜落・転落事故は、建設業の死傷事故の中でも件数が多い類型です。特に経験の浅い外国人労働者は、足場の異常(踏み板のがた・手すりの欠損)に気づかないまま作業を続けてしまいやすい。「少しの間だからハーネスを外す」という判断が、そのまま事故につながります。

なお、フルハーネス型安全帯の使用についても別途特別教育が必要です(安衛則第36条第41号)。高所作業が多い解体現場では、足場特別教育と合わせて受講させるケースがほとんどです。

体験デモを試す

石綿事前調査制度と解体業者の義務

解体工事を請け負う前に、まず事前調査が義務です。

2022年4月1日から、大気汚染防止法・石綿障害予防規則の改正により、一定規模以上の解体・改修工事(延べ床面積80㎡以上の建物解体など)では、石綿含有建材の有無を事前調査し、結果を都道府県と労働基準監督署に報告することが義務づけられています。

事前調査を行う「石綿含有建材調査者」には一定の資格が必要であり、調査記録は工事終了後3年間保存しなければなりません。「石綿がなかった」という結果も記録として残す義務がある点に注意が必要です。

外国人を解体作業に従事させる前のフローを整理すると、次の順番になります。まず事前調査を完了して石綿の有無を確認する。石綿がある場合は石綿則に基づく作業計画を策定する。そして特別教育を受講させた記録を整えてから作業に従事させる——この順番は省略できません。

解体作業における外国人特有の判断ミス

経験豊富な日本人職人なら無意識に避ける判断を、外国人労働者は知らずに踏み越えてしまいます。

「壁材は全部同じ素材だろう」という思い込みが、石綿含有建材を素手で扱う事故につながります。石綿は見ただけでは判断できない。調査済みのレベル分類(レベル1〜3)と危険区分を母国語で理解させることが必要です。

「粉じんが出てきたからマスクを調整しよう」という行動も起きます。防じんマスクは作業前から着用し、作業中は外さない。この基本習慣を、なぜそうするかを含めて母国語で教え込む必要があります。

「足場の手すりがぐらついていたけど、言いにくくて黙っていた」というケースも現場でよく聞きます。外国人労働者が異常を報告しない背景には、「怒られる恐怖」「言語の壁」「職場の雰囲気」の三つが重なっています。ヒヤリハット報告の仕組みを多言語で整備することと、「報告はプラス評価だ」という空気をつくることの両方が求められます。

三つの特別教育、記録をどう一元管理するか

三種類の特別教育記録を個別に管理すると、誰が何を受けたか混乱します。

労安則第38条では特別教育の記録を3年間保管する義務があります。同一人物が石綿・粉じん・足場の三つを受けた場合、それぞれの実施日・担当講師・科目・時間・確認テストの結果を別個に記録・保管しなければなりません。

実務上のポイントは三つです。まず、受講管理台帳を人ごとに作り、三種類の受講履歴を一覧で確認できる形にすること。次に、外国人労働者の教育記録には「使用言語」を明記しておくこと(監督署や元請の監査で確認されます)。最後に、eラーニングを活用している場合は、システム側に受講記録が残るため紙台帳との二重管理を省けます。

元請に提出を求められる場面では、三種類の修了証のコピーと受講台帳をセットで出せる状態にしておくと対応が早い。正直なところ、この整備ができていない現場は、監督署の立入検査でほぼ必ず指摘を受けます。

無料で資料請求する

まとめ

解体工事業では、石綿・粉じん・足場という三種類の特別教育が重なって義務化されています。外国人労働者への教育は、法定の実施義務を果たすだけでなく、「母国語で理解させた」というエビデンスを残すことが安全配慮義務上の要請です。2022年4月から石綿事前調査の報告義務も始まっており、調査→教育→作業の順番を守ることが法令順守の前提です。三重リスクを多言語で網羅的に教えることは、事故防止と同時に労災・訴訟リスクの低減にも直結します。


よくある質問

Q. 石綿・粉じん・足場の三種類を同日に受講させることはできますか?

合計13.5時間(石綿4.5時間+粉じん4時間+足場6時間)になるため、1日での完了は現実的ではありません。石綿と粉じんをまとめて1日(8.5時間)、足場を別日(6時間)という2日間での実施が一般的です。いずれも受講記録は別々に保管してください。

Q. 外国語で特別教育を行っても法的に有効ですか?

有効です。労働安全衛生法・施行規則には「日本語で実施する」という規定はありません。「労働者が理解できる言語で実施すること」が安全配慮義務の観点から求められており、外国語での実施はむしろ推奨されます。ただし、修了記録には使用言語を明記し、理解度確認(テスト等)の記録も残してください。

Q. 解体工事に新たに外国人を採用したとき、特別教育はいつまでに実施すればいいですか?

作業に従事「させる前」です。雇入れ後に研修期間を設けて実施するのが正しい順序です。特別教育未実施のまま作業に従事させると、安衛則第36条違反となり、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象になります(労安法第119条)。

Q. 石綿の事前調査は誰が行いますか?外国人がやってよいですか?

2023年10月1日以降は「石綿含有建材調査者」(一般・特定)の資格保有者が調査を行う必要があります。外国人であっても、この資格を取得していれば調査は可能です。ただし資格試験は現在日本語のみのため、外国人が単独で調査者になるケースは限られています。

Q. 石綿特別教育の修了証に有効期限はありますか?

修了証自体に有効期限はありません。ただし、石綿障害予防規則第27条第2項では作業主任者の指揮下で作業させることが義務とされており、法改正や技術の更新に対応するための定期的な再教育(業務従事者教育)を行うことが実務上推奨されています。

関連ガイド

参考一次資料

Labona の講座

この記事に関連する受講可能な講座

Labonaは5言語で安全衛生教育を提供しています。受講者1名から購入可能、修了証PDFも即発行。

この記事をシェア

Labona について

外国人労働者の安全教育を、5言語で。

ベトナム語・中国語・インドネシア語など5言語対応の安全衛生 eラーニング。受講記録の自動管理で、人事の手間を大幅に削減します。

関連性の高い記事