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育成就労制度 受入企業の安全衛生体制チェックリスト(2027年4月施行対応)

2027年4月施行の育成就労制度に備え、受入企業の安全衛生体制をA〜E・5フェーズのチェックリストで整理しました。監理支援機関との役割分担、雇入れ時教育・特別教育の多言語対応、技能実習制度からの移行時の追加対応まで実務目線で解説します。

育成就労制度 受入企業の安全衛生体制チェックリスト(2027年4月施行対応)

2027年4月1日、技能実習制度に代わって「育成就労制度」が施行されます。制度の目的は「国際貢献」から「国内の人材育成・確保」に変わりましたが、受入企業が果たすべき安全衛生教育の義務は、労働安全衛生法(労安法)がそのまま適用されます。

「何から手をつければいいか分からない」という担当者のために、受入前の準備から定期教育までを5フェーズのチェックリストに整理しました。監理支援機関との役割分担、技能実習制度からの移行企業が追加で押さえるべき対応も一緒にまとめています。

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2027年4月施行で安全衛生体制は何が変わるか

労安法の義務そのものは変わりません。変わるのは「計画の見える化」と「責任の明確化」です。

技能実習制度では「監理団体が面倒を見る」という雰囲気があった安全教育が、育成就労制度では受入企業の責任として一段とはっきり問われるようになります。監理支援機関(旧・監理団体に相当する、育成就労の監理・支援を行う機関)が育成就労計画を管理し、外部監査も強化されるからです。

実務上で変わる主なポイントは3つです。

  • 育成就労計画への明記が必要になる: 受入企業は一人ひとりについて3年間の育成就労計画を作成し、技能・日本語の習得目標と指導体制を記載して認定を受けます。安全衛生教育の実施計画もこのなかに盛り込まれることが想定されています。
  • 転籍が解禁される: 1〜2年経過後、同一分野内での転籍が認められます。転籍先の受入企業は改めて雇入れ時教育を実施する義務があります。
  • 日本語要件が設定される: 就労開始前にCEFR A1(日本語能力試験N5相当)以上が求められますが、A1レベルで業務の専門用語を日本語だけで理解させるのは難しく、多言語対応が実質的に必要になります。

制度の全体像については育成就労制度の安全衛生教育義務(2027年4月施行)で詳しく解説しています。

安全衛生体制チェックリストの全体像

チェックリストはA〜Eの5フェーズで構成されます。受入の準備から定期的な教育まで、時系列で管理できるよう整理しました。

  • フェーズA(受入前): 教育計画の策定・多言語教材の確保
  • フェーズB(入国前): 宿舎・設備・職場の安全確認
  • フェーズC(入国直後): 雇入れ時安全衛生教育の実施
  • フェーズD(配属後): 特別教育・OJTの実施
  • フェーズE(定期): 業務従事者教育・健康診断の継続

各フェーズで「誰が」「何を」「いつまでに」やるかを、自社の担当者と監理支援機関とで事前に合意しておくことが最大のリスク回避です。後からの「そんな話は聞いていない」を防ぐために、育成就労計画の作成段階で役割分担を文書化しておきましょう。

フェーズA:受入前の準備

受入決定から育成就労計画の認定まで、通常数ヶ月の準備期間があります。ここでやるべきことを先送りにすると、入国直後に現場が混乱します。

A-1. 安全衛生教育計画の策定

  • 配属予定の業務に必要な教育種別を洗い出す(雇入れ時教育・特別教育・職長教育など)
  • 各教育の実施時期・担当者・使用教材・言語を決める
  • 特別教育(労安法第59条第3項)が必要な業務かどうかを業務内容ごとに確認する

A-2. 多言語教材の確保

  • 受入予定者の母語を確認し、対応教材があるかチェックする
  • ベトナム語・インドネシア語・中国語・英語が主な対応言語(国籍構成を事前に確認すること)
  • 教材がない場合は、翻訳業者への発注またはeラーニングサービスの導入を検討する

A-3. 育成就労計画への安全衛生教育の記載

  • 育成就労計画書に「実施予定の安全衛生教育の内容・時期」を記載する
  • 監理支援機関と記載内容をすり合わせておく

ここがポイントなのですが、教材だけ準備して「当日通訳が訳す」という運用では理解度確認が難しくなります。事前に翻訳済みのテキストや動画教材を用意し、受講後のテストまでセットで準備しておくのが基本です。

フェーズB:入国前の設備・環境確認

入国前に宿舎と職場の安全環境を整えておくことは、安全配慮義務(労働契約法第5条=雇い主が働く人の安全に配慮する義務)の観点からも必要です。

B-1. 職場の安全設備確認

  • 危険な機械・設備に安全カバーや標識が付いているか
  • 標識・警告表示が外国語または絵図(ピクトグラム)で理解できるか
  • 緊急連絡先・避難経路が多言語で掲示されているか

B-2. 宿舎の安全確認

  • 消防設備(火災報知機・消火器)の作動確認
  • 緊急時の行動フローを本人の言語で伝えられるか

B-3. 初日ガイダンス資料の準備

  • 職場のルール、緊急時の対応、相談窓口を本人言語で記載した「初日案内」を作成する
  • 監理支援機関が提供するテンプレートがあれば活用する

現場の方ならご存知のとおり、入国直後は住民登録や銀行口座開設など事務手続きが続きます。職場ガイダンスが後回しになりがちなので、書類ではなく「伝わる形」で事前準備しておくことが大切です。

フェーズC:入国直後〜雇入れ時安全衛生教育の実施

ここが最重要フェーズです。雇入れ時安全衛生教育(労安法第59条第1項・労安規則第35条に基づく8項目の教育)は、「業務に就かせる前」に実施する義務があります。

C-1. 雇入れ時教育の実施(法定8項目)

  • 機械・原材料の危険性・有害性と取扱い方法
  • 安全装置・保護具の性能と取扱い方法
  • 作業手順
  • 作業開始時の点検
  • 業務で生じうる疾病の原因と予防
  • 整理・整頓・清潔
  • 事故時の応急措置と退避
  • その他業務に関する安全衛生事項

C-2. 本人言語での実施

  • 日本語のみの教育は安全配慮義務上のリスクが残る
  • 多言語教材・通訳・多言語eラーニングのいずれかで「理解できる言語で」実施する
  • 実施後に理解度確認(テスト・口頭確認等)を行い記録に残す

C-3. 教育記録の保管

  • 実施日・内容・担当者・受講者氏名を記録として作成する(労安規則第38条=教育実施の記録義務)
  • 特別教育の記録は3年以上保管(雇入れ時教育も実務上3年が標準)
  • 転籍に備え、記録をデジタルで管理しておくと引き継ぎがスムーズ

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フェーズD:配属後の特別教育・OJT

配属後、実際に業務に就かせる前に特別教育が必要な業務がある場合は、必ず教育を完了させてから従事させてください。「慣れてからでいい」では通じません。

D-1. 危険・有害業務への配属前確認

  • 特別教育(労安法第59条第3項)が必要な業務に従事させる前に、当該特別教育を完了させる
  • 代表例: フォークリフト操作・アーク溶接・高所作業(フルハーネス)・低圧電気取扱・プレス機械 など
  • 「日本語の特別教育を受けたが内容が分からなかった」という状況は、教育未実施と同等のリスクがある

D-2. OJTとの整合確認

  • 先輩労働者や職長がOJTで指導する内容と、特別教育の内容が矛盾しないよう確認する
  • 外国語で指示できる先輩がいるか、ジェスチャー・絵図でカバーできるかを確認する

D-3. 職長・安全衛生責任者の配置

  • 職長(労安法第60条に基づく教育を修了した現場監督者)を任命している業務では、職長が育成就労労働者の安全指導に責任を持てるよう研修する
  • 外国人を職長候補として育成中の場合は、職長教育を多言語で実施することを検討する(詳しくは職長教育 完全ガイド参照)

フェーズE:定期的な教育・健康診断

育成就労は最長3年間続きます。長い。入社時の教育だけで終わりにする企業が多いのですが、それでは不十分です。継続的なフォローが必要です。

E-1. 業務従事者教育(おおむね5年ごとが目安)

  • 危険有害業務従事者教育(労安法第60条の2=危険・有害な業務に継続従事する者への教育)は法的に毎年の義務ではありませんが、厚労省はおおむね5年ごとの実施を推奨しています
  • 玉掛け・フォークリフト・溶接等の業務に継続従事している育成就労外国人も対象

E-2. 定期健康診断

  • 常時使用する労働者には年1回(労安法第66条)の定期健康診断が義務
  • 有機溶剤・粉じん・特定化学物質等の有害業務に従事する場合は6ヶ月ごとの特殊健康診断
  • 外国語での問診・結果説明が必要な場合の対応を事前に確認する

E-3. 法改正への対応

  • 育成就労制度は2027年施行後も細則が順次整備される見込み
  • 監理支援機関や厚生労働省のリリースを定期的に確認し、教育内容・記録方法を更新する

監理支援機関との役割分担

実はこれ、現場では一番曖昧になりやすい部分です。育成就労制度では監理支援機関の役割が技能実習の監理団体より明確化されましたが、安全衛生の責任は依然として受入企業にあります。

受入企業が担う義務(変わらない)

  • 雇入れ時教育・特別教育・職長教育の実施
  • 教育記録の保管・管理
  • 職場の安全設備の整備
  • 健康診断の実施・記録

監理支援機関が担う補完的役割

  • 育成就労計画の作成支援・認定申請のサポート
  • 外国語での相談窓口の提供
  • 定期巡回時の教育実施状況の確認
  • 転籍時の調整・記録引き継ぎの支援

率直に申し上げると、「監理支援機関がやってくれるだろう」という意識が最も危険です。労安法の義務は「事業者(受入企業)」に課されており、監理支援機関が代わりに実施しても法的責任は免れません。育成就労計画の作成段階で役割分担を文書化し、双方で合意しておくことが不可欠です。

技能実習制度から移行する企業が追加で対応すべき点

現在技能実習生を受け入れている企業が育成就労に移行する際に、意識的に対応が必要な点が3つあります。

追加対応1. 育成就労計画への教育計画の明記

技能実習では計画書への安全衛生教育の記載が明示的に求められていなかったケースがありましたが、育成就労では育成就労計画の一部として記載が求められます。「いつ・誰に・何語で・何の教育をするか」を計画に落とし込んでおきましょう。

追加対応2. 転籍時の記録引き継ぎ体制の整備

技能実習では原則転籍不可だったため、教育記録の引き継ぎはほとんど想定されていませんでした。育成就労では転籍が認められるため、前の受入企業での特別教育修了証・雇入れ時教育記録をどう引き継ぐかの仕組みを整備しておく必要があります。

追加対応3. 多言語教育の質の見直し

正直なところ、技能実習時代に「とにかく日本語で説明した」「要点だけ口頭で伝えた」という対応をしていた場合、育成就労での外部監査には耐えられない可能性があります。この機会に、理解度確認・記録保管を含めた多言語教育体制を根本から見直しましょう。

大阪地裁2024年7月31日判決では、日本語のみの教育記録が存在していても「理解できる言語で実施されていなかった」として事業者の安全配慮義務違反が認定されています。

Labonaの安全衛生教育をどう活用するか

LabornaはB2B向けの多言語安全衛生eラーニングです。育成就労制度の受入企業に、こんなかたちで使われています。

  • 雇入れ時教育の8項目を5言語(日本語・英語・ベトナム語・中国語・インドネシア語)で受講可能
  • 受講記録が自動保管され、法定の教育記録として活用できる
  • 理解度テストが標準搭載されており、受講だけでなく理解確認まで記録される
  • 転籍した外国人の受講履歴も一元管理できるため、記録引き継ぎがスムーズ

入国直後は業務開始に追われて教育が後手に回りがちです。事前にアカウントを作成しておき、入国翌日から受講を開始できる状態にしておくのが理想的な使い方です。

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まとめ

育成就労制度では、受入企業の安全衛生教育の義務内容そのものは変わりません。変わるのは「計画の明示化」と「責任の明確化」です。A〜Eの5フェーズチェックリストに沿って準備を進め、監理支援機関との役割分担を育成就労計画の段階で文書化しておくことが、2027年4月の施行をスムーズに迎える最短ルートです。技能実習制度からの移行企業は、育成就労計画への教育記載と転籍時の記録引き継ぎ体制の整備を早めに進めてください。


よくある質問

Q. 育成就労制度では、安全衛生教育を育成就労計画に書かなければなりませんか?

技能実習では計画書への安全衛生教育の明示が限定的でしたが、育成就労では「指導体制・習得目標」を含む育成就労計画の一部として、実施予定の教育内容・時期を記載することが求められます。雇入れ時教育・特別教育の実施時期を盛り込み、監理支援機関と内容を確認したうえで認定申請しましょう。

Q. 雇入れ時教育を「日本語+通訳」で実施しても問題ありませんか?

問題はありません。ただし、通訳が正確に訳せているか・理解度確認(テスト等)を実施して記録に残しているかが重要です。通訳の質が不十分だった場合、「実施したが理解されていなかった」として安全配慮義務違反のリスクが生じます(大阪地裁2024年7月31日判決参照)。多言語eラーニングを使えば理解度テスト付きで記録を自動保管できます。

Q. 転籍時、前の会社の特別教育修了証を引き継げますか?

特別教育は修了証として発行されるため、転籍後の受入企業が修了証を確認すれば再受講は不要です。一方、雇入れ時教育は「新しい雇用関係の開始時」に実施する義務があるため、転籍先の企業が改めて実施する必要があります。転籍前に前の受入企業から修了証のコピーをもらい、育成就労計画に記録引き継ぎの方針を明記しておくと安心です。

Q. 育成就労制度では「自社単独型」での受入は可能ですか?

可能です。ただし、技能実習の「企業単独型」と同様に、監理支援機関を通じない場合は自社での監理体制が厳しく審査されます。安全衛生管理体制・日本語教育体制・相談対応体制などを自社で整備できることが前提となります。多くの中小企業では監理支援機関を利用する形が現実的です。

Q. 施行前(〜2027年3月)に入国した技能実習生はどうなりますか?

施行後も現行の技能実習の在留資格で引き続き在留できます(経過措置)。新たに受け入れる外国人から育成就労制度が適用されます。ただし、技能実習から育成就労への任意転換制度が設けられる可能性もあるため、法務省・出入国在留管理庁の最新情報を確認してください。

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