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職長・安全衛生責任者教育を外国人に多言語で実施する方法|外国人を職長に任命する前に知っておくべきこと

育成就労制度の定着で外国人が職長候補になる事例が増えています。労安法第60条に基づく職長教育を多言語で実施する法的根拠と実務上の選択肢を、建設業・製造業の現場担当者向けに解説します。

職長・安全衛生責任者教育を外国人に多言語で実施する方法|外国人を職長に任命する前に知っておくべきこと

「うちのベトナム人スタッフ、現場歴8年でもう一人前なんです。職長に推薦したいんだけど、職長教育って日本語でないといけないんですか?」

こういう相談が、ここ1〜2年で目に見えて増えています。育成就労制度の2027年4月施行を前に、長年現場で腕を磨いてきた外国人が職長候補として上がる現実が、建設・製造・物流の各業界で起きています。職長教育(労安法第60条)の法的義務と時間数、言語の問題への対処法、実務で使える選択肢を整理しました。任命前に何を準備すればよいかが分かる内容です。

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外国人が職長教育を受けるケースが増えている背景

在留外国人労働者の数は2025年10月時点で257万人を超え、統計開始以来の過去最多を記録しました(厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」2025年)。この数字が示すのは単純な「増加」だけではありません。

ここがポイントなのですが、在留期間が長期化するにつれて、熟練した技能と現場リーダーシップを兼ね備えた外国人が着実に増えています。技能実習制度で10年以上継続して働いてきた人材が建設・製造の現場に多く存在し、後輩の指導や段取りの仕切りをすでに担っているケースも少なくありません。

育成就労制度はこの流れをさらに加速させます。従来の技能実習制度と異なり、育成就労は「3年間で特定技能1号相当の技能を習得させ、長期定着を前提とする」設計です。企業側も「一時的な労働力」ではなく「幹部候補」として外国人を採用する意識に変わりつつあります。

率直に申し上げると、5年後・10年後の現場を見据えれば、外国人が職長として後輩の指導にあたる光景は珍しくなくなります。そのための準備として、職長教育を多言語でどう実施するかの仕組みを今から整えておく必要があります。

職長教育の法的根拠と対象業種

職長教育(正式名称:職長等に対する教育)の根拠法は労働安全衛生法第60条(事業者が新たに職長になる者に対して安全衛生教育を行う義務を定めた条文)です。

実務上のポイントは3点。

  1. 「新たに職長になる人」に対して事業者が必ず教育を実施しなければならない
  2. 対象業種は製造業・建設業・電気業・ガス業・自動車整備業・機械修理業など(全業種ではない)
  3. 内容と時間は労働安全衛生規則第40条が定めており、合計12時間以上が義務

カリキュラムは次の5項目です。

  • 作業員への指導・監督の方法(4時間以上)
  • 危険性・有害性の調査および対策(2時間以上)
  • 異常時・災害発生時の対応(1.5時間以上)
  • 設備・作業環境の改善(2時間以上)
  • 安全衛生に関する指示・指導の方法(2.5時間以上)

職長教育は「職長というポジションに新たに就く人全員」が対象です。外国人・日本人の区別なく、該当業種で職長になるなら必ず受講が必要です。免除規定はありません。

未実施の場合のリスク: 事業者に対して50万円以下の罰金(労安法第120条)が科される場合があります。加えて、教育を受けていない職長のもとで労災が発生した場合、安全配慮義務違反(雇い主が従業員を危険から守る責任を怠ったとして問われる法的責任)として民事賠償を求められるリスクがあります。

建設業では「14時間」の職長・安全衛生責任者教育

建設業には、製造業等とは異なるもう一段階の義務があります。

建設業の現場では、職長が同時に「安全衛生責任者」(労安法第16条に基づき、元方事業者との連絡調整を担う役割)を兼ねるのが一般的です。そのため、「職長教育(12時間)+安全衛生責任者固有の教育(2時間)」を一体で実施する**職長・安全衛生責任者教育(合計14時間)**が建設業では標準になっています。

現場の方ならご存知のとおり、大手ゼネコンや元請企業からの下請け・協力会社に対して「職長・安全衛生責任者教育の修了証を持つ者を現場責任者として配置すること」が工事計画書に明記されるケースが増えています。修了証の提示が現場入場の事実上の条件になっている。これが現場の実態です。

能力向上教育(再教育)についても触れておきます。法的義務ではありませんが、「おおむね5年ごとに実施することが望ましい」(厚生労働省指針)とされており、元請が受講を実質的に求めるケースが広がっています。

「言語の壁」にどう向き合うか

外国人を職長に任命する際に、多くの担当者が最初に突き当たるのがこの問題です。

まず明確にしておきたいのは、法律は「日本語で職長教育を実施しなければならない」とは定めていないということです。大切なのは**「受講者が内容を理解できること」**です。

これは安全配慮義務(労働契約法第5条:雇い主は働く人の安全に配慮する義務がある、という法律)の観点から来ています。形式上の時間数をこなしても、内容を理解していなければ「職長として部下を適切に指導できる能力が備わった」とはいえません。

2024年7月の大阪地裁判決は、「教育記録は存在していたが、外国人被災者は日本語のみの教育内容を理解していなかった」として、事業者の安全配慮義務違反を認定しました。職長教育も同じ論理が当てはまります。

正直なところ、「日常会話ができるから日本語テキストで大丈夫だろう」という判断は危険です。労災が発生したとき、「受講者が内容を理解していた」ことを証明する責任は事業者側が負います。記録の作り方が重要になる理由はここにあります。

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実務上の選択肢:3つのアプローチ

現時点で「完全な外国語版職長教育」を提供している登録機関はまだ限られています。厚生労働省が都道府県別に公開している登録教習機関一覧でも、外国語対応を明示している機関は一部にとどまります。対応言語はベトナム語・中国語・英語が中心です。

とはいえ、現場では3つのアプローチが実際に使われています。

アプローチ1: 日本語テキスト受講 + 母語サポートの組み合わせ

受講者本人が日常会話レベルの日本語を持っている場合に向いています。日本語で受講しながら、わからない部分をサポーターや同僚に母語で補足してもらう形です。記録上は「日本語版を受講完了」で問題ありません。ただし、理解度確認をどう文書化するかが課題になります。

アプローチ2: 通訳者を同席させての受講

コストは2名体制になりますが、確実性が高い方法です。外国人受講者の母語通訳者が教室内またはオンライン接続で逐次通訳を行います。受講効果と記録保管の両面でリスクが低く、元請監査のときも説明しやすいです。

アプローチ3: 多言語eラーニングによる事前学習 + 日本語版集合研修

母語で職長業務の基礎知識(リスクアセスメントの考え方、危険予知訓練の進め方、部下への指示の出し方)を事前に学んでから、日本語版の集合研修に臨むアプローチです。

実はこれ、現場で一番うまく機能しているのがこのパターンです。母語で概念を理解してから日本語の講義を聞くと、「ああ、さっき学んだことだ」と結びついて、理解の吸収率が格段に上がります。コスト面でもアプローチ2より抑えられるケースが多い。

受講証明書の取扱いと記録保管

職長教育を修了すると、実施機関または事業者から**修了証(修了証明書)**が発行されます。

記録として残すべき4項目はこちらです。

  1. 受講者の氏名(本名 + パスポート表記のローマ字名も併記)
  2. 受講日と実施時間数
  3. 教育内容・カリキュラム
  4. 実施機関または実施者の名前

保管期間は法令上「当分の間」とされていますが、特別教育と同様に3年以上が実務上の標準です。元請の監査時に即時提示できる状態での管理が求められます。

外国人の受講証明書に特有の注意があります。氏名がローマ字表記の場合、日本語の記録帳と照合できるよう、通称名と本名(パスポート名)の両方を記録に残す工夫が必要です。退職後も一定期間の保管が必要なため、人事システムや電子ファイルでの管理をお勧めします。

Labonaによる事前学習サポート

Labonaは、雇入れ時教育・特別教育(アーク溶接・低圧電気・フォークリフト等)の多言語eラーニングを日本語・英語・ベトナム語・中国語・インドネシア語の5言語で提供しています。

職長教育そのものは集合研修が主流ですが、「職長として知っておくべき安全衛生の基礎」を多言語で予習させることで、日本語版の集合研修での理解度を高める役割を担えます。「外国人を職長に育てたいが、日本語だけの研修では不安がある」という方は、まず体験デモで教材の品質をお確かめください。

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まとめ

育成就労制度の施行を前に、外国人が職長候補として名前が挙がる現場は着実に増えています。職長教育(労安法第60条)は対象業種では必須であり、建設業では職長・安全衛生責任者教育として合計14時間が必要です。

法律は「日本語でなければならない」とは定めていません。ただし、安全配慮義務の観点から「受講者が理解できる言語で」の実施が求められます。日本語受講+通訳サポート、または多言語eラーニングによる事前学習+日本語版集合研修の組み合わせが現実的な解決策です。任命前に早い段階で受講計画を立て、理解度確認と記録保管まで一セットで整えることが、事業者としてのリスク管理上も重要です。

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よくある質問

Q. 外国人を職長に任命することは法律上問題ありませんか?

外国人であることを理由に職長になれないという規定はありません。労働安全衛生法は国籍を問わず日本国内の事業場に適用されます。在留資格の範囲内で就労できる外国人が、必要な職長教育(労安法第60条)を修了していれば、任命に法的な障壁はありません。

Q. 外国語で受講できる職長教育の登録機関はありますか?

厚生労働省が都道府県別に公開している登録教習機関一覧に外国語対応機関が掲載されています(一部地域のみ)。対応言語はベトナム語・中国語・英語が中心です。お近くに対応機関がない場合は、通訳者の同席か、多言語eラーニングによる事前学習+日本語版受講の組み合わせが現実的です。

Q. 外国人が職長教育を「日本語で」受講した場合、修了証は有効ですか?

修了証は有効です。使用言語は修了証の有効性に影響しません。ただし、内容の理解を担保できたかどうかについては事業者側が証明責任を持ちます。理解度確認の記録(テスト結果・確認書への署名など)を残しておくことが安全策になります。

Q. 職長教育と特別教育は別物ですか?

別物です。特別教育は特定の危険・有害業務(アーク溶接・フォークリフト・高所作業等)に従事させる前に実施するもので、その業務に就く労働者全員が対象です。職長教育は「職長というポジションに新たに就く人」だけが対象の教育であり、特別教育の修了が職長教育を免除するわけではありません。

Q. 能力向上教育(再教育)は義務ですか?

法令上の義務ではありません。厚生労働省の指針では「おおむね5年ごとに実施することが望ましい」とされています。ただし、大手ゼネコンや元請企業が現場入場の条件として再教育修了を求めるケースが増えており、実質的な義務として扱うことをお勧めします。


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