LabonaLabona
事故予防・ヒヤリハット·13 分で読了

KY活動(危険予知活動)を外国人労働者に多言語で実施する方法|現場朝礼から始める事故予防

建設・製造・物流の現場で外国人労働者にKY活動(KYT)を実施するための実践ガイド。4ラウンド法の概要から多言語KYシートの設計、「大丈夫です」問題の対処法、KY記録の法的意味まで現場担当者向けに解説。

KY活動(危険予知活動)を外国人労働者に多言語で実施する方法|現場朝礼から始める事故予防

「朝のKYをやっても、外国人スタッフが何を書いているかわからない。形式だけになっている気がする」

こんな声を、建設・製造・物流の現場からよく聞きます。KY活動(危険予知活動)は、事故の手前にある「ヒヤリ」を先に見つける日本独自の安全文化です。ところが外国人労働者が混在すると、ラウンドが進行せず、シートが白紙のまま提出され、指差し唱和が「声出し体操」になってしまう。

本記事では、外国人労働者にKY活動を本当の意味で機能させるための設計方法を、現場担当者がすぐ動ける形でまとめました。KYシートの多言語化から「大丈夫です」問題の背景まで、具体的に解説します。

Labona の多言語安全教育 eラーニングを資料請求する

KY活動(危険予知活動)とは何か

KY活動とは、作業の中に潜む危険を事前に洗い出し、対策を共有する小集団活動です。中央労働災害防止協会(中災防)が普及させたKYT4ラウンド法が標準的な手法として知られています。

KYT4ラウンド法の手順

通常3〜5人程度のチームで、1テーマ10〜30分をかけて進めます。

ラウンド 呼び名 問いかけ
第1ラウンド 現状把握 どんな危険がひそんでいるか
第2ラウンド 本質追求 これが危険のポイント(絞り込む)
第3ラウンド 対策樹立 あなたならどうする
第4ラウンド 目標設定 私たちはこうする(指差し唱和)

イラストシートや現場写真を使い、チーム全員が発言しながら進めます。最後の指差し唱和(「ヨシ!」)で全員が目標を共有して締めくくります。

KY活動は労働安全衛生法上の明示的な義務ではありませんが、建設業・製造業・物流業の現場では業界標準として定着しており、元請会社から協力会社へ実施を求めるケースが多くあります。

なぜ事故予防に効くか

厚生労働省が公表したデータによると、2024年に外国人労働者が関わる労働災害で死傷した人は6,244人(2019年の統計開始以来初めて6,000人超え)。死亡者は39人です。事故の多くは「慣れた作業」「移動中」「連絡のすれ違い」といった場面で起きています。

作業の前に「今日の現場でどこが危ないか」をチームで声に出す。この習慣が、見過ごしがちな危険を「見える」状態にします。KY活動の本質は、そこにあります。

なぜ「日本式KY」が外国人労働者に伝わりにくいか

外国人労働者の多い現場でKY活動が空洞化する原因は、大きく3つあります。

1. 日本語の壁

4ラウンドの進行は、「発言する・問いかけに答える・意見を出す」という対話形式です。日本語で指示が出れば、何を求められているのか理解できない外国人スタッフは黙って傍観するしかありません。「危険を発見してください」という問いは、言葉が通じなければ答えようがない。

2. 「発言する文化」の差

KY活動は、全員が声に出して参加することを前提にしています。ところが、東南アジア・中国など多くの出身国では、目上の人や先輩の前で意見を述べる習慣が薄い場合があります。入社したばかりの外国人スタッフは、「上の人が話しているときに自分が発言してはいけない」という文化的背景を持っていることがあります。

3. KYシートが日本語テキスト中心

一般的なKYシートは、「危険要因」「対策」「目標」といった項目が日本語の文章で記述される形式です。日本語の読み書きが難しい外国人スタッフにとって、空欄を埋めること自体がハードルになります。結果として、「隣の人と同じことを書く」「空欄のまま提出する」という形式的な参加に落ち着いてしまいます。

多言語KY活動の実践設計

外国人が実質的に参加できるKY活動にするために、3つの切り口で設計を変えます。

設計1:写真・イラスト中心のKYシートに切り替える

文章中心のKYシートを、現場写真やイラスト中心のフォーマットに変えます。作業状況のイラストを印刷し、「ここが危ない」と思う箇所に○をつける形式にすると、言語の壁を大幅に下げられます。

母国語のルビや注釈をシートの端に掲載しておくと、さらに参加のハードルが下がります。主要言語(ベトナム語・中国語・インドネシア語など)のフォーマットをあらかじめ準備しておくのが理想です。

ポイント: 特定の現場・作業に特化した写真シートは、汎用イラストより理解が深まります。自社の現場で撮影した写真をシートに取り込む手間が、KY活動の質を大きく変えます。

設計2:母国語でのラウンド進行を取り入れる

チーム内に日本語が話せる外国人リーダーがいる場合、その人にラウンドの進行補助を担ってもらいます。日本人の現場監督が日本語で問いかけ、外国人リーダーが母国語に簡潔に言い換えて仲間に伝える。

完全な通訳は必要ありません。「今日の作業でどこが危ない?」という核心的な問いを母国語でひとこと伝えるだけで、参加のハードルは大きく下がります。

全員が同じ国籍でない混在現場では、共通語としての「やさしい日本語」と視覚情報を組み合わせる設計が現実的です。

(→ 「やさしい日本語」と母国語教材の使い分けについてはこちら

設計3:指差し呼称を多言語で実施する

KY活動の締めにあたる「指差し呼称」(指差し確認)は、各国語に対応したかけ声を用意することで形骸化を防げます。

言語 かけ声(例)
日本語 ヨシ!
ベトナム語 Được!(ドゥオク)
中国語(簡体字) 好!(ハオ)
インドネシア語 Siap!(シアップ)
英語 OK!

声を出して体を動かすことで記憶が定着します。「形式的な唱和」を「意味のある確認」にするために、母国語のかけ声を取り入れることは小さいようで大きな効果があります。

外国人が「大丈夫です」と言ってしまう心理的背景と引き出し方

KY活動の現場でよく起きる問題に、外国人スタッフが何を聞いても「大丈夫です」「問題ありません」と答えてしまうことがあります。

「大丈夫です」の背後にあるもの

この返答の背景には、いくつかの心理的な要因があります。

叱責への恐れ: 「わからない」「危ないと思う」と言うことで、仕事ができない人間だと思われるのではないかという不安。特に試用期間中や来日直後の外国人スタッフに多い。

上下関係の意識: 上司や先輩の前での意見表明を避ける文化的背景。問いかけに「ノー」と言うことが失礼と感じられる場合がある。

言葉で説明できない: 「なんとなく不安」という感覚を日本語で表現できないとき、「大丈夫」という既知の言葉でごまかしてしまう。

「発言を引き出す」3つの技術

1. クローズド・クエスチョンを使う

「何か気になることはありますか?」(オープン)よりも、「昨日、足元が滑りそうだと思った場所はありましたか?」(クローズド)の方が答えやすい。イエス/ノーで答えられる具体的な問いかけから入ることで、言語の壁を下げられます。

2. 発言を行動として認める

外国人スタッフが何か指摘した際に、「ありがとう、気づいてくれて助かった」と明示的に伝える習慣をつけます。「言って良かった」という体験が積み重なると、次第に自発的な発言が増えていきます。

3. 写真や実物で問いかける

「この写真の、ここを見て。今日も同じ状況があると思う?」と、具体的なビジュアルを指しながら問いかけます。言葉ではなく指で示すことで、言語の制約を回避できます。

ツールボックスミーティング(TBM)との違いと組み合わせ方

KY活動と混同されやすいものに、**ツールボックスミーティング(TBM)**があります。

項目 KY活動 TBM
主な目的 危険の発見・対策の共有 作業手順・注意事項の伝達
進行スタイル 参加者が発言・討議 監督者が指示・伝達
所要時間 10〜30分 5〜10分
記録 KYシート ミーティング記録(任意)
外国人対応の難易度 高い(発言が必要) 中程度(聞く・確認が中心)

TBMは監督者が話す割合が高いため、外国人スタッフにとっては「指示を受ける場」として比較的参加しやすい。一方、KY活動は「発言する場」なので難易度が上がります。

組み合わせ方の例:

TBMで作業内容・安全上の注意点を伝達(5分)→ KYシートへの記入と小グループ討議(10分)→ 目標設定・指差し唱和(3分)

TBMで場の空気をほぐし、KYで参加者の意識を高める。この流れで朝礼を設計すると、外国人スタッフが「聞くだけ」になることを防げます。

KY活動記録の保管と法的意味

KY活動は労働安全衛生法上の義務ではありません。しかし、記録を残すことは安全配慮義務の観点から重要な意味を持ちます。

「任意」だが、記録は安全配慮義務の証拠になる

安全配慮義務(民法415条・労働契約法第5条)は、「使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をする義務」を事業者に課しています。

労災が発生し、訴訟になった場合、「危険を事前に認識して対策を講じていたか」が争点になります。このとき、KYシートの記録は「危険を特定し、対策を共有していた証拠」として機能します。

外国人労働者が関わる労災訴訟では、「日本語で説明したが本人が理解していたか不明」という状況が証拠上の弱点になりやすい。多言語KYシートの記録があれば、「外国人労働者が参加し、当該危険を認識していた」という事実を示せます。

保管のポイント

  • 保管期間: 法定義務はないが、労働者の在籍期間中+5年程度が実務上の目安
  • 記録すべき内容: 実施日・参加者氏名・対象作業・発見した危険・設定した目標
  • 言語: 日本語で記録しつつ、外国人参加者の母国語欄を設けると後から証拠として示しやすい
  • 電子保管: 紙での管理は紛失・劣化リスクがあるため、スキャンまたは専用アプリでの管理が望ましい

まとめ

KY活動を外国人労働者に機能させるには、「形式だけでいいや」という空気を現場から変える設計が必要です。

課題 対策
日本語の壁 写真・イラスト中心のKYシートに切り替える
発言文化の差 母国語での問いかけ補助・クローズド質問を取り入れる
指差し唱和の形骸化 各言語のかけ声を準備する
「大丈夫です」問題 発言を行動で認める文化をつくる
KYとTBMの混在 TBMで場をほぐしてからKYに移行する設計にする

KY活動の記録は法律上の義務ではありませんが、安全配慮義務を果たした証拠として労災訴訟や監督署対応で有効に機能します。記録の習慣と多言語化の設計を同時に進めることが、外国人混在現場の安全水準を引き上げる近道です。

Labona の多言語安全教育 eラーニングを資料請求する


よくある質問

KY活動の実施は法律で義務づけられていますか?

労働安全衛生法には、KY活動を実施する義務を明示した条文はありません。ただし、建設業では「安全施工サイクル」の一環として元請会社が協力会社に実施を求めるケースが多く、事実上の業界標準となっています。また、記録を残すことで安全配慮義務の履行証拠になるため、実施すること自体に法的なメリットがあります。

外国人スタッフが多い現場では、KYシートは何語で用意すればよいですか?

自社の外国人労働者の国籍に合わせて優先順位をつけてください。日本在住の外国人労働者の国籍上位はベトナム・中国・フィリピン・インドネシア・ネパールです(出入国在留管理庁データ)。すべての言語を一度に準備する必要はなく、最も人数が多い言語から着手し、写真・イラストを多用することで言語の壁を下げるのが現実的です。

KY活動の時間を確保するのが難しい。短縮する方法はありますか?

KYT4ラウンドすべてを毎日実施する必要はありません。「今日の作業で気をつけることを1人1つ言う」程度のシンプルな運用から始め、徐々に形を整えるアプローチが定着しやすいです。所要時間を5分以内に収めるフォーマット(1項目絞り込み型)も活用されています。KY活動の目的は「危険に気づく習慣」なので、形式より継続を優先することが大切です。

指差し呼称は外国人スタッフにどう教えればよいですか?

まず「なぜ指差し唱和をするのか」を動作の意味ごと説明するところから始めてください。「指を差して声を出すことで、脳と体が同時に確認する」というメカニズムを、動画や実演で見せると伝わりやすいです。かけ声は各言語で用意し、日本語と母国語を両方で唱和する形式にすると、形骸化を防ぎながら一体感も生まれます。


関連記事


参考一次資料

Labona の講座

この記事に関連する受講可能な講座

Labonaは5言語で安全衛生教育を提供しています。受講者1名から購入可能、修了証PDFも即発行。

この記事をシェア

Labona について

外国人労働者の安全教育を、5言語で。

ベトナム語・中国語・インドネシア語など5言語対応の安全衛生 eラーニング。受講記録の自動管理で、人事の手間を大幅に削減します。

関連性の高い記事