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職長教育 完全ガイド|建設業・製造業で職長になる前に必要な12時間カリキュラム

労安法第60条で義務付けられた職長教育について、対象業種・カリキュラム5項目と時間配分・建設業の安全衛生責任者教育との一体実施の違い・WEB講習(オンライン)の可否・外国人職長への対応まで実務担当者向けに体系的に解説します。

職長教育 完全ガイド|建設業・製造業で職長になる前に必要な12時間カリキュラム

「職長になったけど、何をいつまでに受ければいいんだろう」——そう思いながらも、担当窓口に確認する時間もない方は多いはずです。職長教育は、現場で作業員を直接束ねるすべての職長に義務付けられた安全衛生教育ですが、「12時間」「安全衛生責任者教育との違い」「オンラインで受けられるか」といった実務的な疑問がなかなか整理されていません。この記事では、法令の根拠から業種別の対象可否、カリキュラムの中身、外国人職長への対応まで、一気に整理します。

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職長教育とは何か、なぜ必要なのか

現場作業員を直接指揮・監督する立場の人を「職長」と呼びます。その職長が、安全衛生のルールを正しく理解していなければ、部下を危険な状況に置いてしまいかねません。

根拠法は労働安全衛生法第60条(作業中の労働者を直接指導・監督する者への安全衛生教育を事業者に義務付ける条文)です。「新たに職務に就くことになった職長等に対して」という表現が大事で、昇格や配属替えのタイミングが受講義務の起点になります。

ここがポイントなのですが、「職長」という肩書きがなくても、実態として現場を束ねているなら対象になります。班長、組長、リーダーと呼ばれていても、後述の対象業種に当てはまり、部下への作業指示や安全確認を行っているなら、職長教育の受講が必要です。

未受講の職長を現場に配置した場合、事業者は50万円以下の罰金(労安法第120条第1号)が科される可能性があります。労基署の監督指導でも確認対象の1つです。

対象業種:自社は義務があるか確認する

職長教育の実施義務は、すべての業種に課されているわけではありません。労安法施行令第19条で業種が限定されています。

元々の対象は次の6業種です。

  • 建設業
  • 製造業(後述の一部業種を除く)
  • 電気業
  • ガス業
  • 自動車整備業
  • 機械修理業

令和5年(2023年)4月1日から対象が拡大されました。 追加されたのは以下の業種です。

  • 食料品製造業
  • 新聞業
  • 出版業
  • 製本業
  • 印刷物加工業

この改正は、食品製造や印刷業で化学物質による労働災害が後を絶たなかったことが背景にあります。実はこれ、現場では「うちは食品工場だから関係ない」と長年見過ごされてきた業種でした。2023年4月以降に初めて職長を配置した場合でも、未受講のままであれば義務違反です。

製造業の「一部業種を除く」については、金属鉱業・炭鉱業などの採掘系が除外されていますが、大半の製造業は対象と考えていいです。

カリキュラムの全体像:学科12時間の中身

職長教育の標準カリキュラムは、労働安全衛生規則第40条(安衛則第40条)と告示によって定められています。学科12時間が法定の最低ラインです。多くの講習機関では実技4時間を加えた計16時間(2日間)で開催しています。

学科で学ぶ5項目と、その時間配分の目安は次のとおりです。

1. 作業方法の決定および労働者の配置(約2時間)

仕事の段取りを組み、誰をどこに配置するかを決める能力を養います。手順書の作り方や、適切な配置の考え方が中心です。

2. 労働者への指導・監督の方法(約2.5時間)

部下への指導法、教え方の技術、作業中の監視のあり方を学びます。一方的に命令するのではなく、相手に「理解させる」スキルが求められます。

3. リスクアセスメント(約4時間)

作業に潜む危険を事前に洗い出し、リスクを低減する手法です。KY(危険予知)活動や、リスクの見積もり・評価・記録の進め方を演習形式で学びます。4時間と比較的時間が多いのは、「リスクを言語化する」技術が現場の安全文化を左右するからです。

4. 異常時等における措置(約1.5時間)

事故や急病、設備異常などの緊急事態にどう動くか。初動の判断基準と報告・連絡の流れを確認します。

5. 労働災害防止活動の進め方(約2時間)

安全朝礼の運営、ヒヤリハット活動の推進、安全目標の設定など、職長が日常的に回す安全管理の仕組みを学びます。

率直に申し上げると、この12時間は「座って聞くだけ」の講義ではありません。とくに3のリスクアセスメントはグループ討議が中心で、参加者同士で実際の作業を題材に危険を洗い出します。グループワーク形式が法令上要求されているため、独学では代替できません。

建設業特有:職長・安全衛生責任者教育との一体実施

建設業に関わる方は、「職長教育」と「職長・安全衛生責任者教育」が混在していて混乱するかもしれません。

安全衛生責任者とは、下請け企業の現場に選任が必要な役職です(労安法第16条)。元請けと下請けが混在する建設現場では、下請け各社がそれぞれ安全衛生責任者を立て、元請けの統括安全衛生管理者と連絡を取り合う体制が義務付けられています。

建設業では職長と安全衛生責任者が同一人物になるケースが多いため、厚生労働省は職長教育と安全衛生責任者教育の一体実施を推奨しています。これが「職長・安全衛生責任者教育」と呼ばれる講習で、前述の職長教育12時間に加え、次の2科目が追加されます。

  • 安全衛生責任者の職務に関すること(1時間)
  • 総括安全衛生管理の進め方に関すること(1時間)

合計14時間の学科+実技4時間で、2日間で修了します。

現場の方ならご存知のとおり、元請けから「職長教育修了証を提出してください」と言われたとき、「職長・安全衛生責任者教育」の修了証で代替可能です。むしろ建設業では一体型の受講を勧める元請けが多くなっています。

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オンラインで受講できるか

「オンライン(WEB講習)で受けられるか?」という問いに対する答えは、条件付きで可能です。

厚生労働省は2021年(令和3年)1月25日付の通達で、安全衛生教育全般についてオンライン実施を公式に容認しました。職長教育も同様にWEB形式での実施が認められています。

ただし、前述のリスクアセスメントのグループ討議を含む演習パートについては、オンライン会議ツールを使ったリアルタイムのグループワーク形式で実施する必要があります。事前収録の動画を1人で視聴するだけでは要件を満たしません。

完全非同期(録画動画のみ)で12時間を満たそうとしている講習には注意が必要です。申し込み前に「リスクアセスメントの演習はどう実施されるか」を確認しましょう。

適切に運営されているWEB講習であれば、出張費・宿泊費ゼロで受講でき、地方の小規模事業所にとっては大きなコスト削減になります。

外国人職長への対応

外国人労働者が増える中で、現場の班長や組リーダーに外国人がなるケースも増えています。ここがポイントなのですが、職長教育の法令には「日本語で実施すること」という規定はありません。

安全配慮義務(労働契約法第5条:雇い主は働く人を危険から守る義務がある) の観点から、受講者が内容を理解できる言語で実施することが求められます。

現時点での多言語対応の現実は次のとおりです。

  • ベトナム語・インドネシア語: 一部機関でWEB講習対応あり。建設技能人材機構(JAC)が無料提供しているコースも存在する
  • 中国語・英語: 対応機関が少なく、自社で通訳を手配するケースが多い
  • タガログ語・ネパール語: 現状ではほぼ市場に教材がない

外国人が職長を務める場合に実務的に多い対処法は、日本語の講習に通訳を同行させることです。その場合でも、理解度確認テストは本人の母語で実施することが望ましいとされています。

職長教育特有の難しさは、職長に求められる「コミュニケーション能力」「指示の伝え方」という内容が、言語の壁と直接ぶつかる点にあります。多言語対応した雇入れ時教育・特別教育を事前に修了させ、安全衛生の基礎語彙をしっかり身に付けてから職長教育に臨ませることが、現場では現実的なステップです。

まとめ

職長教育は、労安法第60条に基づき、建設業・製造業(2023年以降は食料品製造業等も追加)などで、新たに職長となる者に受講させる義務があります。カリキュラムは学科12時間(5科目)+実技4時間。建設業では安全衛生責任者教育との一体実施(学科14時間)が主流です。

WEB講習での受講は法令上可能ですが、リスクアセスメントのグループ演習がリアルタイムで行われているか確認してから申し込みましょう。外国人職長については、理解できる言語での実施が安全配慮義務上の要請です。多言語対応教材で基礎語彙を固めてから職長教育に臨ませる、段階的な育成が現場では現実的です。

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よくある質問

Q. 職長教育に有効期限はありますか?

修了した職長教育そのものに法定の有効期限はありません。とはいえ、厚生労働省は「概ね5年ごとに能力向上教育(再教育)を受講させることが望ましい」と通達で示しています。建設業では元請けから5年以内の修了証を求められるケースが増えているため、実務上は更新を意識しておくことをお勧めします。

Q. 職長教育を修了した証明書はいつまでも有効ですか?

修了証自体は失効しませんが、元請けや発注者から一定期間内の修了証を求められる場合があります。また、2023年4月の法改正でリスクアセスメントの科目が追加された経緯があるため、改正以前に旧カリキュラムで修了した方は補講を受けることで最新の修了証を取得できます。

Q. 職長教育と特別教育は別物ですか?

別物です。特別教育は、フォークリフト・フルハーネス・アーク溶接など特定の危険業務に従事する作業員全員に受講させる教育で、業務開始前に義務があります。職長教育は「管理・監督者」を対象にした教育です。職長自身が危険業務に従事する場合は、特別教育の修了も別途必要です。

Q. 外国人を職長にする場合、日本語が話せないと受講できませんか?

法令上は日本語での受講を必須とする規定はありません。多言語対応のWEB講習を利用するか、日本語講習に通訳を同行させる方法があります。理解度の確認(テスト等)を本人の母語で行うことが、安全配慮義務の観点から重要です。

Q. 自社で職長教育を実施(内製)することはできますか?

可能ですが、法定のカリキュラム(5科目12時間以上)に沿った内容で実施し、記録を3年間保管する必要があります。特にリスクアセスメントの演習はグループ討議形式が求められるため、教材の整備と実施体制の構築が必要です。外部の登録教習機関と比較してメリット・デメリットを検討してから判断することをお勧めします。


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