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法令・コンプライアンス·11 分で読了

建設業の安全衛生教育|新規入場時・雇入れ時・特別教育の二重三重構造を整理

建設業では、雇入れ時安全衛生教育(労安法第59条)と新規入場時等教育(安衛則第642条の3)という2つの義務が別々に課されます。元請・協力会社・一人親方の責任分担から、急増する外国人作業員への多言語対応まで、現場で迷わないための実務ポイントを解説します。

建設業の安全衛生教育|新規入場時・雇入れ時・特別教育の二重三重構造を整理

建設現場に新しい作業員が来るたびに、「どの教育を誰がやるのか」で迷うことはありませんか。建設業には他の業種と違い、安全衛生教育の義務が二重、場合によっては三重に重なる構造があります。元請が何をすべきで、協力会社は何をすべきか。一人親方はどう扱うのか。法令の根拠を軸に、それぞれの責任範囲と外国人作業員への対応まで、現場で使える形で整理します。

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建設業の安全衛生教育に「二重」の義務がある理由

他の業種では「雇った時に一度教育すれば足りる」ことが多いのですが、建設業はそうはいきません。

建設現場には元請がいて、複数の協力会社が入り、さらに一人親方が混在するという独特の構造があります。労働安全衛生法はこの複雑な現場構造を前提に、2種類の別々の義務を定めています。

第1の義務:雇入れ時安全衛生教育(労働安全衛生法第59条第1項:その労働者を雇った事業者が実施する基本教育)

雇用したタイミングで、その会社が自社の労働者に対して実施する教育です。内容は業種・職種に関係なく、共通の8項目が法律で定められています。

第2の義務:新規入場時等教育(労働安全衛生規則第642条の3:建設現場固有のリスクを伝える現場教育)

建設現場に「新たに入場する作業員」に対して、その現場固有のリスクを伝えるための教育です。支援する義務は元請(特定元方事業者)にあります。

ここがポイントなのですが、この2つは全く別の法律上の義務です。どちらか一方を実施しても、もう一方を省略することはできません。

雇入れ時安全衛生教育(労安法第59条):全事業者の義務

雇入れ時教育は、建設業に限らずすべての業種に課される義務です。建設業だからといって特別扱いはありません。

労働安全衛生規則第35条では、教育内容として次の8項目が定められています。

  1. 機械等・原材料等の危険性・有害性およびその取扱い方法
  2. 安全装置・有害物抑制装置・保護具の性能と取扱い方法
  3. 作業手順
  4. 作業開始時の点検
  5. 業務に関連して発生するおそれのある疾病の原因と予防
  6. 整理・整頓・清潔の保持
  7. 事故時の応急措置および退避
  8. 当該業務に関する安全衛生のために必要なその他の事項

令和6年(2024年)4月の改正で、業種による一部除外が廃止されました。それまでは非工業的業種(事務職・販売職など)は5〜8番目の項目を省略できる規定がありましたが、現在はすべての業種・すべての労働者が対象です。

雇入れ時教育の実施義務者は「その労働者を雇用した事業者」です。元請が協力会社の社員に代わって実施しても、協力会社の法令上の義務を果たしたことにはなりません。

教育時間に法定の最低時間はありません。8項目を網羅するには、実際には1〜2時間かかります。教育記録は3年保管が実務上の標準です。監督署調査や元請監査に備えて、きちんと手元に残しておきましょう。

詳しい教育内容と記録フォーマットは、雇入れ時安全衛生教育 完全ガイドもご参照ください。

新規入場時等教育(安衛則第642条の3):建設業特有の義務

実はこれ、建設業で最も見落とされやすい義務の一つです。

労働安全衛生規則第642条の3では、**建設業の特定元方事業者(元請)**に対し、「新たに現場に入ってくる作業員に対して現場固有の情報を周知するための支援措置を講じなければならない」と規定しています。元請が行うべき支援の例は次のとおりです。

  • 当該現場の危険箇所・作業条件に関する情報の提供
  • 教育を実施するための場所の提供
  • 教育に使用する資料の提供

現場では「KY(危険予知)ミーティング」「入場者教育」「新規入場者安全衛生教育」などと呼ばれる活動がこれにあたります。現場ごとに地形・使用機械・作業動線・他社との干渉リスクが異なるため、雇入れ時教育では伝えられないその現場固有のリスクを補う位置づけです。

実施時間は30分〜1時間程度。元請の安全担当者が説明するのが一般的ですが、協力会社の安全担当が自社の作業員に説明するケースもあります。

「うちの作業員は雇入れ時教育を受けている」という理由で新規入場時教育を省略する協力会社がいますが、これは法令違反になる可能性があります。現場が変わるたびに、その現場のリスクを伝える教育が必要です。

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元請(特定元方事業者)が担う統括責任

建設現場の安全衛生について最終的な統括責任を持つのは元請です。

労働安全衛生法第30条(特定元方事業者の講ずべき措置)では、元請に対して次の措置を義務付けています。

  1. 協議組織の設置・運営
  2. 作業間の連絡調整
  3. 作業場所の定期的な巡視
  4. 関係請負人が行う安全衛生教育への指導・援助
  5. 工程計画・機械設備の配置計画の策定

4番目の「指導・援助」が教育に関する元請の核心的な義務です。「教育をやれ」と指示するだけでなく、教育を実施できる環境(場所・資料・情報)を整える義務がある点が重要です。

なお、建設現場での常時作業者数が50人以上(ずい道等の特定作業は30人以上)になる場合は、統括安全衛生責任者の選任も義務になります。

協力会社・下請けが担う実施責任

協力会社には「自社の労働者への教育を自分たちで実施する」義務があります。

実施責任の分担を整理するとこうなります。

  • 雇入れ時安全衛生教育:協力会社が自社の労働者に対して実施
  • 新規入場時等教育:元請が提供する場所・資料を使って、協力会社が自社の作業員に実施(元請が一体的に実施するケースも)

率直に申し上げると、「元請がやってくれるだろう」と受け身になりがちなのが現場の実態です。しかし雇入れ時教育の義務は協力会社自身にあります。元請が代わりに実施しても、法令上の義務を果たしたことにはなりません。

また、現場が変わるたびに新規入場時等教育が必要になることも見落とされやすいポイントです。先月別の現場で受けた教育があっても、新しい現場では改めて実施が必要です。

安全配慮義務違反の罰則リスクは、安全衛生教育の事業者責任で詳しくまとめています。

外国人作業員への追加対応

現場の方ならご存知のとおり、建設業の外国人労働者は急増しています。

厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況(令和6年10月末)」によると、建設業の外国人労働者は2024年10月時点で前年比22.7%増。国籍別ではベトナム・インドネシアが上位を占めています。

外国人作業員への教育で問題になるのが言語の壁です。日本語だけの教材で実施した場合、「教育した」記録は残っても、内容が理解されていなければ労働災害の防止にはつながりません。

2024年7月の大阪地方裁判所の判決では、外国人労働者に日本語のみで安全衛生教育を行ったケースで、「内容が伝わっていなかった」として事業者の安全配慮義務違反(労働契約法第5条:雇い主が従業員の安全に配慮しなければならないという義務)が認定されました。

「教育した記録がある」と「教育が伝わった」は別物です。外国人作業員への教育は、本人が理解できる言語で実施することが、安全配慮義務の観点から求められます。

建設業では現状ベトナム語・インドネシア語への対応が特に急務です。多言語対応の実務については、建設業の外国人労働者 安全教育の進め方もあわせてご参照ください。

一人親方・請負作業員の取扱い

一人親方は「労働者ではない」ため、雇入れ時教育の対象外です。

ここで一度整理してみると、雇入れ時教育の義務は「会社と労働者の雇用関係」があることが前提です。一人親方は自らが事業者であり、雇用関係を持たないため、原則として他社から「雇入れ時教育を受ける立場」にはありません。

ただし新規入場時等教育については扱いが異なります。安衛則第642条の3の「新たに作業に従事することとなった者」には一人親方も含まれると解釈されており、元請は一人親方に対しても現場固有の情報を周知する支援を行う必要があります。

実務上は、元請が一人親方に「この現場では入場前に安全教育を受けてください」という形で実施するケースが多いです。「新規入場者教育受講記録」への署名をもらっておくことが推奨されます。一人親方との取引条件として受講を求める元請も増えています。

記録の保管と共有の仕組み

複数の会社が入り乱れる建設現場では、「誰がどの教育をいつ受けたか」の記録管理が複雑になります。

特別教育については労働安全衛生規則第38条で3年間の記録保管が義務付けられています。雇入れ時教育・新規入場時等教育については法令上の明示規定はありません。とはいえ、監督署調査や元請監査への対応、労働災害発生時の責任立証のために、同じく3年保管が実務上の標準です。

記録の共有方法は主に2通りあります。協力会社が実施した教育記録のコピーを元請に提出する方法と、デジタルツール(GreenFile.workやKY-CALLなど)で一元管理する方法です。紙の記録は退職者分の管理が難しく、監督署調査時に即座に提示しにくいという課題があります。電子化することで、過去3年分をいつでも引き出せる体制が整えやすくなります。

記録管理の詳細は、安全衛生教育の記録保管もご参照ください。

Labonaで解決できること

建設業の安全衛生教育は、「実施の質」と「記録の管理」の両面で困っている企業が多いです。

Labonaは外国人労働者向けの多言語eラーニングプラットフォームです。雇入れ時教育を動画・クイズ形式で日本語・英語・ベトナム語・中国語・インドネシア語の5言語に対応しています。受講記録はクラウドで3年以上管理でき、元請への記録提出もCSV出力で即対応できます。

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まとめ

建設業の安全衛生教育は二重構造です。雇入れ時安全衛生教育(労安法第59条)は協力会社が自社の労働者に実施し、新規入場時等教育(安衛則第642条の3)は元請が支援して現場ごとに行います。一人親方は雇入れ時教育の対象外ですが、新規入場時等教育の対象には含まれます。外国人作業員については日本語のみの教育では安全配慮義務を満たせないリスクがあるため、多言語対応が急務です。教育記録は3年保管を基準に、元請への共有体制を整えておきましょう。

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よくある質問

Q. 雇入れ時教育と新規入場時教育、どちらを先に実施すべきですか?

雇入れ時教育が先です。雇入れ時教育は「その会社に雇われた時点」で行う一般的な安全教育、新規入場時等教育は「その現場に初めて入る前」に行う現場固有の教育です。「採用 → 雇入れ時教育 → 現場配属 → 新規入場時等教育」という流れになります。

Q. 協力会社の雇入れ時教育を元請が代わりに実施してもよいですか?

法令上、義務の主体は「その労働者を雇用した事業者(協力会社)」です。元請が代わりに実施しても、協力会社の法令上の義務履行にはなりません。ただし、元請の施設・教材を使いながら協力会社の担当者が教育するという形は問題ありません。

Q. 外国人作業員への教育は日本語でなくてもよいですか?

法令に「日本語で実施する」という規定はありません。安全配慮義務の観点から、「本人が理解できる言語」での実施が求められます。日本語のみで実施した場合、労働災害が発生した際に「内容が伝わっていなかった」と判断されると、損害賠償責任を問われるリスクがあります。

Q. 一人親方への新規入場時教育の記録は元請が保管すべきですか?

法令上の明示的な義務はありませんが、元請として現場管理責任を問われた場合に備え、受講記録を保管しておくことを推奨します。一人親方本人にも控えを渡しておくと、他の現場や取引先への提示に役立ちます。

Q. 特別教育(フルハーネスや足場の組立て等)は別で実施が必要ですか?

はい、別途必要です。雇入れ時教育・新規入場時等教育とは独立した義務で、特定の危険業務に従事させる前に実施しなければなりません。建設業でよく必要になる足場の組立て等特別教育については、足場の組立て等特別教育の多言語対応でも解説しています。

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