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プレス機械作業 特別教育を外国人労働者に外国語で実施する方法|安衛則第36条第10号【2026年版】

プレス機械の金型等の取付け・取外し・調整業務は安衛則第36条第10号で特別教育義務(学科5時間+実技2時間)があります。外国人労働者への多言語実施の実務論点と5言語対応教材の選定基準を現場責任者向けに解説します。

プレス機械作業 特別教育を外国人労働者に外国語で実施する方法|安衛則第36条第10号【2026年版】

要約

  • 動力プレスの金型等の取付け・取外し・調整業務には、安衛則第36条第10号の特別教育(学科5時間+実技2時間)が必須
  • 製造業における「はさまれ・巻き込まれ」の死傷者数は2024年で4,692人。外国人の死傷年千人率は2.71と全労働者平均を上回る
  • 大阪地裁2024年7月31日判決は、日本語のみの安全教育が安全配慮義務違反の認定根拠になり得ることを示した
  • 実技は事業所内での対面実施が必要。学科部分は多言語eラーニングでカバーするハイブリッド設計が現実的

「うちの外国人作業員にも特別教育は必要ですか」——プレス機械を扱う製造現場の担当者から、こういった問い合わせが増えています。答えは明確です。国籍に関係なく、必要です。

動力プレスの金型等の取付け・取外し・調整の業務に従事させるには、安衛則第36条第10号(労働安全衛生規則)に基づく特別教育(学科5時間+実技2時間)が義務です。そして外国人労働者に日本語のみで実施しても、本人が理解できていなければ安全配慮義務を果たしたとは言えません。

法令根拠・カリキュラム・多言語対応の実務論点を、この記事で整理します。

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プレス機械 特別教育の法令根拠と対象業務

この特別教育の法的根拠は、労働安全衛生法(労安法)第59条第3項(「危険又は有害な業務に就かせる前の特別教育義務」)と、それを受けた労働安全衛生規則(安衛則)第36条第10号です。

対象は動力プレスの金型等の取付け、取外し又は調整の業務に従事させる労働者です。具体的には以下の作業が含まれます。

  • 打抜き型・絞り型・曲げ型の取付け・取外し
  • 金型の位置調整(ダイセット・ストローク調整)
  • 試打ちによる成形確認

プレスのボタンを押すだけのオペレーター作業ではなく、金型を交換・調整する業務が対象です。現場では「段取り作業」と呼ばれることが多い範囲です。外国人作業員に段取りを任せる前に、必ず特別教育を修了させてください。

労働安全衛生規則第36条第10号:「動力により駆動されるプレス機械(以下「動力プレス」という。)の金型、シャー等の刃部の取付け、取外し又は調整の業務」

プレス「はさまれ」事故の実態 — 外国人被災が多い理由

プレス機械は、製造業の労働災害で「はさまれ・巻き込まれ」が多発する代表的な設備です。2024年(令和6年)の製造業における機械による「はさまれ・巻き込まれ」の死傷者数は4,692人(厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況」)。業種を問わず、製造業で最も多い事故類型のひとつです。

外国人労働者の労働災害統計では、製造業が全体の48.3%を占め業種別で最多です。外国人の死傷年千人率は2.71(令和6年)と、全労働者平均を上回っています。

なぜ外国人被災が多いのか。現場の声を聞くと、共通した原因が浮かび上がります。

  • 安全装置の目的を理解していない。光線式安全装置(フォトセンサー)を「障害物センサー」だと思っており、防護の仕組みを把握していない
  • 「金型が危ない」という感覚が持ちにくい。金属の塊が閉じ合わさる速度と力を、言葉で聞いただけでは実感しにくい
  • 緊急停止の操作を知らない。非常停止ボタンの場所・操作方法を日本語で説明されても覚えられていない

正直なところ、これらは「教えた/教えていない」の問題ではなく、「理解できる言語で教えたか」の問題です。

カリキュラム詳細 — 学科5時間+実技2時間の構成

安全衛生特別教育規程(厚生労働省告示)に基づくカリキュラムは次のとおりです。

区分 科目 時間 内容
学科 プレス機械の種類及び構造 2時間 機械プレス・油圧プレス・サーボプレスの違い、金型の種類と動作原理
学科 プレス機械の安全装置 1時間 両手操作式・光線式・手払い式の仕組みと適用範囲
学科 プレス機械の整備 30分 金型の点検・保守と異常発見時の対応
学科 作業方法 1時間 金型取付け・調整の手順と注意点
学科 関係法令 30分 安衛則の関連条文と事業者の義務
実技 金型の取付け、取外し及び調整 2時間 実際の機械を使った取付け・調整作業の演習

合計7時間。1日で完結できる時間量ですが、実技を含む点が重要です。金型の重さ・固定方法・試打ちの感覚は、実際に手を使わないと身につきません。eラーニングは学科5時間部分に対応でき、実技は現場で別途実施する形が現実的です。

「金型を理解させる」ことの言語的難しさ

ここがポイントなのですが、プレス特別教育の多言語対応で最も難しいのは「金型」という概念の説明です。

金属加工に馴染みのある技術者なら直感的に理解できる「金型がプレスで成形する仕組み」も、はじめてプレスに就く外国人作業員には抽象的です。加えて、「上型と下型がかみ合う隙間に指が入ったら何が起きるか」——この危険の「リアリティ」を日本語のテキストで伝えても、頭では分かっても体感としての恐怖にならないことがあります。

実はこれ、日本人の新入社員でも同じ問題が起きます。外国人作業員では言語の壁が加わるため、さらに理解定着が難しくなります。

多言語対応で効果が高いのは映像教材です。金型が閉じ合わさる映像を見せることで、言語を超えて危険を直感的に伝えられます。テキストと映像を組み合わせた多言語eラーニングが、この業務の教育で特に有効な理由がここにあります。

外国人労働者への実施義務 — 「日本語のみ」では不十分な理由

特別教育は「実施した記録がある」だけでは不十分です。安全配慮義務(労働契約法第5条:雇い主が従業員の安全を守る法的責任)は、「本人が理解できる状態で受講した」かどうかを問います。

大阪地裁2024年7月31日判決では、日本語のみで安全教育を受けた外国人労働者(プレス機事故)について、「理解できていなかった」点が安全配慮義務違反の認定根拠となりました。特別教育の記録は存在していたにもかかわらず、です。

製造業で外国人を雇用する担当者の方には、以下の3点を確認することをお勧めします。

  1. 現在の特別教育が何語で実施されているか
  2. 実技の指示・説明が対象言語で行われているか
  3. 受講後の理解度確認(テスト・質疑)が対象言語で実施されているか

外国人比率が高い現場では、日本語+母語のバイリンガル対応が安全配慮義務の観点から現実的な基準になりつつあります。

安全配慮義務と外国人労働者のリスクについては、安全配慮義務と外国人労働者|判例から学ぶリスクを参照ください。

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5言語対応教材の選定基準

外国人へのプレス特別教育を多言語で実施する方法は3つあります。

自社通訳・翻訳で対応する

金型・安全装置の専門用語を正確に翻訳できる人材が必要です。「光線式安全装置」「両手起動式」といった用語を、ベトナム語やインドネシア語で正確に伝えられる人材は少ない。少人数対応の緊急手当てとしては使えますが、恒常的な体制としては品質リスクが高い。

外部翻訳ベンダーに依頼する

精度は上がりますが、安全衛生の専門用語に精通したベンダーの選定が必要です。安全装置の映像素材を伴う場合、吹き替えやテロップ制作のコストも加算されます。

多言語対応 eラーニングを活用する

学科5時間部分をカバーし、日本語・英語・ベトナム語・中国語・インドネシア語で提供できる多言語eラーニングが最も現実的な選択肢です。

3つの方法を整理すると次のとおりです。

方法 特徴
自社通訳・翻訳で対応 専門用語を正確に翻訳できる人材が必要。少人数対応の緊急手当てとしては使えるが、恒常的な体制としては品質リスクが高い
外部翻訳ベンダーに依頼 精度は上がるが、安全衛生の専門用語に精通したベンダー選定が必要。映像素材があれば吹き替え・テロップ制作コストも加算される
多言語対応eラーニングを活用 学科5時間部分をカバー。日本語・英語・ベトナム語・中国語・インドネシア語で提供でき、最も現実的な選択肢

選定時の確認ポイントは以下です。

  • 安衛則第36条第10号の学科カリキュラム(5時間)をカバーしているか
  • プレス機械の動作・安全装置を映像で解説しているか
  • 受講記録が電子保存され、元請け・労働基準監督署への提示が即時対応できるか
  • 理解度テストが多言語で実施されているか
  • 対応言語が現場の国籍構成に合っているか

多言語安全教育の比較については、多言語安全衛生教育 比較ガイドもご覧ください。製造業全般の外国人安全教育については、製造業の外国人労働者 安全教育チェックリストも参考にしてください。

まとめ

プレス機械の金型等の取付け・取外し・調整業務に従事させる外国人労働者には、安衛則第36条第10号に基づく特別教育(学科5時間+実技2時間)が義務です。「はさまれ・巻き込まれ」事故は製造業で最も多い類型であり、外国人被災者の割合が高い背景には、日本語のみの教育による「理解の壁」があります。

多言語eラーニングで学科5時間をカバーし、実技は現場で丁寧に実施する——このハイブリッド設計が、法令適合と実際の安全確保を両立する現実的な解決策です。

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よくある質問

Q. プレス機械のオペレーター(ボタンを押すだけの作業)にも特別教育は必要ですか?

金型の取付け・取外し・調整を行わない場合は、安衛則第36条第10号の特別教育は不要です。ただし、機械の操作方法・緊急停止・安全装置の確認など、雇入れ時の安全衛生教育(労安法第59条第1項)は別途必要です。

Q. 外国語版の教材だけで特別教育を実施して良いですか?

法的には「日本語での実施」を義務付ける条文はなく、外国語教材での実施は可能です。ただし、本人確認・理解度確認・受講記録(3年保管)の要件を満たすことが条件です。日本語と外国語の両方で記録を作成しておくと、元請け監査への対応がスムーズです。

Q. eラーニングで学科部分だけを実施し、実技は社内で行うことはできますか?

できます。厚生労働省の2021年通達でオンライン実施が公式に認められており、学科と実技を分けて実施することは法令上問題ありません。実技部分は現場のプレス機械と実際の金型を使って行い、担当者と受講者が立ち会う形で実施してください。

Q. 金型交換のたびに特別教育が必要ですか?

一度修了すれば原則として再受講の必要はありません。ただし、使用する機械の種類が大きく変わった場合(例:機械プレスからサーボプレスへ変更)は、変更点に関する教育を実施することが安全配慮義務上求められます。

Q. 技能実習生にも同じ特別教育が必要ですか?

はい。技能実習制度の下でも、金型等の取付け・調整業務に就かせる前の特別教育義務は変わりません。監理団体と入国前から教育計画を共有しておき、多言語教材を確保してから配属することが推奨されます。


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