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法令・コンプライアンス更新 2026.05.13·12 分で読了

派遣・出向先での雇入れ時教育|実施責任は派遣元か派遣先か

派遣労働者・出向者を受け入れる際、雇入れ時の安全衛生教育は派遣元と派遣先のどちらが実施するのか。労働安全衛生法第59条と派遣法の関係を整理し、責任分担・記録保管・外国人派遣の追加配慮までを派遣会社と派遣先企業の双方向けに解説します。

派遣・出向先での雇入れ時教育|実施責任は派遣元か派遣先か

「派遣会社から人が来るが、安全教育はうちでやるのか、派遣元がやるのか分からない」。派遣先の総務担当者から、この相談を受ける機会が増えています。逆に派遣元(派遣会社)側でも「現場のことが分からないのに、雇入れ時教育を全部やれと言われても困る」という声が出ます。本記事では、派遣労働者・出向者を受け入れる際の雇入れ時教育について、派遣元と派遣先の責任分担を労働安全衛生法と派遣法の両面から整理します。

雇入れ時教育の実施義務の原則

ここではまず、派遣・出向の話に入る前に、雇入れ時教育そのものの原則を確認します。

労働安全衛生法第59条第1項は、「事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、安全又は衛生のための教育を行わなければならない」と定めています。条文上の主語は「事業者」であり、雇用契約を結んでいる側が一次責任を負うのが原則です。

教育項目は労働安全衛生規則第35条で8項目(機械等の取扱い、原材料の取扱い、作業手順、整理整頓、事故時の応急措置、その他業務に必要な事項など)が列挙されています。これらは業務内容や事業場の状況によって省略可能な項目もありますが、安易に省略するのは推奨されません。

「雇い入れたとき」とは

雇用契約締結時から作業開始までの間を指します。実務的には初日のオリエンテーションに組み込む例が多く、教育を完了する前に危険有害業務に就かせると同条違反となります。

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派遣労働者の場合:派遣元と派遣先の責任分担

ここから本題に入ります。派遣労働者の雇用契約は「派遣会社(派遣元)」と結ばれているため、原則は派遣元に雇入れ時教育の義務が課されます。ただし派遣先にも独自の義務があるため、責任は完全には移転しません。

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「派遣法」)第45条は、労働安全衛生法の適用について「派遣元事業主」と「派遣先事業主」の双方を事業者とみなす特則を定めています。簡単に言えば、安全衛生に関する法令義務は「片方だけに寄せず、両方に分担させる」構造です。

雇入れ時教育(労安法第59条第1項)の実施義務は、派遣法第45条の特則により派遣元事業主に課されます。ただし、派遣先で実際に従事する作業に固有のリスクについては、派遣先が職場固有の安全衛生教育を実施する必要があり、これは実務的には派遣先の責任で行います。

派遣労働者の安全衛生教育 派遣元と派遣先の責任分担

派遣元と派遣先で「教育内容が重複するのではないか」という疑問もよく出ます。重複しても構いません。むしろ、派遣元での一般的な安全衛生基礎と、派遣先での現場固有のリスク教育は、視点が違うため両方必要です。派遣元の教育は「業界共通の安全意識・作業手順の基礎」、派遣先の教育は「この現場で本当に注意すべき具体的危険」と役割を分けるのが実務的に機能します。

出向(在籍出向・転籍出向)の場合

派遣と混同されやすい「出向」についても整理します。出向は派遣とは法的位置づけが異なるため、責任の所在も変わります。

在籍出向(出向元と雇用関係を継続したまま、出向先でも雇用関係を持つ二重雇用)の場合、雇入れ時教育の実施義務は出向先にあるとされるのが行政解釈の主流です。出向先で実際に労務指揮を受け、作業に従事するため、その作業に関する安全衛生教育は出向先が責任を持つのが合理的だからです。

転籍出向(出向元との雇用関係を終了し、出向先と新たな雇用関係を結ぶ完全な転籍)の場合は、出向先での新規雇用と同じ扱いになります。雇入れ時教育は出向先が全項目について実施する義務を負います。

「グループ会社内だから簡略化」は危険

グループ会社間の出向で「同じ会社グループだから雇入れ時教育は省略」と判断する例がありますが、労働安全衛生法上の事業者は法人単位で判断されます。法人格が変われば、たとえ業務内容が同じでも改めて雇入れ時教育の実施対象になります。

派遣先で必須となる「危険有害業務の教育」

派遣先には、雇入れ時教育とは別に押さえるべき教育義務があります。ここは見落とされやすいので重点的に説明します。

労働安全衛生法第59条第3項は、「危険又は有害な業務に労働者をつかせるときは、特別の教育を行わなければならない」と定めています。いわゆる特別教育で、対象業務は労働安全衛生規則第36条に列記されています(フォークリフトの運転、アーク溶接、研削といしの取替、玉掛け補助、フルハーネス型墜落制止用器具の使用など、約60業務)。

特別教育の実施責任は、実際にその業務に従事させる事業者にあります。派遣の場合、危険有害業務に従事させるのは派遣先なので、特別教育は派遣先が実施するのが原則です。派遣元で雇入れ時教育の一環として特別教育を済ませている場合は、修了証で確認した上で派遣先での重複実施を省略できますが、業務内容が派遣元時点と異なるなら派遣先で改めて実施が必要です。

派遣元と派遣先のどちらが特別教育を実施したか、修了証を誰が発行したかの記録は、後の労災認定で必ず参照されるため、契約書・派遣個別契約に明記しておくべきです。

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外国人派遣労働者での追加配慮

外国人を派遣する場合、派遣元と派遣先の双方に追加の配慮が要ります。

派遣元側の配慮として、雇入れ時教育を母国語または本人が理解できる言語で実施する必要があります。日本語で形式的に実施しただけでは、「実質的に教育が成立していない」と判断されるリスクがあります。とくに派遣業界では複数の現場を渡り歩く労働者が多く、派遣元での一般教育を多言語で標準化しておくと、派遣先ごとの追加教育負担が軽くなります。

派遣先側の配慮として、職場固有の教育を行う際の言語対応があります。派遣元が母国語で基礎教育を済ませていても、派遣先での現場説明が日本語のみだと、現場固有のリスクが伝わりません。派遣先に通訳がいない場合、派遣元と協議して教育資料・動画の多言語版を共有してもらう運用が現実的です。

労働者派遣契約書(個別契約)には、外国人を派遣する場合の使用言語・通訳の有無・教育資料の提供責任を明記しておくと、後のトラブルを防げます。

教育記録の保管責任

派遣・出向の場合、教育記録の保管責任も整理しておくべきポイントです。

派遣・出向の安全衛生教育のステップ

雇入れ時教育の記録保管は、労働安全衛生規則第38条が直接定めているのは特別教育の記録(3年保管)ですが、雇入れ時教育についても行政指導・労災対応の慣行から3年保管が実務基準です。派遣の場合、実施した側が記録を保管するのが原則。派遣元で実施した一般教育の記録は派遣元、派遣先で実施した職場固有教育・特別教育の記録は派遣先、と分担します。

ただし派遣労働者の労災発生時は、派遣元と派遣先の両方の記録が監督署から求められます。派遣個別契約書に「教育記録は両者で共有し、相互に提供する」旨を明記し、退職・契約終了後も3年間(できれば5年間)相互に保管継続することを取り決めておくのが実務的です。

⚠️ 派遣終了時の記録引き継ぎ漏れ

派遣契約が終了した後、派遣先が「もう関係ない」と判断して記録を破棄した結果、数年後の労災認定で立証ができなくなった例があります。派遣終了時の記録引き継ぎは、業務終了の3ヶ月以内に整理しておくのが安全です。

トラブルになった実例

ここで派遣・出向の安全衛生教育で実際に起きたトラブルを3例紹介します。読み手の自社状況と照らし合わせてください。

第一に「派遣元が一般教育を省略していた」例。製造業の派遣先で派遣労働者が機械に挟まれる労災が発生した際、派遣元の雇入れ時教育記録を確認したところ、雇用契約日翌日に派遣先に送り込み、雇入れ時教育は派遣先に丸投げしていました。労働基準監督署は派遣元の労安法第59条第1項違反を指摘し、派遣元事業主が書類送検されました。

第二に「派遣先が特別教育の修了を確認せずに業務に就かせた」例。物流現場でフォークリフト運転の派遣労働者が事故を起こし、調査の結果、派遣元時点でフォークリフトの特別教育を受けていないにもかかわらず、派遣先が修了証の確認をせずに乗務させていたことが判明。派遣先事業主が労安法第59条第3項違反で指導を受けました。

第三に「外国人派遣労働者の理解不足」例。建設現場で外国人派遣労働者が高所作業中に墜落しかけ、安全帯(フルハーネス)の使用方法を理解していなかったことが発覚。派遣元のフルハーネス特別教育は日本語のみで実施されており、本人が「理解した」と署名していたものの、実際には専門用語が分からなかった状態でした。派遣元の教育内容の実質性が問われています。

Labonaの対応範囲

ここで Labona の対応範囲を、派遣・出向のユースケースに即して整理します。読み手の選択肢の一つとして提示するため、できることだけを正直に書きます。

Labona は派遣元・派遣先・出向先のいずれの立場でも利用できる構成です。派遣元が一般的な雇入れ時教育(労安規則第35条の8項目)を多言語で実施するための eラーニング教材、派遣先が職場固有の追加教育・特別教育(フォークリフト・フルハーネスなど)を実施するための教材を、それぞれ別アカウントで管理できます。受講ログは管理画面から CSV エクスポート可能で、派遣個別契約に基づく相互共有にも対応します。

多言語対応については、日本語版を順次公開、英語・ベトナム語・中国語・インドネシア語の4言語は順次拡充中です。外国人派遣労働者の教育で「日本語で署名はもらったが本当に理解しているか不安」という現場の声に対しては、母国語での受講と理解度テストの組み合わせで対応します。

派遣業界に特化した運用としては、複数現場を渡り歩く労働者の教育履歴を一元管理する機能を提供しており、派遣元が一度実施した一般教育を派遣先で重複実施せずに済むよう、修了証データの共有も可能です。

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まとめ

派遣・出向先での雇入れ時教育について、押さえるべきポイントを再掲します。

雇入れ時教育の実施義務は派遣の場合派遣元、転籍出向は出向先、在籍出向は出向先が原則。派遣先には危険有害業務の特別教育義務があり、これは派遣先の責任で実施。教育記録は実施した側が3年保管し、派遣個別契約で相互共有を取り決めるのが実務的。外国人派遣労働者には派遣元での母国語による一般教育と、派遣先での現場固有教育の両方で言語対応が必要。

形式的な責任分担ではなく、「労災が起きたときに記録で何を立証できるか」を逆算して、派遣元と派遣先の双方で記録を残す運用が安全です。

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よくある質問

Q1. 派遣元での雇入れ時教育を派遣先で代行してもらうことは可能ですか?

派遣元の責任は派遣法第45条で派遣元事業主に課されているため、派遣先に業務委託する形にしても、最終的な実施責任は派遣元に残ります。派遣先が実施した教育記録を派遣元にも提供してもらい、派遣元の教育記録として保管する運用は可能ですが、内容が労安規則第35条の8項目を満たしているかの確認は派遣元の責任です。

Q2. 派遣期間が1週間程度の短期でも雇入れ時教育は必要ですか?

必要です。労働安全衛生法第59条第1項は雇用期間の長短を問わず適用されます。短期派遣の場合、教育時間を法令ミニマムに圧縮する運用は可能ですが、危険有害業務に就かせる場合は特別教育の省略はできません。短期派遣を多用する業態では、派遣元側で多言語eラーニングを常設しておくと運用が回りやすくなります。

Q3. 同じ派遣元から同じ派遣先に再度派遣される場合、雇入れ時教育を再実施する必要はありますか?

派遣元との雇用関係が継続している場合(前回の派遣終了後も雇用関係が続いている)、雇入れ時教育の再実施は不要です。ただし業務内容が変わる場合は「作業内容変更時の教育」(労安法第59条第2項)の対象になります。派遣元との雇用関係が一度途切れて再契約する場合は、新規雇用扱いとなり改めて雇入れ時教育が必要です。

Q4. 在籍出向で給与は出向元が支払う場合、雇入れ時教育の実施責任はどちらですか?

給与支払の所在と安全衛生教育の実施責任は別の論点です。在籍出向の場合、実際に労務指揮を受け作業に従事する出向先に教育実施義務があるとするのが行政解釈の主流。出向契約書に教育の実施責任を明記し、出向元と出向先で重複しないよう調整するのが実務的です。

参考一次資料

  • 労働安全衛生法 第59条(安全衛生教育)— e-Gov 法令検索で「労働安全衛生法」を検索
  • 労働安全衛生規則 第35条(雇入れ時等の教育)・第36条(特別教育を必要とする業務)・第38条(特別教育の記録保存)— e-Gov 法令検索で「労働安全衛生規則」を検索
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(派遣法)第45条 — e-Gov 法令検索で「労働者派遣事業」を検索
  • 厚生労働省「派遣労働者の安全衛生確保のために」関連通達 — 厚生労働省ホームページ内で「派遣労働者 安全衛生」を検索

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