LabonaLabona
法令・コンプライアンス·約 16 分で読了

巻上げ機(ウインチ)特別教育の外国語実施【2026年版】|安衛則36条11号

安衛則第36条第11号に基づく動力駆動の巻上げ機(ウインチ)運転特別教育を外国人に外国語で実施する方法を解説。法令根拠・学科6時間以上+実技4時間以上・電気ホイストとの違い・5言語対応教材の選び方まで。

巻上げ機(ウインチ)特別教育の外国語実施【2026年版】|安衛則36条11号

建設現場や倉庫で資材を巻き上げるウインチ——ロープを巻き取り荷を上げる動力駆動の装置は、現場に当然のようにある設備ですが、外国人スタッフが増えた今、「特別教育を受けさせてきたが、本当に内容を理解しているか自信がない」という担当者の声をよく聞きます。法令の根拠・カリキュラムの中身・「本人が理解できる言語で」実施するための具体策をまとめました。

→ Labona の安全教育 eラーニングを資料請求する

巻上げ機(ウインチ)特別教育の法令根拠と対象業務

労働安全衛生規則(安衛則)第36条第11号は、次の業務を特別教育の対象と定めています。

動力により駆動される巻上げ機(電気ホイスト、エヤーホイスト及びこれら以外の巻上げ機でゴンドラに係るものを除く。)の運転の業務

「動力駆動の巻上げ機」とは、電動モーターやエンジンなどの動力でロープや鎖を巻き取り、荷を上下させる装置の総称です。建設現場では資材揚重用のウインチ、設備工事では電線や配管の引き込み用ウインチ、倉庫では棚上げ用の巻上げ機がこれに該当します。

法的な義務の根拠はこちらです。

労働安全衛生法第59条第3項:「事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。」

未実施の場合の罰則は、労働安全衛生法第119条第1号により「6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」です。外国人労働者であっても適用は同じです。修了後は受講者名・受講科目・教育日時を記録し、3年間保管する義務があります(安衛則第38条)。

「電気ホイスト・エヤーホイスト・ゴンドラ用を除く」の意味

法文に「電気ホイスト、エヤーホイスト及びこれら以外の巻上げ機でゴンドラに係るものを除く」とある点は、現場でよく混乱を生みます。

なぜ電気ホイストとエヤーホイストは除外されているのか?

これらがクレーンに当たる場合は、クレーン等安全規則(クレーン則)の体系で扱われます。クレーン則はつり上げ荷重0.5トン以上のクレーンに適用され(クレーン則第2条第1号で0.5トン未満を適用除外)、つり上げ荷重5トン未満のクレーンの運転にはクレーン則第21条の特別教育が義務付けられています。5トン以上は就業制限業務で、クレーン・デリック運転士免許が必要です(クレーン則第22条)。除外の趣旨そのものは法文に明記されていないため、個々の設備は仕様とクレーン則の適用区分で判断してください。

ゴンドラ用巻上げ機も除外の理由

ゴンドラに係る巻上げ機は、「ゴンドラの操作の業務」として安衛則第36条第20号で別途特別教育が定められています(学科・実技それぞれ独立した規程があります)。建築物の外壁清掃や塗装で使うゴンドラ用の巻上げ機は、第11号ではなく第20号の特別教育が必要です。

第11号が適用される典型ケース

設備の種類 適用判断の目安
建設現場の資材揚重用ウインチ(動力駆動のドラム式) 第11号の特別教育が必要
設備工事の電線引き込み用ウインチ 第11号の特別教育が必要
倉庫の棚上げ用の動力ウインチ(ホイスト型を除く・荷専用) 第11号の特別教育が必要
電気ホイスト(クレーン則の適用範囲内) クレーン則に基づく別途教育
ゴンドラ用の巻上げ機 安衛則第36条第20号の特別教育

なお第11号の対象は「動力により駆動される」巻上げ機です。人力だけで巻き上げる手動ウインチは第11号の対象外ですが、雇入れ時等の教育(安衛則第35条)で取扱いと危険性を教える対象になります。

境界が判断しにくい場合は、装置のメーカー仕様書とクレーン則の適用区分を確認してから、所轄の労働基準監督署に相談してください。

巻き込まれ・逸走事故の実態

巻上げ機(ウインチ)に係る労働災害は、「巻き込まれ・引き込まれ」と「荷・フックの逸走(暴走)」が代表的な事故類型です。

巻き込まれ・引き込まれ

ロープ・ワイヤロープが巻き取られる際に、衣服の袖や軍手・手が接触して引き込まれるケースです。外国人作業者の被災でよく見られるパターンが「巻き取り中に合図の確認のためドラムに近づいた」ところで衣服が接触するというものです。操作者と玉掛け担当者の役割分担と合図の徹底が必要ですが、言語の壁があると合図方法が伝わっていないことが多い。

荷・フックの逸走(暴走)

逆転防止装置(ラチェット機構など)の操作ミスや、ブレーキの解除手順の誤りによって、荷が急落下するケースです。「ブレーキを離してから巻き取る」という操作手順が母語で体で染み込んでいない状態で作業を始めると、緊急時の反応が遅れます。

巻き込まれは、統計上も外国人労働者で最も多い被災類型です。厚生労働省の労働災害統計(令和7年=2025年)では、外国人労働者の休業4日以上の死傷者数は7,124人で、事故の型別では「はさまれ・巻き込まれ」が1,544人(21.7%)と最多、業種別では建設業が1,371人でした。外国人労働者の死傷者数は平成28年の2,211人から約3.2倍に増えています。巻上げ機はクレーンほど目立ちませんが、「誰でも使える」という過信が生まれやすい設備です。

カリキュラムの中身:学科6時間以上+実技4時間以上

安全衛生特別教育規程 第14条が定める教育内容は次のとおりです。

学科(合計6時間以上)

  • 巻上げ機に関する知識(3時間以上)——原動機、ブレーキ、クラッチ、巻胴、逆転防止装置、動力伝達装置、電気装置、信号装置の構造・機能・点検
  • 巻上げ機の運転に必要な一般的事項(2時間以上)——合図方法、荷掛方法、連結方法、点検方法
  • 関係法令(1時間以上)——労働安全衛生法・施行規則等の関連法令

実技(合計4時間以上)

  • 巻上げ機の運転(3時間以上)——荷の巻上げ及び巻卸し
  • 荷掛け及び合図(1時間以上)——手、小旗等を用いて行う合図

時間配分を一覧にすると次のとおりです。

区分 科目 時間
学科 巻上げ機に関する知識(構造・機能・点検) 3時間以上
学科 巻上げ機の運転に必要な一般的事項(合図・荷掛・点検方法) 2時間以上
学科 関係法令 1時間以上
実技 巻上げ機の運転(荷の巻上げ・巻卸し) 3時間以上
実技 荷掛け及び合図(手・小旗による合図) 1時間以上
合計 — 10時間以上

合計10時間——2日程度で修了できる規模です。学科は eラーニングで実施し、実技は実際の巻上げ機を使って現場で行うハイブリッド設計が一般的です。

修了後は修了証を交付し、受講者名・受講科目・教育日時・教育場所を記録して3年間保管してください(安衛則第38条)。

物流・建設業で増える外国人スタッフへの教育の実情

建設業・設備工事・製造業・倉庫業において、巻上げ機を操作する作業員の国籍は多様化しています。ベトナム・中国・インドネシア・フィリピン国籍の方が特に増えており、配属初日から巻上げ機の運転を担わせるケースが現場では珍しくありません。

問題は、日本語の学科テキストだけで特別教育を実施した場合です。

「ブレーキ」「クラッチ」「逆転防止装置」——これらの専門用語は、日常会話レベルの日本語能力(JLPT N3〜N4相当)では正確に理解しにくい語彙です。さらに「合図方法」の習得は言語だけでなく、母語で書かれた合図一覧表を手元に持って繰り返し練習することが重要です。

「わかりました」という返答が、理解の確認にならないのはこの業種でも同じです。

大阪地裁2024年7月31日判決では、日本語能力が不十分な外国人労働者に日本語のみで安全衛生教育を実施した会社が安全配慮義務違反と認定されました。教育の実施記録は存在していたにもかかわらず、「本人が理解できていなかった」点が問題とされています(判例の詳細はこちら)。

→ 体験デモを試す

「本人が理解できる言語で」実施するための3つの選択肢

労働安全衛生法には「日本語で実施すること」という規定はありません。重要なのは、安全配慮義務(労働契約法第5条)の観点から「労働者が内容を理解できる言語で実施する」という要請です。

① 日本語実施+通訳者の同席

学科・実技とも通訳者が逐次訳する形式。理解度は高い反面、毎回の通訳費用と手配コストが課題です。少人数・高付加価値案件には向きますが、常時採用が続く現場では継続しにくい。

② 外国語教材への翻訳(外注)

学科テキストを翻訳ベンダーに依頼する方法。「逆転防止装置」「クラッチ」等の機械専門用語は直訳品質の差が大きいため、完成物の確認が必須です。法改正時の再翻訳コストも考慮してください。

③ 多言語対応 eラーニング教材の活用

最初から5言語(日本語・英語・ベトナム語・中国語・インドネシア語)で設計されたオンライン教材を活用する方法。受講記録・理解度確認テストも含まれるため、安衛則第38条の記録義務を同時に満たせます。

選択肢 特徴 課題
① 日本語実施+通訳者の同席 逐次通訳で理解度は高い 毎回の通訳費用と手配。多人数採用には継続しにくい
② 外国語教材への翻訳(外注) テキストを翻訳ベンダーに依頼 機械専門用語の翻訳品質確認が必須。法改正のたびに再翻訳が必要
③ 多言語対応 eラーニング教材の活用 5言語で設計済み、受講記録・理解度確認テストも含む サービス選定時に法定カリキュラム準拠を要確認

多言語 eラーニングを選ぶ際の最低条件: 法定カリキュラム完全準拠(学科6時間以上・実技4時間以上)・修了テストの外国語対応・3年分の受講ログ出力——この3点を満たさないサービスは選ばないでください。

5言語(日本語・英語・ベトナム語・中国語・インドネシア語)対応教材の選定基準

多言語教材を選ぶ際に確認すべき点を整理します。

法定カリキュラムへの準拠——安衛則第36条第11号に定める業務と、安全衛生特別教育規程 第14条の学科6時間以上・実技4時間以上の要件を完全に網羅しているか。科目ごとの時間数が法定要件を満たしているか。

機械専門用語の正確な翻訳——「逆転防止装置」「クラッチ」「巻胴」「合図方法」などの機械用語が各言語で正確かつ実務的に翻訳されているか。機械翻訳そのままでは専門用語の意味が伝わらないケースが多い。

実技との設計整合——学科は eラーニングで実施し、実技は現場で行うハイブリッド設計の場合、学科で使う用語と現場の実機・合図が一致しているか。「手、小旗等による合図」の方法は、言語別の合図カード等で補強することを推奨します。

理解度確認テストの多言語対応——学科修了後のテストが外国語で実施できるか。合否基準と再教育フローが明確か。

修了記録の発行と保管——受講者名・受講日・言語・合否を記録し、3年間保管できるか。元請監査時に提示できる形式か。

Labona では巻上げ機(ウインチ)運転特別教育の学科を受注制作(法人マイページから購入・日本語版は通常5営業日で受講開始・5言語対応)で対応しています。実技と最終的な修了認定は事業者側で実施いただく前提です → 巻上げ機(ウインチ)運転特別教育(講座ページ)

業種別の典型運用

建設現場の資材揚重

超高層・大型建設現場では、電動ウインチを使ってパイプや鉄筋・型枠材料を揚重するケースが日常的です。特に揚重班の外国人比率が高い現場では、合図担当(玉掛け側)と操作担当(ウインチ側)の双方が同じ言語で合図を理解していることが安全の前提です。

学科を受講前に「この現場ではどの合図を使うか」を多言語で確認し、実技前に現場の合図カードを外国語版で準備しておくと定着率が上がります。

設備工事・電気工事

電線や冷媒管の引き込みで使う小型ウインチは、「大きなクレーンではないから特別教育は不要」と誤解されることがあります。電気ホイスト・エヤーホイスト・ゴンドラ用を除き、動力駆動の巻上げ機であれば第11号の対象です。設備工事に外国人技術者や外国人作業補助者が増えている状況を踏まえ、事前に特別教育の受講確認を採用手続きに組み込むことを推奨します。

倉庫の棚上げ・高所作業

棚上げ用の動力巻上げ機は倉庫業でも広く使われています。ホイスト型は第11号から除かれるため、設備ごとに仕様書で型式を確認してください。テールゲートリフター特別教育(詳細はこちら)と組み合わせて実施するケースも多く、外国人スタッフへの多言語対応を一括して整理するとコスト効率が上がります。

まとめ

安衛則第36条第11号に基づく動力駆動の巻上げ機(ウインチ)運転の特別教育は、電気ホイスト・エヤーホイスト・ゴンドラ用を除く巻上げ機の運転業務に従事させる際に事業者に義務付けられています。法定カリキュラムは学科6時間以上+実技4時間以上の合計10時間以上。修了記録は3年間保管が必要です。

外国人労働者が増える建設・設備・倉庫現場では、日本語のみでの形式的な実施ではなく「本人が理解できる言語で」教育を完結させることが、安全配慮義務の観点からも求められています。合図方法・操作手順の専門用語を各国語で正確に伝えることが、巻き込まれ・逸走事故の防止に直結します。

まず自社の外国人スタッフの国籍構成を確認し、必要な言語に対応した教材を選定するところから始めてください。


よくある質問

Q. 電気チェーンブロックは安衛則第36条第11号の特別教育が必要ですか?

電気チェーンブロックは一般に電気ホイストの一種として扱われるため、第11号では「電気ホイスト等を除く」の対象となるケースが多い。ただし機器の仕様・クレーン則の適用区分によって判断が分かれる場合があります。メーカー仕様書と所轄の労働基準監督署への確認を推奨します。

Q. 以前に玉掛け技能講習を修了した外国人スタッフも、改めて巻上げ機の特別教育を受けさせる必要がありますか?

必要があります。玉掛け技能講習は荷を安全につるための技能を対象としており、巻上げ機の運転業務(安衛則第36条第11号)とは別の教育体系です。玉掛け技能講習の修了証があっても、巻上げ機の特別教育は別途受講が必要です。

Q. 外国語で実施した特別教育でも修了証は発行できますか?

発行できます。修了証に記載すべき事項(受講者名・受講科目・教育日時・教育場所)を満たしていれば、使用言語は問いません。外国語版の修了証を用意している企業もあります。外国語で実施した事実と、使用した言語を記録に残すことを推奨します。

Q. 巻上げ機の特別教育はオンライン(eラーニング)で実施できますか?

学科部分はオンラインで実施可能です。厚生労働省の令和3年(2021年)1月25日付通達(基安安発0125第2号・基安労発0125第1号・基安化発0125第1号)により、特別教育の学科教育はオンライン実施が認められています。実技部分(巻上げ機の運転・荷掛け及び合図)は実際の機器を使って行う必要があります。学科を eラーニングで行い、実技を現場で補うハイブリッド設計が現実的です。

Q. 記録は紙でも問題ありませんか?

法令上は紙の記録でも問題ありません。ただし外国人スタッフが多い現場では退職者の記録散逸が課題になりやすい。元請から監査時に受講記録の提示を求められるケースも増えているため、CSV出力・即時提示できる電子管理の導入を検討する企業が増えています。安全衛生教育の記録保管 完全ガイドも参照してください。


関連ガイド

参考一次資料

Labona の講座

この記事に関連する受講可能な講座

Labonaは5言語で安全衛生教育を提供しています。受講者1名から購入可能、修了証PDFも即発行。

この記事をシェア

Labona について

外国人労働者の安全教育を、5言語で。

ベトナム語・中国語・インドネシア語など5言語対応の安全衛生 eラーニング。受講記録の自動管理で、人事の手間を大幅に削減します。

関連性の高い記事