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廃棄物処理業 外国人の安全教育|石綿・廃プラ・医療廃棄物の複合リスク

廃棄物処理業で外国人労働者に必要な安全教育を整理。石綿の特別教育は解体等作業が対象で処理施設内の選別は射程外、粉じんは特定粉じん作業のみが義務——条文に沿った線引きと多言語対応の実務を解説します。

廃棄物処理業 外国人の安全教育|石綿・廃プラ・医療廃棄物の複合リスク

要点

  • 石綿の特別教育(安衛則第36条第37号・石綿則第27条)の対象は「石綿使用建築物等解体等作業」。処理施設の構内で石綿含有廃棄物を選別・移動する作業はこの特別教育の対象ではない
  • ただし「石綿等を取り扱う作業」として、石綿作業主任者の選任・保護具・作業の記録(40年保存)・6か月以内ごとの石綿健康診断はかかる
  • 粉じんの特別教育の対象は「粉じん作業」ではなく「特定粉じん作業」——別表第1と別表第2の両方に当たるものだけ。屋外の破砕や手持式動力工具による破砕は対象外
  • 廃棄物処理法には全従業員への安全教育を一般的に義務づける規定はない。教育義務は労安法第59条の側にある

廃棄物処理業では、近年、外国人労働者の受け入れが急速に広がっています。しかし「廃プラ圧縮機の挟まれ事故」「医療廃棄物の針刺し」「解体廃材に潜む石綿ばく露」――三つのリスクが重なるこの業種で、日本語が不十分な労働者に危険を正しく伝えられているでしょうか。この記事では、廃棄物処理業特有の複合リスクと、石綿・粉じんの特別教育が「どの作業まで」義務になるのかという条文上の線引き、そして外国人への多言語対応の実務ポイントを整理します。

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廃棄物処理業の外国人安全教育:なぜ今、見直しが急務か

人手不足が深刻な廃棄物処理・リサイクル業界で、外国人労働者の採用が増えています。

厚生労働省の調査によると、令和7年10月末時点の外国人労働者数は約257万人にのぼります。建設・製造以外の業種でも拡大が続いており、廃棄物処理業もその例外ではありません。収集・運搬から中間処理(分別・破砕・圧縮)まで、幅広い工程で外国人従事者が増えています。

問題は、この業種の「危険の多様さ」です。建設業や製造業と異なり、廃棄物処理の現場には「何が混入しているか分からない」という根本的なリスクがあります。日本語を母語とするベテランでも注意が必要な環境です。入職間もない外国人労働者が適切な教育なしに作業に就けば、重大事故に直結します。

廃棄物処理業の3大複合リスク

廃棄物処理業には業種特有のリスクが集中しています。大きく三つに整理できます。

① 廃プラ・廃棄物の破砕・圧縮機による挟まれ・巻き込まれ

プレス機や破砕機の操作中の挟まれ事故は、廃棄物処理業で最も多い重篤事故の一つです。令和7年の外国人労働者の労働災害統計では、死傷者7,124人のうち「はさまれ・巻き込まれ」が21.7%で最多となっています。機械の停止確認や作業手順を母語で理解させていない場合、このリスクはさらに高まります。

② 医療廃棄物の感染・針刺し

病院や診療所から排出される感染性廃棄物(使用済み注射針・血液付着物など)を扱う事業所では、針刺しによるHBV・HIV感染のリスクがあります。「特別管理産業廃棄物」(通常の産業廃棄物と区別して厳重に管理が必要な廃棄物)として法令上も厳格に扱われますが、外国人労働者が廃棄物の種類を正しく識別できているかどうかが問われます。

③ 解体廃材に潜む石綿(アスベスト)ばく露

解体工事から搬入された廃材の中には、石綿含有建材が混入している場合があります。外見では判断できないことが多く、「何の変哲もない古いボード」が実は石綿入りだったというケースは珍しくありません。ただし、処理施設の構内でこれを扱う場合にかかる法令は、解体現場向けの特別教育とは根拠条文が違います。この点は後の節で条文に沿って整理します。

石綿は「どこまで」特別教育の対象か

石綿の特別教育について、廃棄物処理業でよく起きる読み違いがあります。条文から確認しましょう。

労働安全衛生規則第36条第37号が特別教育の対象としているのは、次の業務です。

「石綿障害予防規則(平成十七年厚生労働省令第二十一号。以下「石綿則」という。)第四条第一項に掲げる作業に係る業務」(労働安全衛生規則第36条第37号)

そして石綿則第4条第1項が指すのは「石綿等が使用されている解体等対象建築物等の解体等の作業」——条文上「石綿使用建築物等解体等作業」と定義される作業です。石綿則第27条の特別教育(学科4時間30分)も、対象はこの解体等作業に係る業務に限られます。

つまり対象は建築物・工作物・船舶の解体・改修等であって、廃棄物処理施設の構内に搬入された石綿含有廃棄物を選別したり移動したりする作業は、この特別教育の対象そのものではありません。自社の作業員が解体現場に出て除去・改修に従事するなら当然に対象ですが、施設内の処理工程だけを見て「特別教育が必要」と判断するのは条文の射程を越えています。

なお、教育を実施した場合の受講記録は安衛則第38条により受講者・科目等を3年間保存します。特別教育の未実施は労働安全衛生法第119条第1号が適用され、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(2025年6月施行の刑法改正により「懲役」は「拘禁刑」に変わっています)。

では、施設内で石綿含有廃棄物を扱うときは何がかかるのか

義務がゼロという意味ではありません。石綿を重量の0.1%を超えて含有する物は労働安全衛生法施行令第6条第23号の「石綿等」に当たり、これを取り扱う作業には石綿則の各規定がかかります。

  • 石綿作業主任者の選任(石綿則第19条)——石綿作業主任者技能講習の修了者から選任します。特別教育とは別系統の義務です
  • 粉じんの発散防止措置(同第13条)——切断等の作業では湿潤化や、除じん性能を有する電動工具の使用など
  • 呼吸用保護具・作業衣の使用(同第14条)と保護具の備え付け(同第44条)
  • 立入禁止の表示(同第15条)・掲示(同第34条)・運搬貯蔵時の容器と表示(同第32条)
  • 作業の記録(同第35条)——常時従事する労働者について1か月を超えない期間ごとに記録し、その作業に従事しなくなった日から40年間保存します
  • 石綿健康診断(同第40条)——雇入れまたは配置替えの際と、その後6か月以内ごとに1回

加えて、危険有害業務に現に就いている労働者への安全衛生教育は労働安全衛生法第60条の2努力義務とされています。法定の特別教育に当たらない作業でも、石綿含有廃棄物を扱う作業員に教育を行う根拠はここにあります。

もう一点、廃棄物処理法の側にも制約があります。廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第6条第1項第2号ニは、石綿含有産業廃棄物の処分・再生を「環境大臣が定める方法」により行うこととし、破砕・切断については「収集又は運搬のため必要な」もので環境大臣が定める方法によるものを除いています。石綿含有廃棄物は、そもそも中間処理で自由に破砕してよい廃棄物ではありません。

解体・改修工事の側で必要になる石綿特別教育の外国語実施については、次の記事でまとめています。

粉じんは「どこまで」特別教育の対象か

粉じん側にも同じ構造の誤解があります。「粉じんが出る作業だから特別教育」ではありません。

労働安全衛生規則第36条第29号の条文はこうです。

「粉じん障害防止規則(昭和五十四年労働省令第十八号。以下「粉じん則」という。)第二条第一項第三号の特定粉じん作業(設備による注水又は注油をしながら行う粉じん則第三条各号に掲げる作業に該当するものを除く。)に係る業務」(労働安全衛生規則第36条第29号)

対象は「粉じん作業」ではなく「特定粉じん作業」です。粉じん則第2条第1項は、特定粉じん作業を「粉じん作業のうち、その粉じん発生源が特定粉じん発生源であるもの」と定義しています。

  • 別表第1 = 粉じん作業(どんな作業か)
  • 別表第2 = 特定粉じん発生源(どこから粉じんが出るか)

この両方に当たったときだけが特定粉じん作業で、粉じん則第22条の特別教育(学科4時間30分・5科目)の義務が生じます。

廃棄物処理の破砕・選別工程に当てはめると、こうなります。

  • 別表第1第8号は「鉱物等、炭素原料又はアルミニウムはくを動力により破砕し、粉砕し、又はふるい分ける場所における作業」。「鉱物等」とは土石・岩石・鉱物のことです(粉じん則第3条第1号)
  • 別表第2第8号はそのうち「屋内の、鉱物等、炭素原料又はアルミニウムはくを動力(手持式動力工具によるものを除く。)により破砕し、粉砕し、又はふるい分ける箇所」

したがって、コンクリートがらや石膏ボードのような鉱物質の廃棄物を屋内で定置式の動力機械により破砕・粉砕・ふるい分けする工程は特定粉じん作業に当たり、特別教育が必要です。一方、同じ破砕でも屋外で行う場合や、手持式動力工具で行う場合は、粉じん作業ではあっても特定粉じん作業ではなく、特別教育の法定義務は生じません。廃プラスチックの破砕はそもそも「鉱物等」に当たらないため、別表第1第8号の粉じん作業にも該当しません。

条文の括弧書きにある除外も見落としがちです。設備による注水又は注油をしながら行う粉じん則第3条各号の作業は、特別教育の対象から外れます。同条には「鉱物等又は炭素原料を動力によりふるい分ける場所における作業」も挙がっているため、湿式に切り替えた選別ラインはこの除外に当たる可能性があります。

特別教育の対象外でも、粉じん作業であれば別の義務は残ります。特定粉じん作業以外の粉じん作業を行う屋内作業場の全体換気(粉じん則第5条)、作業場である旨・疾病・保護具の掲示(同第23条の2)、屋内作業場所の毎日1回以上の清掃(同第24条)、じん肺法上の粉じん作業に当たる場合のじん肺健康診断などです。「特別教育の対象外だから何もしなくてよい」ではありません。

粉じん特別教育そのものの科目構成と外国語での実施手順は、次の記事でまとめています。

廃棄物処理法と労安法:2つの法体系を整理する

廃棄物処理業の現場には、**廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)労働安全衛生法(労安法)**という、性格の違う二つの法体系がかかります。

廃棄物処理法が定めるのは、主に「廃棄物をどう扱うか」(処理基準)と「誰に管理させるか」です。事業場ごとに置く特別管理産業廃棄物管理責任者(法第12条の2第8項)、産業廃棄物処理施設に置く技術管理者(法第21条)がその代表例で、いずれも有資格者を配置する義務です。一方、全従業員への安全教育を一般的に義務づける規定は、廃棄物処理法にも同法施行令・施行規則にも置かれていません。

労働者の安全衛生教育を義務づけているのは労安法の側です。雇入れ時の安全衛生教育(第59条第1項)、作業内容変更時の教育(同第2項)、危険有害業務に就かせる前の特別教育(同第3項)が中核で、これに加えて現に危険有害業務に就いている者への教育が第60条の2で努力義務とされています。

罰則の重さも違います。特別教育(第59条第3項)の違反は第119条第1号が適用され、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。これに対して雇入れ時の安全衛生教育(第59条第1項)の違反は第120条第1号で、50万円以下の罰金のみとなります。両方の違反が重なれば責任は累積します。

「廃棄物処理法の講習を受けたから労安法の教育は不要」という誤解が現場で生まれることがあります。目的も名宛人も別の制度であり、どちらも履行が必要です。

外国人労働者が「見えないリスク」に直面する理由

GHSラベル(化学品の危険性を絵表示と文字で示す国際標準ラベル)が読めない、あるいは日本語の注意書きを理解できないまま廃棄物を扱う外国人労働者は、「自分が今何に触れているか」を把握できないことがあります。

廃棄物袋に「特管」「感染性」と書かれていても、日本語が読めなければ素手で開封してしまいます。廃材のラベルに「石綿含有」と書かれていても、意味が分からなければ保護具なしに作業します。こうした情報格差によるリスクは、廃棄物処理業での外国人労働者の事故の根底にある構造的な問題です。

化学物質の危険性を多言語で伝える方法については、別の記事で詳しくまとめています。

多言語安全教育の実務ポイント

廃棄物処理業の安全教育を外国人労働者に実施するうえで、特に重要な点を三つ挙げます。

専門用語の多言語表記を整備する

「特別管理産業廃棄物」「感染性廃棄物」「石綿含有廃棄物」は廃棄物処理業固有の用語です。ベトナム語・中国語・インドネシア語など、採用している外国人の母語に合わせた用語集を作成し、OJTで繰り返し確認することが効果的です。

映像・図解で作業手順を伝える

分別ルール・廃棄物の種類識別・保護具の着用方法は、テキストより映像で見せる方が理解が速く定着します。石綿や医療廃棄物のような「目で見えないリスク」は特に、図解や映像なしには伝わりにくい内容です。

記録の保存年限を取り違えない

特別教育の受講記録は、受講者・科目等を記録して3年間保存します(安衛則第38条)。一方、石綿等を取り扱う作業の記録は石綿則第35条により、その作業に従事しなくなった日から40年間保存——桁がまるで違います。教育記録とばく露記録を同じ場所にまとめて3年で処分してしまう事故が起きやすい部分なので、保存年限ごとに分けて管理してください。外国人労働者が在留期間の満了で退職しても、保存義務は消えません。

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Labonaの活用

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まとめ

廃棄物処理業の外国人労働者安全教育では、①廃プラ・圧縮機の挟まれリスク、②医療廃棄物の感染リスク、③石綿・粉じんのばく露という三つの複合リスクに対応する必要があります。ただし特別教育の義務は「危なそうだから」で決まるものではありません。石綿の特別教育(安衛則第36条第37号・石綿則第27条)は建築物・工作物・船舶の解体等作業が対象で、処理施設内の選別・移動はその射程外です。粉じんの特別教育(安衛則第36条第29号・粉じん則第22条)も、別表第1と別表第2の両方に当たる特定粉じん作業だけが対象になります。射程外の作業でも、石綿作業主任者の選任・石綿健康診断・粉じん則の管理措置は残りますし、労安法第60条の2は現に危険有害業務に就く者への教育を努力義務としています。まず条文どおりに線を引き、そのうえで「見えないリスク」を多言語で正確に伝える体制を整えることが、事故防止の第一歩です。

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よくある質問

Q. 廃棄物処理業で石綿の特別教育が必要な業務はどこまでですか?

安衛則第36条第37号・石綿則第27条の特別教育の対象は、石綿則第4条第1項の「石綿使用建築物等解体等作業」——石綿等が使用されている建築物・工作物・船舶の解体・改修等の作業に係る業務です。自社の作業員が解体現場に出てこれらに従事するなら対象ですが、処理施設に搬入された石綿含有廃棄物を構内で選別・移動する作業は、この特別教育の対象ではありません。ただし「石綿等を取り扱う作業」として、石綿作業主任者の選任(石綿則第19条)・呼吸用保護具(同第14条・第44条)・作業の記録(同第35条)・石綿健康診断(同第40条)などの義務はかかります。個別の判断に迷う場合は、作業内容と廃棄物の性状を整理したうえで所轄の労働基準監督署に確認してください。

Q. 外国語のみで石綿・粉じん特別教育を実施しても法令上有効ですか?

労働安全衛生法の特別教育に関して、「日本語で行わなければならない」という条文はありません。外国人労働者が理解できる言語で実施し、法定科目・時間数を満たしていれば有効です。ただし、受講記録は日本語で作成・保管することが実務上推奨されます。

Q. 石綿・粉じん特別教育の受講記録はどのくらい保存する必要がありますか?

労働安全衛生規則第38条により、特別教育の記録は3年間保存が義務です。条文は「当該特別教育の受講者、科目等の記録」と定めており、実務では受講者名・実施年月日・科目・講師を記録します。なお、この規定は特別教育に限られ、雇入れ時教育(労安法第59条第1項)の記録保存については明示的な規定がないため、任意ですが、紛争時の証拠として保存を推奨します。

Q. 廃棄物処理法の社内研修をしていれば労安法の教育は不要ですか?

いいえ、不要にはなりません。廃棄物処理法が定めているのは処理基準と、特別管理産業廃棄物管理責任者(法第12条の2第8項)・技術管理者(法第21条)といった有資格者の配置であり、全従業員への安全教育を一般的に義務づける規定は同法・施行令・施行規則にありません。労働者の安全衛生教育は労安法第59条(雇入れ時教育・作業内容変更時教育・特別教育)の側の義務です。適正処理を目的とした社内研修を行っていても、労安法上の教育は別に実施・記録する必要があります。

Q. 外国人労働者の雇入れ時教育と特別教育は同時に行えますか?

時間が重複しない形であれば、同じ日に連続して実施することは可能です。ただし、雇入れ時教育(労安法第59条第1項)と特別教育(同第59条第3項)は根拠条文も対象者要件も異なるため、教育記録は別々に作成する必要があります。「まとめてやった」では記録上の区別がつかず、監督署の確認時に問題になることがあります。

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