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物流業の安全衛生教育|荷役・フォークリフト・転落の3大リスクと外国人配慮のポイント

物流・倉庫業の労働災害は年間16,000件超。荷役中の落下・フォークリフト接触・高所からの転落という3大リスクを解説し、雇入れ時教育とフォークリフト特別教育の二重義務、外国人労働者への多言語対応まで安全担当者が押さえるべき実務ポイントをまとめました。

物流業の安全衛生教育|荷役・フォークリフト・転落の3大リスクと外国人配慮のポイント

物流・倉庫の現場は、日本で最も労働災害が多い業種のひとつです。荷物の積み下ろし、フォークリフトが行き交う通路、高い棚の上での作業。毎日当たり前に繰り返す動作のなかに、命に関わる危険が潜んでいます。

物流業の3大リスク、採用時に義務づけられた安全教育、外国人労働者への多言語対応。この3点を、現場担当者がすぐ動ける形に絞って書きました。

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物流業の安全衛生教育が急がれる理由:現場の実態と数字

物流業の労働災害件数は、他の産業と比べて高い水準が続いています。安全衛生教育を検討するなら、まずこの数字から入るのが正直なところです。

厚生労働省が公表した令和6年(2024年)の統計によると、陸上貨物運送事業の死傷者数は 16,292人。前の年より77人増えています。製造業に次ぐ水準で、業種別ランキングの上位に毎年名前が挙がります。

現場の方ならご存知のとおり、「重い仕事だから事故が多い」という単純な話ではありません。フォークリフト事故で亡くなる方の多くは、フォークリフトを「運転していない」側です。被災者の約6割は歩行中に接触した作業者です(厚生労働省データ)。

「うちは長年無事故だから大丈夫」という感覚が、最大のリスクになることがあります。

外国人労働者の物流業への流入も増えています。令和6年10月末時点で外国人労働者は全国で約257万人に達し、運送・倉庫業でも採用拡大を図る企業が増えています。日本語が十分に通じない状態での作業は、コミュニケーションのすれ違いを生みます。そのぶん、安全教育の質が問われる場面が増えています。

3大リスク:荷役・フォークリフト・転落

物流業の労働災害を種類別に並べると、毎年ほぼ同じ3つが上位に来ます。外国人労働者がなぜ巻き込まれやすいか、背景もあわせて見ます。

荷役中の落下・崩壊

パレット積みの荷物が崩れる。棚から重い荷物を取ろうとして足元に落とす。手で運んでいたダンボールが膝や足の甲に当たる。軽く見られがちですが、骨折・打撲として労災認定されるケースが多い事故類型です。

外国人労働者に多い誤解は、「安定して見えるから大丈夫」という感覚です。パレットの積み方ルール(最大段数、重量バランス)は口頭では伝わりにくく、動画やイラストで見せる必要があります。

荷役中の事故の多くは「わかっていたはずの作業」で起きます。慣れた作業者が焦った瞬間、外国人が「大丈夫そう」と目視で判断した瞬間に、です。

フォークリフトとの接触

令和5年(2023年)のフォークリフト関連労働災害は全国で 1,989件。荷役機械による労働災害のうち、フォークリフトが約7割を占めます(厚生労働省)。

実はこれ、現場では見落とされがちな事実なのですが、接触事故の多くは「フォークリフトの存在に気づいていなかった」という状況で起きています。バックしながら方向転換するフォークリフト、棚の陰のブラインドコーナー。「いつもの通路だから安全」は通じない瞬間があります。

外国人労働者との現場では、手合図のルールが共有されていないことが接触事故の引き金になります。「右に寄れ」「停まれ」「避けろ」という現場の合図を知らずに動く、あるいは逆方向に動く。このすれ違いが致命傷になります。

高所からの転落

荷台への乗り降り、高い棚へのアクセス、トラックの荷台上での整理作業。物流現場では2〜3mの高さでの作業が日常的に発生します。

労働安全衛生規則第518条・519条(高さ2m以上の作業で転落防止措置を取る義務を定めた規則)は、安全な足場の設置または安全帯の使用を事業者に求めています。昇降設備を使わずに荷台へ飛び乗る慣習を黙認していると、いつか大きな事故につながります。

ここがポイントなのですが、外国人労働者が「先輩がやっているから」と見様見真似で同じことをするリスクが高い。「ベテランがやっていること=安全」ではありません。

物流業に特有の「二重の教育義務」

法律が定める安全衛生教育は、物流業には二層でかかってきます。どちらも省略できません。

雇入れ時安全衛生教育(労働安全衛生法第59条第1項)

全業種・全労働者を対象に、採用のタイミングで必ず実施しなければなりません。令和6年(2024年)4月の法改正で業種の制限がなくなったため、物流業のパートタイマーや短期の派遣スタッフも、入社初日から対象です。

教育内容は労働安全衛生規則第35条(雇入れ時の安全衛生教育の内容を定めた規則)に規定された8項目が対象です。機械・設備・工具に関する知識、安全装置・保護具の取扱い、作業手順、作業開始前の点検、整理整頓、事故発生時の応急措置、安全衛生に関する法令の知識など。これをスキップした状態で事故が起きると、事業者責任が問われます。

詳しくは雇入れ時安全衛生教育 完全ガイドで法令の細かい要件を整理しています。

フォークリフト特別教育(労働安全衛生法第59条第3項・安衛則第36条第5号)

最大荷重1トン未満のフォークリフトを運転させる場合は、特別教育(学科12時間+実技)の修了が必須です。これは免許ではなく「教育記録」であり、事業者が実施して3年間保管する義務を負います。

正直なところ、ここで勘違いが多い。「うちは技能講習(1トン以上の免許)を取らせているから大丈夫」と思っている現場が少なくありません。ただし、技能講習と特別教育は別物です。1トン以上の技能講習修了者が1トン未満のフォークリフトを動かす場合でも、別途、特別教育の実施記録が必要です。

技能講習修了証がある=特別教育不要、ではありません。修了証の種類と対象機械を必ず確認してください。

外国人労働者の「理解ギャップ」を放置しない

率直に申し上げると、日本語で同じ教育をするだけでは安全配慮義務(労働契約法第5条。「会社が従業員を危険から守る責任」を定めた条文)を果たしたとは言えない現場が増えています。

手合図・サインの誤解

フォークリフトオペレーターと地上の作業者の間には、現場ごとに独自の手合図があります。「両手を上に上げたら停止」「片手で右を指したら右に行け」——日本人スタッフ間では暗黙の了解です。外国人労働者に「誰も教えていない」ケースが、圧倒的に多い。

正しい合図を知らないまま動いて、フォークリフトと衝突する。これが現場で繰り返されるパターンのひとつです。

通路ルールの伝え方

「人はここを歩く、フォークリフトはここを通る」という区分けも、図示されなければ伝わりません。「通路を守れ」と口頭で言われても、なぜ守らないといけないかが腑に落ちていなければ行動は変わりません。

イラスト入りの多言語チェックシートを入社時に使い、現場の壁や柱にも同じ内容を貼り出す。この「見える化」が最も効果的です。

安全配慮義務の観点から、「本人が理解できる言語で」教育を実施することが求められます。日本語だけの教育が「実施した」とみなされなかった裁判例が出ており、多言語対応は現場の標準になりつつあります。

詳しくは外国人労働者への安全衛生教育 完全ガイドをあわせてご覧ください。

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多言語対応:どの言語から始めるか

外国人労働者の国籍構成は、令和6年10月末時点の厚生労働省「外国人雇用状況の届出」によると、ベトナム・中国・フィリピン・インドネシアの順です。物流・倉庫業ではベトナム人とインドネシア人の比率が高い傾向があります。

対応言語の優先順位は、まずこの3言語です。

ベトナム語 — 在日ベトナム人は約56万人で外国人労働者のなかで最多の国籍(令和6年10月末・厚生労働省)。物流業への就労割合も高い。

インドネシア語 — 育成就労制度(2027年4月施行)の施行に伴い、今後急増が見込まれる国籍のひとつ。

中国語 — 在日中国人は約82万人と国籍別最多。業種や地域によっては優先度が上がる。

現場の方ならご存知のとおり、「英語で共通対応」は物流の現場では機能しません。ベトナム人の多くは英語が得意ではなく、インドネシア人も英語対応は個人差が大きい。母語での教育が、理解定着の最短ルートです。

記録管理と元請監査への備え

安全教育の記録保管は、法令上も実務上も欠かせません。

特別教育は労働安全衛生規則第38条により 3年間の記録保管義務 があります。雇入れ時教育には明文規定が薄いですが、実務上は同じく3年を目安にするのが業界標準です。

保管が必要な項目(特別教育の場合)は次の6点です。

  1. 実施日時
  2. 実施場所
  3. 教育の種類(特別教育の科目名)
  4. 受講者氏名
  5. 講師氏名
  6. 受講時間

元請業者から「教育記録を提出してください」と求められる場面は増えています。紙の台帳では退職者分の書類が見つからない、保管場所が分からないというケースが続出します。電子化しておけば、必要なときに即座に出力できます。

「記録はあるはずですが、今すぐ出せません」という回答が、元請との信頼を大きく損ねます。監査対応は「整備しておく」段階では遅い。日頃から電子記録で管理してください。

記録管理の詳細は安全衛生教育の記録保管ガイドで詳しく解説しています。

Labona の多言語教育をどう活用するか

Labona は、日本語・英語・ベトナム語・中国語・インドネシア語の5言語に対応した安全衛生 eラーニングサービスです。

雇入れ時安全衛生教育(8項目)をオンラインで完結でき、受講記録は自動で保存されます。外国人労働者が母語で安全の基礎を学び、受講履歴が即時に管理画面へ反映される仕組みです。元請監査対応も、管理画面から受講履歴を出力するだけ。退職した方の記録も消えません。

入社してすぐの外国人スタッフが、母語で安全の基礎を理解できる環境が、事故ゼロへの最初の一歩です。

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まとめ

物流業の労働災害は年間16,000件を超えます。荷役中の落下・フォークリフト接触・高所からの転落という3つのリスクが現場の大半を占め、どれも「慣れた作業中」に起きます。法令が求める安全衛生教育は「雇入れ時教育(全労働者)」と「フォークリフト特別教育(運転者)」の二層構造で、どちらも省略できません。

外国人労働者が増えている今、日本語だけの教育では安全配慮義務を果たしたとは言えません。手合図や通路ルールを母語で伝える工夫と、受講記録の電子管理が、現場の安全と会社のリスク管理を同時に実現します。


よくある質問

Q. 短期派遣スタッフでも雇入れ時安全衛生教育は必要ですか?

必要です。令和6年4月以降は業種・雇用形態を問わず、全ての労働者が対象です。1日だけの派遣スタッフも法律上は対象になります。実務上は入場前に書面や動画で実施し、受講確認書にサインをもらう方法が一般的です。

Q. フォークリフト技能講習(1トン以上)を取得させれば特別教育は不要ですか?

技能講習を修了した方が1トン以上のフォークリフトを運転する場合は特別教育は不要です。ただし、同じ現場で1トン未満の小型フォークリフトを動かす場合は、別途、1トン未満の特別教育の実施記録が必要です。技能講習と特別教育は別物として管理してください。

Q. 外国人労働者への安全教育は日本語でも法令上は問題ないですか?

法律に「日本語で実施しなければならない」という規定はありません。ただし安全配慮義務の観点から「本人が理解できる言語で」実施することが求められます。日本語のみの教育が「実施した」とみなされなかった裁判例も出ており、多言語対応が実務上の標準になりつつあります。

Q. 安全教育の記録はどのくらいの期間、保管する必要がありますか?

特別教育は労働安全衛生規則第38条により3年間の保管義務があります。雇入れ時教育の保管期間に関する明文規定はありませんが、実務上は同じく3年を目安に保管するのが業界標準です。退職者分も含め、電子管理が最も確実です。

Q. フォークリフトの手合図は外国人労働者にどう伝えればよいですか?

写真・イラスト付きの多言語対応チェックシートを入社時に使い、実際にその場で合図を一緒に確認する方法が効果的です。現場の壁や柱に多言語版の合図一覧を貼り出す「見える化」も有効です。eラーニング教材に動画として組み込むと、繰り返し自習できて定着率が上がります。


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